賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局
受付時間 平日9:30~18:00
メンバーズスピーチでは、九州大学教授でユヌス&椎木ソーシャル・ビジネス研究センターエグゼクティブ・ディレクターの岡田昌治氏にご登壇いただき、経済学者でノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏が唱導するユヌス・ソーシャル・ビジネスと日本人の関わりについてお話しいただきました。
スペシャル講演では、石破茂衆議院議員をお招きし、この国が抱える課題や今後の方向性についてお話いただきました。ご自身の農林水産大臣や地方創生担当大臣などの経験を踏まえ、特に人口減少問題、地方創生におけるサステナビリティについて、示唆に富む提言をいただきました。
講演内容
私は現在、九州大学で教鞭をとる傍ら、ユヌス&椎木ソーシャル・ビジネス研究センター(SBRC) のエグゼクティブ・ディレクターとして、ノーベル平和賞受賞者で経済学者ムハマド・ユヌス氏の提唱するソーシャル・ビジネス推進のため、国内外の色々なプロジェクトに関わっています。
無私の気持ちでビジネスを行うユヌス・ソーシャル・ビジネスには7つの原則があります。①社会的問題の解決が目的であること(環境、医療、エネルギー、教育)②財務的・経済的な自立と持続を可能にすること③株主へのキャピタルゲインは元本以上還元されないこと④利益は別のソーシャル・ビジネスへ使うこと⑤環境に配慮すること⑥社員への良い労働環境と給与を提供すること、そして、⑦楽しんで取り組むこと、です。
特にユヌス氏は③を重視しています。「8人=35億人」これは世界の富裕層トップ8人の合計資産が、世界中の経済的に恵まれない底辺の人々35億人分と同じであることを示しています。経済とは「経世済民」と言いますが、本来我々日本人が持っていた考え方なのです。
二宮尊徳は言います。「道徳なき経済は犯罪である。経済なき道徳は寝言である」そして、近江商人には「売り手よし・買い手よし・世間よし」という三方良しの精神があります。ところが市場原理主義が台頭し、今や世界的に蔓延しています。
昨今、ユヌス氏はこのことを大変危惧しており、「地球上に時限爆弾が仕掛けられた」と述べております。ここで我々日本人が本来持っている社会を取り戻すため、私はユヌス氏の下、地域の産業再生や社会問題解決に向け、企業の方々と連携し事業展開しています。
最後に、ユヌス氏はいつも言います。「人間は誰でもどこか有能なクリエイティビティを持っている。その能力を引き出し、自立することが大事なのだ」と。ようやくユヌス・ソーシャル・ビジネスが日本でも動き始めたところです。ぜひ、これからも注目していただきたいと思います。
◆岡田昌治氏 プロフィール
1953年生まれ。福岡県出身。
東京大学法学部卒業後、79年電電公社に入社。NTTグループ、特に米国子会社のNTTアメリカ(NY)、インターネット・ビジネスのNTT-Xなどにおいて、国際法務を中心に幅広くNTTの国際ビジネスを担当。ワシントン大学(シアトル)経営学修士号MBA取得(85年)、ニューヨーク州弁護士資格取得(93年)。2001年NTT退職後、02年より九州大学法科大学院にて「契約実務」「インターネットと法」「国際企業法務」等の講座を担当、知的財産本部において産学官連携の推進に携わる。08年よりノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス博士とソーシャル・ビジネス推進のための国内外のプロジェクトを担当。もっともユヌス氏に近い日本人と言われている。
私が衆議院議員として初めて当選させていただいてから32年、今では議員全体で14番目、自民党の中でも10番目の当選期数となりました。その私がいま危惧しているのは、日本の国家としてのサステナビリティです。国家とは国民と領土と統治機構の3つであり、国家主権を成り立たせているものです。
その中でも人口減少問題は深刻であり、82年後の西暦2100年には国民が5,200万人に減少すると言われております。特に、若い世代の婚姻率が急激に減少し、出産率も低いと予測されております。北朝鮮からのミサイル問題だけではなく、我が国の人口減少という国難と向き合わなければなりません。国家が溶解しつつある今、日本国の持続可能性の鍵は地方にあります。
田中角栄先生の列島改造は昭和47年、田園都市構想は昭和54年、ふるさと創生は平成元年でしたが、いずれも経済成長期であり、人口増加傾向にある中で、多少の矛盾や行き違いを覆い隠したところがありました。
しかし、これからの急激な人口減少において、失敗は許されません。その鍵となる地方創生は容易ではありませんが、自立的で持続可能性のある日本に創り変えねばなりません。その為には、全国の市町村1,718の自治体が各地元ベースで知恵を絞り地方創生すべきであり、それは霞が関が決めるものではありません。
地方創生には産・学・官・金・労・言の参画・連携が重要です。例えば、学はそれぞれの地元の中学生から大学生まで、金は地元の信金・地銀が要であり、労は労働界、言は地元に根ざした情報発信といった地元各々で創り上げるのです。
東京は日本のために何をすべきか、関西は日本のために何をすべきか、地方は日本のために何をすべきか、それぞれがベスト・プラクティスを見出していかなければ、この国はもちません。いつの時代も地方の熱意と努力が国を変えるのです。いつの時代も権力者ではなく、民間の知恵と力が国を変えてきたのです。今こそ、この国の持続可能性について徹底的に議論していかねばならないと思っております。
◆石破茂氏 プロフィール
1957年生まれ。鳥取県出身。
慶應義塾大学法学部卒。1986年、衆議院議員に全国最年少で初当選。以後、11期連続当選。防衛大臣、農林水産大臣等を歴任し、2014年に初代地方創生・国家戦略特別区域担当大臣に就任。『国防』『国難:政治に幻想はいらない』『日本人のための「集団的自衛権」入門』 『日本列島創生論 地方は国家の希望なり』など著書多数。