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賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局

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活動報告

活動レポート 東京例会
2020年05月27日
第41回例会 東京

写真:スペシャル講演 サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野 慶久氏

特別メンバーズスピーチでは、4月例会で好評を博した順天堂大学医学部の小林弘幸先生に「今、何をすべきか?コロナウィルスの現状と対策」シリーズ第2弾として最新の情報を開示いただきました。

また、スペシャル講演は、サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野 慶久 氏にお話いただきました。離職率28%、4人に1人が辞めていく状況から、テレワークの導入、複業の自由化、一人ひとりが自由に自身の働き方を宣言する「働き方宣言制度」の運用など、働き方の多様化に取り組み、離職率を大きく低減させたサイボウズ。サイボウズが実践する、生産性と幸福度を高める働き方改革やそれを支えるツール群を、社内事例を交えてご紹介いただきました。
講演内容

スペシャル講演

「これからの組織と緊急テレワーク講座」
サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野 慶久 氏

弊社はグループウェアを中心としたソフトウェア開発・販売・運用を行うIT企業として今年で創業23年を迎えました。2020年の企業理念としては、多様な個性を活かし、公明正大で、自立と議論を重んじ、理想への共感を持つことで「チームワークあふれる社会を創る」を掲げています。

ただ、1997年の創業以降、ベンチャー企業として成長するにあたり、様々な苦難がありました。05年には社員の離職率が28%に上昇し、業務転換や給与引き上げなどの対策を講じましたが対症療法に過ぎず、抜本的に人事制度の見直しをするに至りました。「100人100通りの働き方」というコンセプトのもと、働き方の多様化を推進し、働く時間や場所、時間帯、育休、子連れ出勤、副業可、再入社制度など、次々に多様化を進めてきました。結果として、2010年には離職率が5%に下がり、右肩上がりの売り上げ高となり、現在では、女性社員の比率は4割強です。IT業界としては極めて稀ではないかと思います。

組織のあり方については、フレデリック・ラルー氏の著書「ティール組織」に5つの形態が示されています。ボスの力により秩序と安定をもたらすレッド(衝動型)組織、ヒエラルキーにより安定性と規模拡大を考えたアンバー(順応型)組織、さらに時代の変化に対応するため目標達成を重視したオレンジ(達成型)組織、調和や平等や公平性を重んじたグリーン(多元型)組織、自己決定や自己管理による主体的な協力関係で成り立つティール(進化型)組織の5つに定義し論じています。

サイボウズでは、グループウェアで情報共有したり、会議をオープンにしたり、経費を公開したり、問題解決メソッドも入社3日目から研修したり、気付いたことに対し必ず質問をし、聞かれた側は説明をする責任を負うなど、ティール(進化型)組織と似た形態を採っています。

ただ、このような組織形態では、現場の自己決定が重視され、意見の対立も間々ありますが、ティールでは「紛争解決」の仕組みによって問題の解決が図られます。これが現在の進化した組織形態であり、世界中の企業で広く採用されているものです。

また、「働き方の多様化」にはいくつかの要件があります。理想への共感や個性の尊重、公明正大、自立と議論などを重んじる「風土」と、多様化のための「制度」と「ツール」の3つが必須と考えます。その「制度」を活かすためには「ツール」が必要なので、例えば、リアルオフィスとバーチャルオフィスの併設によって物理的出社も論理的出社も可能にするなど、「サイロ化」「非効率化」を解消するためには「ツール」が必要です。しかし、それよりも大事なことは、それぞれの個性を活かす「風土」にあります。

もし仮に組織が上手くいかなくなったら、その組織の型を変えることも検討してみてはいかがでしょうか。働き方の多様化によって百人百色の異なるモチベーションを引き出し、それぞれの個性を活かした働きやすい環境作りにより、「働きがいのある会社」として成長できるのです。

Q&A

Q:新型コロナ感染拡大で大阪府と連携した軽症者用医療アプリの開発や自治体や内閣官房との地方創生事業などは今後も活発化されるのか?

A:今後も自治体と組むことで情報の共有化を積極的に進めていきたいと思います。特に虐待児童の問題などは早急に解決したいのですが、自治体のIT化に時間がかかるなどの問題もあります。しかし、必ずやり遂げたいと思っています。

Q:デジタル・トランスフォーメーションの時代、サイボウズ社の世界、あるいはアジア戦略を教えてほしい

A:私の解釈では、デジタル化しても、今までのビジネスフローを変えなければ、変わり映えしません。本当のデジタル・トランスフォーメーションとは誰もが全員と一瞬で情報共有でき、誰もが発信できるようにデジタルなツールを使いこなす組織に形を変えることにあります。

アジア戦略については、Kintoneを中心に、中国、アメリカ、オーストラリアなどグローバルに展開中です。特にアジアでは、デジタル化未開拓なところを一気にクラウド化するような場面もあり、今後もアジアでの事業展開を加速していきたいと考えています。

Q:サイボウズ社で実施している紛争解決の教育訓練、問題解決メソッドの具体的内容について

A:現場の意見が対立した時、感情的にもつれると建設的な意見どころか、お互いに批判し合うことになります。解決のためには、まずは事実と解釈に、現実と理想に分け、お互いの理想のズレを確認します。そして問題解決のための一致点を見いだす(共通の理想作り)というステップを踏むことなど、細分化したフレームワークに沿って問題解決のメソッドを入社直後からトレーニングしていくことです。

◆青野慶久氏 プロフィール
1971年生まれ。愛媛県今治市出身。

大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、
松下電工(現 パナソニック)を経て、
1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。
2005年4月代表取締役社長に就任。
2018年1月代表取締役社長 兼 チームワーク総研所長(現任)
社内のワークスタイル変革を推進し離職率を7分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。
また2011年から事業のクラウド化を進め、売り上げの半分を超えるまでに成長。
総務省、厚労省、経産省、内閣府、内閣官房の働き方変革プロジェクトの外部アドバイザーやCSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)の副会長などを歴任。

著書に『ちょいデキ!』(文春新書)、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)、『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』(PHP研究所)がある。

特別メンバーズスピーチ

「今、何をすべきか?コロナウィルスの現状と対策」シリーズ第2弾
順天堂大学医学部教授 東京都医師会常任理事(医療支援担当)スポーツ庁参与 小林弘幸 氏

本日のテーマは以下の点に絞ってお話したいと思います。

コロナ感染の最近の動向

東京都の感染者数が一日200名を超えるとオーバーシュートにいくだろうと言われていましたが、200名を超えたのは一日だけで、それ以外は200名以下でした。今後、我々が注視すべき国はスウェーデンの動向です。この国だけほぼ経済対策なしに緩やかな自然免疫の獲得を目指した国で、国民の25%が自然免疫を獲得しています。ただし、人口当たりの死亡率はノルウェーやフィンランドより3~5倍高いので、今後の第2波に備えどうすべきかを考えなければいけないと思います。

治療薬、ワクチンについて

いくつか候補はありますが、まだ検証の段階です。ただ、来年早々にどこかの国から出てくるかもしれませんが、まずは安全性を確保し、抗体の安定性と持続性を検証しなければなりません。その分、どうしても時間がかかるので、ワクチンができればすぐに安心というわけにはいかないだろうと考えています。

日本人の死亡者数がなぜ少ないのか

最近のデータでは死亡者数846人(2020.5.25時点)で、他国では3万人~10万人と多いのですが、その差で考えられることは、日本にはマスクを付ける文化があり、手洗いの習慣があるという点が挙げられます。また、肥満の人が少なく、糖尿病患者の数も少ないことや医療システムの違いなどが考えられます。

今後、我々はどうしたらいいのか

非常事態宣言は解除されましたが、「手洗い」「マスク」「密集を避けること」などは継続して行っていきましょう。一方で、ワクチンができるまで集団免疫をつけていくことも重要です。そうなると、スウェーデンのように死亡者数がどうしても増加してしまうので、重症患者に対するケアをしっかりできる体制が必要となります。もちろん、PCR検査が必要な患者に対してすぐに対応できる環境作りは東京都医師会としても努力しています。ただ、いたずらに増やすことには意味がありません。

真の医療崩壊とは何か

多くの人が思う医療崩壊は、コロナ患者が医療機関に診てもらえないことだと思いますが、現場の医師が考えるコロナによる医療崩壊とは、コロナ感染を懸念し診察に来ない患者の検診の遅れによって重大な疾患を見逃す可能性や、病院経営の悪化による地域医療の崩壊など、コロナによってコロナ以外の問題が起きていることです。ただ、今はどこの病院もしっかり感染対策を取っているので安心して受診していただきたいと思います。

 

 

ポストコロナにどう立ち向かうべきか

現状では、特効薬もワクチンもないので、自己免疫機能を高めるしかありません。重要なことは、第2波に備え自己免疫機能を高めることです。免疫機能を高めるための3つのキーワード、「運動」「食事」「人との繋がり」です。大事なことは、今から第2波に備えて、普段の生活を見直し、改善していくことです。

Q&A

Q:来年のオリンピック開催についてIOCでも懐疑的な意見があるが、第2波の見通しは?

A:あくまで私見ですが、オリンピック開催は難しい状況にあると思います。なぜなら、日本一国だけの問題ではなく、他国の状況にもよるからです。ただ、個人的希望としては、ワクチンができ、世界的にうまくいけば、ぜひ開催してもらいたいと思います。

Q:コロナ専用病床と一般患者との住み分けに問題点は?

A:他の患者とは動線が違うので、ぜひ安心して受診していただきたいと思います。

Q:スウェーデンのコロナ対策は、国としての方針として最初から行われたのか?

A:この点は難しい状況だったと思います。対応によっては、もっと死亡者数が爆発的に増えたかもしれないし、結果論ではあります。実際にノルウェーやフィンランドよりも3~5倍も死亡率が高いので、このことを良しとするかどうかという問題もあります。要するに、経済を止めることなく、重症患者をしっかり診ることができる環境づくりに懸かっていると思います。

Q:言い残したこと

A:コロナ感染予防の自粛期間中、自分でも気がつかない間に、精神的にボディブローのように効いてくるかもしれませんが、緊急事態宣言が解除された今こそ、生活習慣を見つめ直し、規則正しい生活を送ることで肉体と精神共に健康を維持していくことがとても重要です。

順天堂大学医学部教授 東京都医師会常任理事(医療支援担当)スポーツ庁参与 小林弘幸 氏

◆小林弘幸氏 プロフィール
1960年、埼玉県生まれ
1987年、順天堂大学医学部卒業
1992年、同大学大学院医学研究科修了
ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任する。自律神経研究の第一人者としても知られており、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導に関わる。
また、順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”でもあり、みそをはじめとした腸内環境を整える食材の紹介や、腸内環境を整えるストレッチの考案など、様々な形で健康な心と体の作り方を提案している。
同大学院にて病院管理学(医療安全・感染対策・健康管理)を指導。

開催日時
2020年5月27日(水)18:00~20:25
タイムテーブル
18:00 開会
18:00~18:05 代表幹事挨拶
18:05~18:35 特別メンバーズスピーチ(順天堂大学医学部教授 東京都医師会常任理事 小林弘幸 氏)
18:35~18:55 休憩
18:55~20:25 スペシャル講演(サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野 慶久 氏)
20:25 閉会
場所
株式会社矢動丸プロジェクト 銀座スタジオ
東京都中央区銀座6-2-1 Daiwa銀座ビル 8F(矢動丸プロジェクト内)Google Map
TEL:03-6215-8088
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