賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局
受付時間 平日9:30~18:00
メンバーズスピーチでは、半導体IPコアライセンス事業を手掛ける日本シーバ株式会社 代表取締役社長の日比野一敬氏にご登壇いただきました。
また、スペシャル講演では、ブロックチェーンが仮想通貨やフィンテックを超えて、社会全体にどのような影響を与えうるのか、一般社団法人ブロックチェーン推進協会 代表理事 平野洋一郎氏に事例を交えながら、近未来に向けた可能性をお話しいただきました。
講演内容
本日は、半導体業界から見たイスラエル企業、それからユダヤ人とのビジネスのやり方を中心にお話しさせていただきたいと思います。私は大学卒業後、外資系企業を中心に半導体業界で仕事をして参りましたが、11年前にイスラエルに本拠を置くCEVAに入社し、現在まで従事しております。
弊社日本CEVAは半導体IPコアライセンス事業を手がける会社で、料理で言えばレシピにあたる半導体の設計データを扱っております。いわゆるIP(*IPコア)(=知的財産)と言われますが、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)の技術が多くの携帯電話、ゲーム機、テレビや自動車に使われています。
10年前と比較して現在では、メモリに対してデータの量はその10倍以上あるので、全てのデータは格納しきれない状態にあります。現在は、すべてのデータをメモリに格納し残すことよりも、車やスマホやドローン、ロボットなどのエッジデバイスに人工知能を与え、そこで意味のあるデータのみを取り出し、それをもう一度クラウド側の人工知能で再学習し、さらにエッジデバイスにフィードバックをかけて、より必要性の高いデータのみを識別して、限られたメモリ領域に保存するような技術に進化しています。
CEVAの年間売上規模は約100億円と、それほど大きくありませんが、IP故に製造原価がありませんので利益率は99%と高く、その半分以上を研究開発につぎ込んでおります。この講演をするにあたり、我々はなぜ強いのか、なぜイスラエルなのかについて社内をリサーチしたところ、軍での経験という声が圧倒的に多く、その理由として次のことが挙げられます。
18歳で入隊すると、その環境の違いからまず謙虚になり、1週間程度で軍隊生活を受け入れるようになります。そして規律を重んじ、大人としての自覚を持ち、配属先では、現場の司令官などに自分の考えていることを説明でき、行動に責任を持つようになります。そして、様々な訓練の中で、リスクを承知で行動し、決断することを覚えていくと言います。このような経験が、弊社の原動力ではないかと考えます。
弊社では、スピードと実行力が重要です。日本の多くの組織が検討に1年かかるところを、イスラエルでは3ヶ月で判断を終了しファンディングまで完了します。保守・保証よりも、まずは実装し使ってもらうことを優先し、必要に応じて品質レベルを決定します。社内ではヒエラルキーはなく、みんなが徹底的に話し合い、そしてリソースを集中投入し、コミットしたことを最後まで遂行します。このように、CEVAは質実剛健という言葉がぴったりくる会社です。
*IPコア…大規模論理回路の設計において、知的財産権のある特定機能回路の設計データを他のメーカーにライセンス供与するときの、設計データ自体を指す。IPとは元々は知的財産という意味だが、半導体業界において回路情報は重要な技術製品であり、形のない商品としてIPと呼ばれるようになった。(Wikipediaより)
◆日比野一敬氏 プロフィール
1969年、愛知県生まれ。一貫して半導体業界において25年以上の実績を持つ。
キャリアは外資系半導体商社でのセールスエンジニアに始まり、直近10年間はイスラエルに本拠を置くCEVA社にてシリコンIPのライセンスビジネスに注力。
CEVA入社前はベリシリコン社、LSIロジック社、TSMC社等でASICやシリコンファンドリーのビジネスマネージメントの要職を歴任。成蹊大学理工学部卒業。
ブロックチェーンは仮想通貨を支える技術として生まれ、昨年は仮想通貨ブームによって注目されましたが、今年の1月には580億円、9月には70億円相当の仮想通貨が盗まれ、今年は厳しい年となりました。
これらの盗難事件において、仮想通貨とともにブロックチェーンのイメージも悪くなりましたが、ただ、2つの盗難事件とも仮想通貨固有のセキュリティの問題、扱っていた交換所の問題であり、ブロックチェーン技術の欠陥や不備の問題ではないという点が重要です。
そして、今後の予測においても、ブロックチェーン関連市場は世界的にはこれから5年間で15億ドルから117億ドルの成長が見込まれており、国内においても5年間で49億円から545億円と、将来的市場が伸びていくというリサーチ結果が出ています。
ブロックチェーン技術は仮想通貨を支えるだけではなく、様々な企業向けのシステムやインフラを支えることができる技術ですが、経済産業省の試算によると国内ではブロックチェーン関連市場における仮想通貨関係インフラの割合は1.5%しかありません。今後は、サプライチェーン関連や取引管理関連、シェアリング・エコノミー関連で大きな市場拡大が期待されます。
ブロックチェーン技術は、データの改竄が事実上不可能、非中央集権型で、管理者不在でも動く仕組みであるため、その技術の応用、適応範囲は多岐にわたります。金融関連はもちろん、流通や製造、公共や医療など様々な業種で活用できています。流通ではトレーサビリティによる産地偽装の防止、製造では検査データの捏造・改竄の防止、公共機関では文書の改竄の検知や選挙、電子カルテや治験データの改竄を防ぐなどの様々な領域での活用が期待されています。
今後、さらに進化すると、様々な記録がデータベースからブロックチェーンで可能になり、より透明性の高い信頼性の高いデータの記録が可能となります。インターネットは社会インフラとして情報流通を根本的に変革しましたが、ブロックチェーンは価値の流通を根本的に変えていくこととなるのではないでしょうか。
これまでの20世紀型の密結合的組織では階層と規律で統制され、動きが遅く、昨今の動きの速い時代では負の遺産となってきているのですが、21世紀型の動結合的組織のあり方は、インターネット、クラウド、データ連携などの技術やサービスによって、自律、分散、協調型の組織が可能となり、組織があり仕事があるのではなく、仕事があり組織があるという、時代や環境の変化に適応するスピードに対応した組織が勝ち残る時代となっていきます。
しかし現在のところ、21世紀型の動結合的組織にも足りない部分があります。それは仕事の前段階の「約束」、仕事後の対価の「支払い」の部分です。ここをブロックチェーンがカバーすることができるのです。「スマートコントラクト」という書き換え不能で自律自動で実行が可能なプログラムによって約束がなされ、支払いはブロックチェーンの得意とするトークンによる価値の移動は仮想通貨領域で実証済みです。これらにより、本当の自律、協調、分散の組織の仕組みが成り立ちます。
このように、ブロックチェーンの貢献は、特定領域への適用から始まり、長期的にはあらゆる業界業務における契約履行の自律自動化であり、価値移転の自律自動化となっていきます。中央管理不要、銀行なしでも価値移転が可能となり、インターネット無しで事業ができないように、今後ブロックチェーン技術無しで事業ができないようになっていきます。ブロックチェーンは、このように組織と社会のありようを変えていくのです。
◆平野洋一郎氏 プロフィール
平野洋一郎(ひらの よういちろう)
一般社団法人ブロックチェーン推進協会 代表理事
アステリア株式会社代表取締役社長/CEO
1963年生まれ。
大学を中退し、ソフトウェア開発会社のキャリーラボに入社。
同社でソフトウェア開発事業を始め、日本語ワープロソフト開発に従事。
1987年、ロータス(現IBM)に転職。製品企画、マーケティングに従事。
1998年、インフォテリア株式会社設立。2018年10月1日よりアステリア株式会社に社名変更。