メンバーズコラム

2016年9月 小林 弘幸 氏

ストレスを明らかにして不安や悩みを手放す

2016年5月 小林 弘幸 氏

季節の変わり目は、生活においても変化の多い季節です。一方、こうした変化がストレスとなり、心身に悪影響が出る時期でもあるといわれます。今回は、ストレスとの向き合い方について解説します。

マイナス感情を引きずってしまう理由

仕事や家庭の問題、さまざまな人間関係、将来への不安など、私たちの生活はストレスの要因であふれています。そうしたストレスを受けると、私たちの心は「いやだ」「腹が立つ」「つらい」「苦しい」といったマイナスの感情にとらわれてしまいがちです。すると、気持ちが前を向かず、目の前の仕事や家事に集中することができなくなります。

これは、自律神経のバランスが乱れるためです。実際に、機器を使って自律神経を測定すると、マイナスの感情を抱いているときに自律神経のバランスが崩れることが、数値としてはっきりと表れます。そして心がマイナスの感情に支配され、自律神経のバランスが崩れた状態が長い間続くと、心も体も病気の状態に傾いてしまうのです。

私たちはなぜ、マイナス感情にいつまでもとらわれてしまうのでしょう。それは、自分が抱えているストレスがどんなものであり、何が原因なのかを「明らかに」していないからです。

誰でも、いやなことなど考えたくないものです。しかし、そのことから目を背け、うやむやにしていると、マイナス感情は心の中に居座り続け、結果として心身の病気や不調を招いてしまうのです。

自分が何に対してストレスを感じていて、その問題点や解決方法はなんなのか。まずはそのことを明らかにする必要があります。そうすることによって心は落ち着き、自律神経のバランスは安定してくるのです。

書き出すことで心の中が見えてくる

自分の心の負担になっているストレスを明らかにするためには、そのストレスを紙に書き出して「見える化」する必要があります。そもそも私たちは、自分がどんなストレスにダメージを受けているのか、はっきりとは認識していないものです。なんとなく不安に思う、なんとなくいやな感じがする、なんとなく心が重い……。そのように誰もが自分の中に「もやもやとした気持ち」を抱えているのではないでしょうか。

しかし、頭の中でいくら考えても、もやもやとした気持ちは晴れません。書き出して目で見ることによって、頭の中が整理されるのです。

いまストレスを抱えていると思ったら、それがどんなことなのか、10個リストアップして書き出してみましょう。「夫が自分の気持ちをわかってくれない」「親子関係がギクシャクしている」「体調が悪く、健康に不安がある」など、気持ちがとらわれていることや心に引っかかっていることを具体的に書き出すのです。

そして、ストレスの大きさを「小さい」「中くらい」「大きい」「とても大きい」と四つのランクに分けてみてください。こうしてストレスをランクづけすると、「とても大きいストレス」に比べて、それ以外のストレスが大したことではないとわかってきます。「この程度のストレスで心を乱すのはばかばかしい」と客観的に考えられるようになるのです。さらに、「自分の力ではどうにもならないこと」や「いまは考える必要のないこと」も出てくるでしょう。

こうしてストレスを書き出してみると、いま、自分が向き合うべきストレスがはっきり見えてくるはずです。この段階で、大半のストレスは消えてしまうものなのです。

「ゆっくり」を意識して、ていねいに書く

向き合うべきストレスが明らかになれば、あとは、そのストレスを解消するためにどうすればいいのかを考えればいいわけです。まずは、そのストレスを解消するための具体的な対応策を三つ書き出します。さらにそれがうまくいかなかったときの対応策を三つ、それでも解消できないときの対応策を三つ書き出していきます。たいていのストレスは、そのいずれかの方法で解消できるはずです。あるいは「これ以上考えても仕方がない」という気持ちになれるでしょう。物事を明らかにしたことによって、頭の中がクリアになり、前に進むことができるのです。

ただし、ストレスや対応策を書き出す際には、パソコンを使ってキーボードを叩いて書くのではなく、実際にペンを手にしてゆっくりとていねいに書くほうが効果的です。「ゆっくり」を意識して書くことによって、確実に自律神経は安定するからです。

このように、ストレスを書き出して頭の中の片づけをする習慣を身につけると、些細なことや考えても無駄なことで心を乱すことがなくなります。さらに、書き出すことでつねに問題の所在を明らかにしておけば、心身のコンディションの乱れを早め早めに立て直すことができるでしょう。

人は生きていれば誰もがストレスを感じます。ストレスを完全になくすことなど決してできません。しかし、「明らかにする」習慣を身につけることで、人生はずっと楽になるのです。

ストレスを書き出すメリット
頭の中が整理整頓されて、問題点が明らかになる。
自分が向き合うべきストレスがはっきり見えてくる。
余計なストレスを手放すことができる。
心が落ち着き、自律神経が整う。
いまやるべきことに集中することができる。
これから先の自分の生き方が見えてくる。

プロフィール

小林 弘幸氏

順天堂大学医学部附属順天堂医院 教授
小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)氏

順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター。1960年、埼玉県生まれ。’87年、順天堂大学医学部卒業。’92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学附属英国王立小児病院外科、トリニティ大学附属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任する。腸のスペシャリスト、自律神経研究の第一人者としても知られており、アスリートや文化人、アーティストのパフォーマンス向上指導にも関わる。


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