活動レポート 東京例会2019年8月27日

第35回例会 東京

株式会社レノバ 代表取締役会長 千本倖生氏

写真:スペシャル講演① 株式会社レノバ 代表取締役会長 千本倖生氏

スペシャル講演①では、当倶楽部の発起人で電話革命・通信革命を起こした現在のKDDIの創業者であり、元祖「連続起業家」の株式会社レノバ代表取締役会長の千本倖生氏にご登場いただきました。

また、スペシャル講演②では、知財を武器にビジネスを戦う歴史が長い、アメリカ企業がこぞって日本のパートナーとして指名する山本特許法律事務所 弁理士の山本秀策氏にご登場いただきました。自らの知的財産を守り、知財を武器に敵を倒す―。「知財は武器であり、知財戦略は経営そのものだ」いう山本氏に日本の知財戦略への危機感、世界と戦うための知財戦略について著書『知財がひらく未来』を参考に、わかりやすくお話をうかがいました。

講演内容
スペシャル講演①

「新しい再生エネルギーの潮流とアントレプレナーシップ」

株式会社レノバ 代表取締役会長 千本倖生氏

株式会社レノバ 代表取締役会長 千本倖生氏

2019年8月東京例会

2019年8月東京例会

日本では再生可能エネルギー(以下、再エネ)を利用した発電がまだまだ普及していないが、世界に目を向ければそれは違う。世界的な大変革がエネルギー分野で起きているのに、このままでは日本はその潮流に取り残されてしまう―

今、全精力を注いで経営を行う株式会社レノバは、再エネ発電に特化した発電事業会社。2000年に創業し、2017年にマザーズ市場へ上場、1年後の2018年には東証一部市場に市場変更を行う。既に発電を開始している発電所も含め、今後3~5年のうちに発電容量で1.6GWの開発を進めている。国内のみならず、『日本とアジアにおけるエネルギー変革のリーディング・カンパニー』を目指し、海外での開発にも注力している。

世界では、脱炭素の流れが活発です。18世紀の産業革命から蒸気機関で高度急成長を果たしたイギリスは2025年に、フランスは2021年に脱炭素を宣言しています。もともと石炭火力発電を行っていた英国の発電会社は、燃料を石炭から木質バイオマス発電へ転換しています。また、世界の金融機関もその動きを加速させており、石炭産業からの投資の引き上げを行っているのです。その規模は、全世界で8兆ドルにも上ります。

石炭火力を推進しているように見えている米国、大気汚染を加速させていると思われている中国、みなさん意外に思われるかもしれませんが、世界でトップクラスの再エネ先進国なのです。中でも中国の躍進には目を見張るものがあります。再エネ発電の普及だけではなく、機器を扱うメーカーも世界ランキングでも上位に位置し、再エネ産業と共に加速度的に成長しているのです。

日本の2030年までの再エネ目標値は22~24%です。その目標値に寄与し、さらに日本が再エネを拡大し、世界で台頭できる環境創りに貢献できるように事業の拡大を行っていきます。

電源の開発は、発電場所の決定から稼働まで5~7年かかり、長期戦になります。思い立ったら即実現できるものではありません。地域にしっかり根付き、真の意味で活きた開発になるよう全力を挙げて取り組んでいきます。

これまで私は、多くの困難や立ちはだかる壁に向かってきました。すべてはこの国をより良く変革させたかったからです。日本の未来は、再エネを拡大することで必ずや明るくなるでしょう。強くそう信じています。

株式会社レノバ 代表取締役会長 千本倖生氏

◆千本倖生氏 プロフィール
1942年、奈良県生まれ。
1966年、京都大学工学部電子工学科卒業。
フロリダ大学修士課程・博士課程修了。工学博士
大学卒業後、日本電信電話公社(現NTT)に入社。1983年退社。
1984年、当時京セラ社長だった稲盛和夫氏らと第二電電株式会社(現KDDI)を創業。
1999年、ブロードバンド会社イー・アクセスを創業。
2005年、イー・モバイルを創業。
2014年3月イー・アクセス株式会社取締役名誉会長職を退任し、
同年4月株式会社レノバ社外取締役に就任。2015年8月より現職。

【近著】
『あなたは人生をどう歩むか~日本を変えた起業家からの「メッセージ」』(中央公論新社)

スペシャル講演②

「稼ぐ力 ― 知財の威力 ―」

山本特許法律事務所 弁理士 山本秀策氏

山本特許法律事務所 弁理士 山本秀策氏

2019年8月東京例会

2019年8月東京例会

2019年8月東京例会

日本の今日の衰退は、知財の真の意味や価値を日本民族が軽視してきたことによる報いではないのか。知財の実務家として、米欧を主たるお客さまに、45年を生きて来た演者が知財の世界を通して見た日本についての感想だ。日本人は、戦いを好まず、尖った思考を忌み嫌う民族である故の、必然の成り行きです。

1980年代までの日本はものづくり大国で、社会学者のエズラ・ヴォーゲル名誉教授に「Japan as Number One」と言わしめたほど、日本製品が米国市場を席巻した。その結果、米国の製造業は崩壊し、米国市場は日本製品で埋め尽くされた。日本は、そんな中で、その製品を護るため特許出願をしてきたものの、1980年以降、米国の反転攻勢が始まる。ハイテク分野では日本は追いつけないと米国は読み、それを前提に知財権の保護強化政策を採る。米国企業はそれが奏功し、特許侵害で次々に日本企業を訴え、賠償金を勝ち取っていった。日本にとっては損賠、ライセンス料、そして米国市場からの撤退という痛手を負い、改めて知財の重要性に目覚める。

しかし、1997年の山一證券倒産を始めとするバブル崩壊とともに出願件数も減少し、さらにはリーマンショックの経済的打撃で一気に件数を落とす。他方で、米国は伸長、欧州も低いなりに伸長している。今では、米欧には言うに及ばず、アジアの新興国の後塵を拝している状況。結局のところ、知財戦略がなかったということだ。日本企業の多くは知財を完全に消化しないまま、技術大国日本の良き時代を表面的に突っ走ってきてしまった、そして今、デジタル革命を前に立ち往生している、これが現実です。

変化と進歩の激しいこの時代、企業は大学の知を利用することが大切。産学連携だ。しかし、現実はどうか?うまくいっていません。トップ10%の論文数を世界と比較してみても、日本は3千件、米国は3万2千件です。研究開発費100万ドルあたりの論文被引用数の推移を見ても、日本は先進国の中で最下位。その理由は実力主義・能力主義ではないからだ。大学自身が研究費を稼ぐという発想もない。日米の大学のライセンス収入を比較しても明らかです。米国の大学は基礎研究も応用研究も行い、研究費を自身で手に入れる。大学の使命である「社会への還元」が大学人としての主要な評価指標でもあるからだ。こんな訳で、“研究→応用→還元→お金”のサイクルが上手く機能し、次々とイノベーションを生み出していっているのです。

研究もビジネスも戦いであり、知財はビジネス上の武器だ。ゆえに、それを仕込み使うための戦略が不可欠。当然ながら、事業を見据えた戦略だ。特許は独占的排他権。そんな強力な武器を手に入れるためには代償が要求される。その代償とは何か。特許の保護対象である“思想”を“開示”するということだ。その開示がリッチであれば手に入れる特許は強く、プアであれば弱いという関係だ。開示をためらったり出し惜しみをすると手に入れる特許は小さくなる。これが特許制度の本質だ。

戦略はその巧拙が勝負を決する。企業や大学のトップはその研究成果の見極めが必要であり、目利きであることが求められる。事業化するなら、既存特許の地雷を踏まないためにクリアランス・サーチは重要。特許化を望むなら、特許明細書の作成、つまりその発明の開示、が必要であり、そのための先行技術文献のサーチが必要不可欠だ。それにより、特許庁での審査を事前に予測し、その審査を上まわる準備が可能になるのです。武器の仕込みと将来の行使はこの明細書の作成に依存するのです。

では、企業経営者や大学研究者はどうすべきなのか?知財はビジネス研究の武器であり、それが「稼ぐ力」になり、戦略的に使うことでお金や名誉を得ることができることを「知る」という認識こそが大切。その上に、“目利き”能力が必要不可欠であること、そして知財権法が特殊かつ特異で極めて専門的であるが故に、その「知る」という認識を前提にプロの優秀な専門家を身近に配置するということではないか。

山本特許法律事務所 弁理士 山本秀策氏

◆山本秀策氏 プロフィール
1943 年、奈良県生まれ。大阪大学工学部発酵工学科を卒業し、
キッコーマン醤油(現キッコーマン株式会社)に入社。工場や中央研究所で勤務。
1972 年、弁理士試験合格。
1974 年、キッコーマン退社。特許事務所勤務を経て、米国ワシントン DC へ。
1979 年、山本秀策特許事務所を大阪で開設。2014 年に組織変更し、
山本特許法律事務所となる。弁護士・弁理士30数名を含む総勢160名。
企業法務・知財・競争法・訴訟・紛争解決などを扱う。
現在、大阪大学産学共創本部顧問、大阪大学大学院医学研究科招聘教授、崇城大学客員教授、大阪商工会議所常議員・サービス産業部会長・ライフサイエンス振興委員会副委員長・関西経済同友会幹事

[近著] 『知財がひらく未来/山本秀策 仕事の哲学』(朝日新聞出版)


開催情報

2019年8月27日(火)18:00~20:30

18:00 開会
18:00~18:05 代表幹事挨拶
18:05~18:45 スペシャル講演①(株式会社レノバ 代表取締役会長 千本倖生 氏)
18:45~19:00 コーヒーブレイク
19:00~20:30 スペシャル講演②(山本特許法律事務所 弁理士 山本秀策 氏)
20:30 閉会

帝国ホテル東京 本館2階・蘭の間
東京都千代田区内幸町1-1-1
TEL:03-3504-1111

地図URL:https://www.imperialhotel.co.jp/j/tokyo/access_map/index.html


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