経営者・リーダーが一堂に集う交流会、リーダーズ倶楽部活動報告、大阪新春例会2018年2月7日

「企業は人なり」石橋信夫・大和ハウス工業創業者の精神を伝えるべく、私は、現在も精力的に全国の事業所回りや年40回前後の講演をさせていただいております。本日は「創業者　石橋信夫に学ぶ」をテーマに、私の歩みと石橋信夫の創業者精神の要諦を少しでもお伝えできればと思っております。

私が大和ハウス工業に入社したのは昭和38年8月、実は中途採用です。

私は父が毎日新聞社の技術部の部長職、両親と4人兄弟で暮らしておりましたが、20歳のある日、母が自分の着物を質屋に入れていた姿を目撃し、両親の苦労を知るところとなりました。それ以後、将来はサラリーマンではなく事業家になりたいと思うようになったのです。

大学を卒業し、当時、大中小の3社から内定を頂き、私の友人はみな、私が大手に就職すると考えていたようですが、私は事業家の夢を叶えるため、その中で一番小さい鉄鋼会社を選び、入社しました。そして、入社と同時に会社法に書かれていない実学を学び、部長には商業手紙の書き方を見せてもらうなど、2年4ヶ月ほどで会社の仕組みをおおよそ把握するに至りました。

当時としては申し分ない待遇でしたが、このままいると楽すぎて怖くなり、もっと厳しく鍛えてくれる会社はないかと探すようになりました。そこで大和ハウスの歩合制セールスマンの募集を目にし、応募したことがきっかけで入社いたしました。

ただ、面接の際に、歩合制ではなく、正規の社員としての面接をお願いしました。すると、私の履歴書から、資材担当の専務・石橋茂夫さんに面接していただく運びとなり、採用を即決していただきました。

最初の仕事はパイプ倉庫の入出庫係で、朝7時出社、夜は22時退社（出勤は朝5時頃、帰宅は夜0時頃）の日々。空を見れば朝は朝星、夜は夜星か、これもいい人生やな、とプラス思考に考え、2年間必死に勉強しながら勤めました。

その後、西成にある大阪支店の資材課に異動となり、そこである時、石橋信夫社長から呼ばれ、お見合いを勧められました。しかしその時、私は既婚者でしたので、お断りをしました。それから約2年後、本店の資材課に異動になった時、また社長からお見合いを勧められました。もちろんお断りしたのですが、今から思い返すと、石橋社長はその頃から私のことを気に留めてくれていたのかなと思います。

そうして、次に私は住宅事業部の営業部次長となり、新入社員研修をする立場になりました。しかし、住宅販売の話法が分からず、そこで外部の講師を呼んで教育制度を作ることになりました。また、36歳の時には山口支店新店の支店長を任され、2年後には営業成績全国一位の支店に導きます。しかし、当時の私を恐れる者も多く、クレームの投書が多かったそうです。戦争で脊髄を損傷したにも関わらず、再び部下のために戦場へ戻り、シベリア抑留された体験を持つ部下思いの創業者石橋信夫は、そんな私を見離さず、次なる試練を与えたのでした。

赤字だった福岡支店を立て直すこと、それが次に私に課せられた試練でした。赤字で低迷している店は暗い。そこで私は元気で明るい女性従業員3名に電話交換を任じました。すると、お客様やお取引先から「朝から元気をもらった」と評判が評判を呼びました。他方で、支店幹部には私との売上競争で士気を高めます。結果、黒字に転じ、ボーナスも増額、支店内に明るさが戻ってきました。あとは推して知るべしです。

弊社では仕事ができるかどうか、人を育てる人材育成が重要であり、年功序列の学歴主義ではありません。人が育てばどんな仕事でもできるのです。総合生活産業としての大和ハウスは、100周年には10兆円企業という創業者・石橋信夫の晩年の夢を実現すべく、これからも世界に向け、世の中の人に役に立つもの、喜ばれる事業、商品を作っていく。そのために既存の概念に囚われず、先見の明をもって展開していきます。

最後に、私が「親父」と呼ぶ3人の大恩人をご紹介します。一人は産み育ての親である、新聞社印刷畑の技術屋だった父です。もうひとりは福岡時代に飛び込みからのお付き合いである資産家で土木工学博士の小田弥之亮先生。先生から、うちは学者一家なので資産を預けるから独立起業しないかと、千載一遇のチャンスを戴きましたが、もうひとりの父である石橋信夫との縁、会社の期待を裏切ることになると熟慮の末、お断りしました。3人の父を忘れることなく、これからも石橋信夫の創業者精神を伝承していきたいと思っております。