賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局
受付時間 平日9:30~18:00
メンバーズスピーチの東京個別指導学院は、6期連続で増収増益を達成し、在籍生徒数は過去最高を更新、2018年5月には大学生を中心としたアルバイト講師の数が1万人を超えました。なぜ東京個別指導学院に人が集まるのか。なぜ働く人の満足度が高いのか。人財育成のプロに「人づくりの根幹」について、代表取締役社長齋藤勝己氏にお話しいただきました。
また、スペシャル講演では、ライフネット生命保険の創業者であり、全国の大学でも例をみない公募というプロセスを経て、69歳で実業界から大学学長へと異例の転身を遂げた立命館アジア太平洋大学学長の出口治明氏を講師にお迎えし、働き方改革、リーダーシップ、マネジメントをテーマにお話しいただきました。
講演内容
東京個別指導学院は、1985年に創業した個別指導塾のパイオニアです。現在、6期連続での増収増益を続けています。個別指導は1人の講師が生徒1~2人を指導します。247教室をすべて直営で運営しており、生徒はおよそ3万5000人。大学生を中心とするアルバイト講師は昨年1万人を超えました。講師の成長が事業成長の根幹です。では講師の成長に欠かせないものは何か。チームで成長する「共創」の体験です。
私たちが実践する共創の人財育成メソッドは、「仕組み」と「リーダーシップ」から成り立っています。仕組みを【TEACHERS‘ SUMMIT】といいます。教室をチームと捉え、チームで成長する仕組みです。年度初めに企業と同じように事業計画を立てます。「こんな教室にしたい」というビジョンを描き、計画に落とし込み、1年かけてPDCAを回すのです。大学生が仕事の実践を通じて成長できるこの仕組みは「SDGs目標4:質の高い教育をみんなに / ターゲット4.4 若者・成人の技術的・職業的スキルの向上」を持続的に目指す取り組みとして、外務省や経団連のSDGsサイトに掲載されました。
昨年末のリーダーズ倶楽部で、元講師とのすばらしい出会いがありました。メガバンクに15年間勤め、3年前に金融データサイエンスで起業した原健太郎さんをご紹介します。「株式会社finx代表取締役の原健太郎と申します。大学の4年間、東京個別指導学院で講師バイトを経験しました。銀行の15年間は常に好成績を収めました。それはなぜか。東京個別での経験があるからです。新入社員研修では周りが子どもに見えました。なぜなら、共創の経験、ビジネスを仲間とともに構築した経験が彼らにはないからです。私にはありました。チームを強くする能力をたった2~3年で身につけたわけです。私のビジネスマンとしての強さ、起業家のベースはすべて東京個別指導学院のアルバイトにあります。」
共創の仕組みでは、最前線で活躍する講師一人ひとりのリーダーシップが育まれます。ここで肝要なのは、40人の講師の心に火をともす、社員の強いリーダーシップがあることです。それが「共創のリーダーシップ」です。
「共創のリーダーシップ」には4つの要素があります。①支配でなく共創。②権限ではなく魅力。③指示ではなく対話。④あるべきではなくありたい。若手社員が輝いていなかったとしたら、問題は我々にあります。若手の主体性やエネルギーを我々が引き出せていないのです。「共創のリーダーシップ」はそれが可能です。
世間では大学生のアルバイトが集まらないとされる中、3年間で3000人も増えました。昨年は講師OBの組織化に乗り出しました。世界中で6万人の元講師が活躍しています。「世界の未来を切り拓く人財のプラットフォーマーになる」、それが私の夢です。
◆齋藤勝己氏 プロフィール
株式会社東京個別指導学院 代表取締役社長
1964年生まれ。曾祖父は落語家の初代三遊亭圓歌。
学生時代の接客アルバイトの経験から、ホスピタリティで人を笑顔にする仕事の魅力に気づく。2014年に株式会社東京個別指導学院の代表取締役社長に就任。全国3万5000人が通う個別指導塾として、6期連続の増収増益を達成するなど、現場最前線を知るトップとして、強いリーダーシップを発揮している。2018年春、アルバイト講師の数が1万人を突破し、マスコミでも取り上げられる。講師の85パーセントが大学生であり、口コミで仕事のやりがいや満足度の高さが広まっている。講師が年間計画を策定し、PDCAを回しながらチームで成長する1年がかりのプログラム「TEACHERS’ SUMMIT」、就職活動を控えた大学3年生向けの「TEACHERS’ SUMMIT リーダーシッププログラム」を独自に開発。関わるすべての人が成長する、共創の人財育成体系を確立した。
私は世界を理解するためには、「タテヨコ算数」の視点が必要だと提唱しています。タテは歴史的な視点、ヨコは世界的な視点のことです。
少子高齢化は、現役世代の所得税と住民票で社会が回っていたレベルから、消費税とマイナンバーが社会のインフラになるべきパラダイムシフトを意味します。中でも、高齢化に伴う介護が社会問題ですが、健康寿命を延ばす以外にこの問題を解決する答えはありません。健康寿命を延ばすには、働くことが一番だと医者の多くが共通して指摘しています。ですから、まずは定年を廃止すべきです。世界を見ても定年制を採用している国はありません。定年制の廃止は一石五鳥です。まず健康になり、医療年金財政が好転し、年功序列が消失し、中高年のやる気が増幅し、高齢者の労働人口が増加します。
少子化についても、歴史を遡れば人口減少で繁栄した国や地域は皆無ですので出生率を上げる必要がありますが、日本のように、仕事と出産を選択する国は他にありません。フランスにはシラク三原則があります。第一、子どもを産みたい時に産めるように政府が給付支援する。第二、待機児童をゼロにする。第三、育児休業からの復帰をランクアップ(強化する)するか、少なくともキャリアの中断・ランクダウンは法による罰則を設ける。この3つだけです。このように、先進国では出産も仕事も両立支援なので出生率が上向いているのです。
かつて「Japan as No.1」の時代がありましたが、今や世界のトップ企業20の中で日本企業はゼロです。理由は人口減少でもデフレでもありません。GAFA*1やユニコーン*2に象徴されるような経済を牽引するトップ企業の中心はシリコンバレーにあります。中国は約70社、EUは約31社(うちUKに15社)、インドは約17社創出していますが、日本はゼロです。つまり、この日本の30年間の停滞は新しい産業を生み出せなかったことが原因と考えるのが一番素直です。
GAFAやユニコーン企業の経営者たちのような働き方では「人・本・旅」の体験を通して脳を刺激し、色々なことを吸収し、アイディア勝負をしています。脳を酷使するので労働時間としては短くなりますが、脳医学の世界では2時間が集中のリミットと言われているので適合しています。他方、日本では、いまだ戦後製造業の「めし・風呂・寝る」という工場モデルに過剰適応したその残滓が企業のトップを占めている状況です。
ようやく政府も「働き方改革」の一環として、残業規制や兼業奨励を推し進めていますが、それはグローバル化に伴い、多国籍、異業種、異文化、異分野交流などを通して創造する力(個性重視)を養っていかなければ生き残れないからです。新しい時代に必要なのは自ら原点を疑う力であり、新しいものは常識を疑うところから生まれるのです。
GAFA*1・・・Google、Apple、Facebook、Amazonの頭文字。
ユニコーン*2・・・ユニコーン企業とは、企業としての評価額が10億ドル(約1250億円)以上で、非上場のベンチャー企業を指す。(コトバンクより)
◆出口治明氏 プロフィール
立命館アジア太平洋大学 学長/学校法人立命館副総長・理事
1948年、三重県美杉村(現・津市)4月18日生まれ
1972年、京都大学法学部(専攻:憲法)を卒業
1972年、日本生命保険相互会社に入社、ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを歴任
2005年、東京大学総長室アドバイザー
2007年、早稲田大学大学院講師
2008年、ライフネット生命保険株式会社を開業、代表取締役社長に就任
2010年、慶應義塾大学講師
2013年、ライフネット生命保険株式会社代表取締役会長に就任
2017年、ライフネット生命保険株式会社代表取締役会長を退任
2018年1月、立命館アジア太平洋大学学長に就任(現在に至る)