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賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局

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活動報告

活動レポート 東京例会
2018年01月31日
第23回新春例会 東京

写真:スペシャル講演/作家 椎名誠氏

スペシャル講演では、作家の椎名誠氏をお招きし、日本という海に囲まれた小さな国から、これまでに訪れた世界あちこちの国で見た人々の暮らしぶりを眺め、人間の真の幸せや心の充足度についてお話しいただきました。

その後のメンバー交流会では、椎名様との記念撮影やメンバー・参加者同士の名刺交換など、終了時間ギリギリまで大変盛り上がりました。

講演内容

スペシャル講演

幸福な国とは何か
作家 椎名誠氏

私は、仕事柄、世界中の国を訪れ、その国の空気に触れることで、日本と世界との違いを肌で感じることが多くあります。本日は、「幸福な国とは何か」というテーマで私の体験したこと感じたことをお話させていただきます。

OECD(経済協力開発機構)が世界150カ国の幸福度を調査し発表しています。定番ベスト10には北欧3国、アジアからはブータンがランクインしていますが、その中で常に上位にいるアイスランドに行く機会がありました。

アイスランドは溶岩台地に囲まれた自然豊かな国ですが、人口が32万人と少なく、肉や野菜は輸入に頼り、消費税も27%で物価も高いと聞きます。それなのに、幸福度ランキングでは1位になったことのある国です。私は不思議に思い、地元の人に話を聞きました。

そこで分かったことは、安全性が高い国は幸福度が高いということです。原発はなく、クリーンエネルギーによる発電。警察官は拳銃を所持せず、学費は大学まで無料、医療費も国の負担で無料、そして、納めた税金の還元度が分かる透明性の高さなど、人が生きるのに優しい国だと分かりました。子どもを育てる親にとっても安心感はとても大事な要素です。

OECDの主な調査項目は、住む家があるか、寝場所があるか、仕事があるか、希望するものが学習できているか、コミュニティがあるか、そのほか5項目以上ありますが、その中で日本は67位です。思った以上に幸福度の低い国です。しかし、日本に来る外国人には人気があり、例えば、新幹線の車窓から見える風景は看板だらけで、美しくはないのですが、外国人はそれを面白がります。

しかし、世界中を見てきた私が日本の誇りに思うものがあります。それはトイレと水です。私が見て回ったインドや中国やスリランカ、ロシアなどのトイレ事情は日本に比べれば酷いものです。しかし、それも文化や宗教や歴史の違いによるもので、その国を理解することで慣れますし、歩み寄ることができます。アメリカでも公衆便所はとても治安が悪く危険なので入れません。そう考えると、日本は全国どこへ行っても綺麗なトイレがあります。日本の自慢は何かと聞かれたら、胸を張ってトイレと言えましょう。

水に関しても、日本には3万5千以上の川があり、源流から河口まで山岳部をたどる急峻な流れの軟水が豊富です。整備された水道水を飲めるにもかかわらず、ガソリンより高い水を買うという不思議な光景を目にしますが、それでも水にストレスを感じない数少ない国として、世界に誇れますし、四季があることの幸せを感じることができます。

しかし、日本のほとんどの川をダメにしてしまったのがダムです。ゼネコンと政治家がダムを作り、工事のために道路を作り、村を水没させていき、川の流れも変わってしまう。何がそうさせるのでしょうか?お金が最大の価値観では、悪い国になっていきます。そういう意味では、日本の民度はだいぶ低いかもしれません。

水を守ることは日本の命題です。政治家と土建業が動いて金儲けの材料にしてしまう。そうしたところにも目を向けないといけない時期が来ていると思います。そうしないと、国が滅びてしまいます。人口減少の日本は、毎年3万人の自殺者が出ていると言われていますが、そのような国は他にありません。

私は以前、人の死と、それに伴う葬儀産業とお墓に関する本を書いたのですが、国によって葬儀も多種多様です。チベットでは鳥葬、インドではガンジス川に遺体を流す水葬、モンゴルでは風葬、インドシナ半島のラオスから河口付近ではジャングル葬が行われます。

このように、それぞれの国の文化や宗教や風習などによって弔いの違いが大きいのですが、日本の葬儀は棺桶や祭壇や戒名にランクがあり、非常にお金がかかります。私は日本3大悪のひとつだと思っていますが、お墓に入るのにもたくさんお金がかかり、日本の葬儀は世界で一番高いと言われています。一方、フランスやイギリスなどのヨーロッパでは、人の死に対する平等の観点から、行政が20万円と決めているのです。

私はこれまで、世界中多くの国に行き、人々の生活や風土、文化に触れるにつれ、幸福とは何かを考えさせられました。それは、人が安心して暮らせることであり、人間が自然の摂理として、自然とともに人の死を受け入れることだと思うのです。

作家 椎名誠 氏

◆椎名誠氏 プロフィール

1944年東京都生まれ。作家。
1979年より、小説、エッセイ、ルポなどの作家活動に入る。
これまでの主な作品は、『犬の系譜』(講談社)、『岳物語』(集英社)、『アド・バード』(集英社)、『中国の鳥人』(新潮社)、『黄金時代』(文藝春秋)など。
近著は、『椎名誠 超常小説ベストセレクション』(角川文庫)、『かぐや姫はいやな女』(新潮社)、『本人に訊く(弐)』(目黒考二氏との対談、椎名誠旅する文学館)。
最新刊は、『ノミのジャンプと銀河系』(新潮選書)、『家族のあしあと』(集英社)、『おれたちを跨ぐな! わしらは怪しい雑魚釣り隊』(小学館)。
椎名が企画・プロデュースした『椎名誠自走式マガジン ずんがずんが②』(椎名誠 旅する文学館)を2017年6月に刊行。
旅の本も数多く、モンゴルやパタゴニア、シベリアなどへの探検、冒険ものなどを書いています。趣味は焚き火キャンプ、どこか遠くへ行くこと。

公式インターネットミュージアム「椎名誠 旅する文学館」
http://www.shiina-tabi-bungakukan.com

開催日時
1月31日(水)18:00~20:30
タイムテーブル
18:05~18:30 新規入会メンバーのご紹介他
18:30~20:00 スペシャル講演(作家 椎名誠 氏)
20:00~20:30 メンバー交流会(立食)
場所
ホテルニューオータニ東京 エド・ルーム(ザ・メイン)
東京都千代田区紀尾井町4-1Google Map
TEL:03-3265-1111
http://www.newotani.co.jp/tokyo/access/