賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局
受付時間 平日9:30~18:00
講演内容
まず、万博(国際博覧会)は世界中の人々が参加する国家プロジェクトとして、国際博覧会条約によって次のように定義されています。「2ヶ国以上の国が参加した、公衆の教育を主たる目的とする催しであり、文明の必要とするものに応ずるために人類が利用することのできる手段又は人類の活動の一つもしくは複数の部門において達成された進歩もしくはそれらの部門における将来の展望を示すもの」とあります。20世紀までの万博は主に国威発揚や殖産興業が中心であったのに対し、21世紀の万博は人類共通の課題を解決すべく地球的課題や社会に対する持続的な発展がそのテーマの中心となってきています。
同様に、2025年の大阪・関西万博も「いのち輝く未来社会のデザイン」というメインテーマを掲げ、“Saving Lives Empowering Lives Connecting Lives(いのちを救う,いのちに力を与える,いのちをつなぐ)”をサブテーマに、“未来社会の実験場”というコンセプトのもと、SDGs達成やSDGs+Beyondへの飛躍の機会、またSociety5.0の実現に向けた実証の機会と捉え、その実現に向けて、現在鋭意努力しているところでございます。
大阪・関西万博においては、5つの特徴が挙げられます。1つには、史上初となる四方を海に囲まれたロケーションで開催されるということ。「海」と「空」という世界との繋がりを印象づけるデザインの会場となっており、世界各国の多様なパビリオンや広場が、リング状の主動線を設けることによって、多様でありながら一つに繋がる象徴として表現しています。
2つ目として、世界中の150の国々と25の国際機関や民間企業やNGO/NPO、市民団体等が「いのち輝く未来社会」をテーマとした取り組みをこの万博に持ち寄り、SDGsの達成とその先の未来を描いていきます。
また、大阪・関西万博の8人のテーマ事業プロデューサーがそれぞれいのちについて考え、テーマ館を創り上げていきます。
そしてSDGs達成に貢献するために、そのアイディアやメッセージを具現化するための共創プラットフォームを用意し、そこに多くの人たちに参加していただき、会期前・会期中・会期後を通して、理想とする未来社会を共に創り上げていくベストプラクディスプログラムを実施いたします。
3つ目には、Society5.0の実現に向け、未来の技術やシステムを実証し、実際に会場で実装していくための取り組みを展開していきます。例えば、MaaS(Mobility as a Service)であったり、空飛ぶクルマであったり、カーボン・ニュートラルであったり、水素エネルギー技術など、次世代技術やシステムの実証として、イノベーティブなアイディアを会場で実装していきます。
4つ目として、本格的なエンターテインメントを楽しめる万博を目指します。催事については、主催者が協賛企業等と共に行うものと、文化団体や自治体等の参加者が行うものを考えており、水上ショーやプロジェクションマッピング、大小様々なステージで行う音楽や芸能などの催事、全国のお祭りなど伝統芸能からポップカルチャーまで、多様な催しを計画しています。
そして5つ目には、安心安全で快適、そして持続可能性に配慮した万博として、感染症対策や防災対策、サイバーセキュリティ対策を徹底し、電子チケットを活用した入場事前予約制度の導入やパビリオン予約制度の導入等による平準化に取り組んでいきます。
今後としてましては、8月中旬に企業・団体様への出展参加説明会の開催を予定しております。弊協会は大阪・関西万博の実施主体でありますが、何よりも私どもだけで実現可能な事業ではありませんので、多くの皆さまとともに、いのち輝く未来社会の実現に向けて創り上げていきたいと考えております。ぜひとも、2025年の大阪・関西万博を世界・日本・地域・企業の次の時代をつくる契機にすべく、皆さまのより多くのご関心とご参加をお待ちしております。
◆堺井 啓公 氏 プロフィール
1966年生まれ(54歳)、大阪府出身、府立茨木高校、京都大学法学部卒業
1990年4月通商産業省(現経済産業省)入省
2010年7月経済産業省製造産業局政策企画官
2013年7月経済産業省商務流通保安グループ博覧会推進室長 兼 BIE(世界博覧会事務局)日本政府代表 兼 ミラノ博日本政府副代表
2017年7月内閣府地方創生推進事務局 総括参事官
2018年7月(独)中小企業基盤整備機構 理事を経て
2020年7月より現職 抱負:大阪出身でもあり2025年万博という絶好の機会を通じて大阪・関西、そして日本が世界に向けて飛躍できるように取り組みたいです。
現在、コロナ禍における東京オリンピック開催に向けて様々な対策が講じられている中、非常に残念なことに無観客という手段を取らざるを得ない状況です。しかし、実はコロナの陰で忘れられていることがあります。それは真夏の開催時期での熱中症対策です。毎年、熱中症の死者数は2000人程度と言われており、コロナと併せ考えると、この時期の二正面対応は大変厳しいと思われます。
さて、1964年に行われた東京オリンピック。当時の日本社会では成長と効率が求められた時代でした。高齢化率も6%程度でしたが、2021年東京オリンピックの現在、日本社会は成熟と快適さがもっとも重視された時代へと変貌を遂げました。29%という高齢化率も成長から成熟へ、効率から快適さへの変化の一因でしょう。この先、さらに高齢化の割合は高くなると予想されます。
そこで私が指摘したいのは、パラリンピックの重要性です。バリアフリーやユニバーサルデザインを駆使した障害者にやさしい環境整備は、将来的にも成熟や快適さが求められる高齢化社会との親和性が高く、これらの準備を怠らないことこそが、私たちのレガシーとなるのです。
十数年前、全盲の金メダリストとして5つの金メダルを持つレジェンド・元競泳選手で現在、日本パラリンピアンズ協会会長の河合純一氏と対談をした際に私はこう言われました。「二宮さん、毎朝、新聞を読んでいますか?今は新聞を読めるかもしれませんが、20年後、30年後に同じように新聞を読める保証はありません。白内障になるかもしれないし、緑内障になるかもしれないし、黄斑変性症になれば一瞬にして視力を失います。つまり、私たち障害者は健常者の20年後、30年後の姿なのです」と。
では、日本のスポーツビジネスはどのように変遷してきたのでしょうか。日本経済は失われた30年とも言われ、現在もなお停滞の一途ですが、それはスポーツビジネスも同様です。日本と世界のスポーツ市場規模を野球とサッカーで比して見ると、1995年には日本(NPB、Jリーグ)も世界(MLB、プレミアリーグ)もほぼ同規模でした。ところが2010年頃には、日本はほぼ変わらないのに対し、世界の市場規模は日本の3倍以上に成長します。
何が違うのか?バブル経済成長期、世界の超一流選手がこぞって日本にやってきました。そのことに危機感を募らせた世界は自らの組織改革を断行し、スポーツビジネスを改善・改革してきたのに対し、日本のスポーツビジネス界が今もなお停滞している一因はそれらの改革を怠ってきたと言われても仕方がありません。
ただ、日本の中でもマツダスタジアム(MAZDA Zoom-Zoom スタジアム 広島)のような成功例もあります。かつて60億円しかなかった広島カープの売上は、2017年時点でその3倍の180億円を突破しました。実はマツダスタジアムには、様々な観客視点に立った試みが施されています。まるでドレスルームのような女性用トイレ、新幹線から見える球場内の様子(予告効果)、家族からカップルまで楽しめる多様な観戦シート、そして車椅子の方も難なく通れる球場までの幅広で勾配の緩いコンコース、ユニバーサルデザインの導入など、老若男女誰もが楽しめる球場として生まれ変わったのです。
サッカーの成功例で言えば、やはりアマチュアリーグをプロ化したことです。その最大の推進力となったのは川淵三郎氏です。。当時はその剛腕に批判も多くありました。しかし、「時期尚早だ」「前例がない」という声に対し、彼は「時期尚早と言う人は100年経っても時期尚早と言う。前例がないと言う人は100年経っても前例がないと言う。そもそも時期尚早と言う人はやる気がないということだ。しかし、やる気がないとは言えないから時期尚早という言葉で誤魔化そうとする。前例がないと言う人は、アイディアがないということだ。しかしアイディアがないとは言えないから前例がないという言葉で逃げようとする。仕事のできない人は最初からできない理由を考える。しかし、仕事というものは最初からできないのは当たり前である。できないものをできるようにして見せることが仕事なのである」と語りました。このように、彼のリーダーシップにより改革を断行し、地域密着型のプロリーグが発足したからこそ、今のサッカー界の発展があるのです。
以上を踏まえ、私見ながら、2021年東京オリンピックを控え、そしてその先を見据え、今、日本のスポーツリーダーに必要なものは「Passion」「Mission&Vision」そして「Action」であると考えます。人生で一番大切なものは「時間」です。お金でもなく名誉でもなく「時間」こそが最大の資源です。その資源は磨かなければ資産にはなりません。「時間」を取り戻すことはできない。であれば、後悔なきよう情熱と高邁な理念と崇高な使命感をもって行動していかなければならないのではないでしょうか。コロナ禍という厳しい環境ではありますが、ぜひ日本のスポーツビジネス界にも改革の機運が高まることを期待しております。
◆二宮 清純氏 プロフィール
スポーツジャーナリスト、株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役
1960年、愛媛県生まれ。スポーツ紙や流通紙の記者を経てフリーのスポーツジャーナリストとして独立。オリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。執筆活動、スポーツニュース・報道番組のコメンテーターとしても活躍中。明治大学大学院博士前期課程修了。広島大学特別招聘教授。大正大学地域構想研究所客員教授。経済産業省「地域×スポーツクラブ産業研究会」委員。認定NPO法人健康都市活動支援機構理事。著書に『勝者の思考法』『変われない組織は滅びる』『歩を「と金」に変える人材活用術』『歓喜と絶望のオリンピック名勝負物語』など多数。