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賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局

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活動報告

活動レポート 東京例会
2024年10月22日
「第72回例会 東京」

東京例会では、“いま中国で何が起きているのか。”「中国ウオッチャーの第一人者」東京財団政策研究所 主席研究員 柯 隆 氏にご登壇いただきました。

昨年大阪で開催した秋のパーティーでの蟹瀬誠一氏と対談が大好評につき、今回は東京例会でご講演いただく運びとなりました。

今回、「岐路に立つ中国の行方-石破政権下の対米中関係のあり方」をテーマに、発足される石破政権は対米中でどのような戦略を構築するのだろうか。激変する国際情勢における中国のグローバル戦略のあり方について語っていただきました。また、柯 隆 氏の軽快さと知的さをミックスした語りに質疑応答の時間には多くの方にご関心を寄せていただき、活発な意見交換が行われ、大変充実したものとなりました。

講演内容

スペシャル講演

東京財団政策研究所 主席研究員 柯 隆 氏

中国経済が停滞している現在、本当に中国は台湾に武力行使するのだろうか?その可能性は極めて低いと考えます。武力行使とは戦争行為ですから、その軍事行動の裏付けとなる戦費が必要となります。中国政府の財政収支は赤字で、とても戦費に回すほどの財源を確保できるとは思えません。もう一つの理由は、台湾海峡で有事になった場合、中国に進出している外国企業が撤退あるいは現地駐在員の避難による工場の生産中止で中国経済への打撃が避けられない点です。軍事面においても、実は台湾は2000発以上のミサイルを保有していると言われており、有事になれば当然、反撃するでしょう。そうなれば、武漢にある三峡ダムに直撃し、ダムが決壊すると下流にある都市部は大打撃を受けることになります。また、中国共産党幹部の親族は米国内におり、彼らに動きがない限りは何も起こらないのではないかと思われます。現時点でその予兆はありません。

さて、中国経済ですが、決して楽観できません。投資・貿易・消費、いずれも弱まっており、厳しい状況にあります。また、根本的に社会主義の国ですから、資本主義的な経済を自ら押し潰し、活力を失わせているという矛盾を抱えているのです。習近平体制以降、ずっと下り坂の中国経済にさらに打撃を与えたのがコロナ禍における中小零細企業の倒産です。3年間で400万社とも言われており、今年に入っても、1月から8月までに100万店の飲食店が閉店したという統計もあります。

では、中国の不動産の動向はどうでしょうか?まさに日本のバブル崩壊と同様の道を辿っているように見えます。そもそも、中国不動産バブルの起源は、日本の定期借地権の概念が中国共産党幹部に伝わり、所有権と使用権の分離によって都市再開発が行われるようになったところから始まりました。いわゆる不動産投資が行われ、地方政府が使用権を払い下げ、その財源をインフラ整備や社会保障ファンドの補充に利用します。ところがバブル崩壊すると地方政府の財源が危機的状況に陥り、年金ファンドの財源不足などにより社会不安が起こるわけです。要するに、市場の失敗というよりも政策の失敗と言えるでしょう。まるで日本の教訓が生かされていないようです。

最後に、エコノミストの傍ら、大学で学生を教えている身として日本の対中関係を鑑みた時、対中国よりもまずは日本の教育制度を考える必要があると思います。かつて世界トップランキング入りしていた日本の大学が軒並み凋落している現実を重く受け止め、30年後、40年後の日本を担う若者の育成に注力すべきではないでしょうか。そして本来、論理的思考の日本人が感情的思考の中国人と向き合う時、相手の面子を潰さずにいかに論理を押し通し、実利を得るかがとても重要なカギになるのではないかと思います。米国大統領選後の米中関係の動向にも注視しつつ、凋落する中国経済、そして米中経済戦争の狭間で今後の日本政府の立ち回り方も重要になってくるのではないかと考えます。

Q&A

Q:中国の国家戦略と一帯一路の今後の流れについて教えてほしい。

A:財源がないので、ダウンサイズせざるを得ない。国外インフラ投資のリターンがなく、多くが失策。ただし、ASEANに関しては上手に中国と付き合っているように思う。戦略的には、中国のイノベーションが強化される分野がある。宇宙開発などのトップダウン政策。ただし、民間の技術開発はうまくいかない。なので、世界との差は開いていくと思う。

Q:日本の教育について、世界と渡り合うための起業家精神を養うためには何が必要か?

A:日本の国家像にも関わる話でとても重要な課題だ。日本の教育自治に関して、海外からのガバナンスを拒否する傾向にある。日本の大学が募る寄付金は米国の35分の1と言われているが、米国は多くの寄付金を募り、同時にガバナンスも受け入れている。つまり、寄付金が何に使われているかを情報公開している。一方、日本はとても閉鎖的。ここを打破することが日本の将来にかかっていると思う。日本人は競争には弱くないが、競争しない気質。しかし、この30年間、スポーツ関連を見ると、国際的に決して弱くないと思うし、もっと強くなれると思う。米国で学んだ日本人がノーベル化学賞を受賞したように、日本の研究機関ももっとオープンにすべき。

Q:米国の大統領選挙について、中国は静観しているように見えるが、カマラ・ハリス、ドナルド・トランプのどちらに当選してもらいたいか?

A:中国国内の論考を読む限り、カマラ・ハリスの当選を期待しているようだ。それは、制裁するにしても、事前に告知をし、心の準備ができるからというもの。ただ、一長一短あり。トランプはビジネスマンなので取引ができる利点はある。いずれにしても、米中関係が良くなるかといえば、そうはならないと見ている。米国民の87%が中国を良く思っていないという世論調査もあり、そうなると政治的に厳しい対応を取らざるを得ない。もうひとつ、世界的な反中国の動きがどうなるかも注視している。

Q:中国経済の見通しは?

A:経済危機の発端は“情報”である。小規模な経済危機が点在している中国政府はまず、この情報をコントロールするところが日米のような民主主義国と違う。ただし、問題解決に至っているわけではなく、小規模経済危機は増加していき、いずれその点が面になるとき、革命が起きるのではないかと思う。将来的にはロシアのプーチン後のリスクへの対応と習近平後のリスクへの対応が中国混乱のキーポイントではないか。

◆柯 隆 氏 プロフィール
東京財団政策研究所 主席研究員 柯 隆 氏
1963年中国南京市生まれ
1988年留学のため、来日
1994年名古屋大学大学院経済学研究科修士(経済学)
同年 長銀総合研究所国際調査部研究員
1998年富士通総研経済研究所主任研究員
2006年同主席研究員
2018年東京財団政策研究所主席研究員
兼職:静岡県立大学グローバル地域センター特任教授
多摩大学大学院客員教授
著書:「中国の不良債権問題」(日経新聞出版社、2007年)
『中国「強国復権」の条件」(慶応義塾大学出版会、2018年、第13回樫山純三賞受賞)
「ネオチャイナリスク研究」(慶応義塾大学出版会、2021年)

開催日時
2024年10月22日(火)15:00~17:30
タイムテーブル
15:00      開会
15:00~15:05 開会の挨拶
15:05~17:30 スペシャル講演(東京財団政策研究所 主席研究員 柯 隆 氏)
17:30      閉会
場所
日本外国特派員協会 5階 Function Room1.2.
東京都千代田区 丸の内 3-2-3 丸の内二重橋ビル5階Google Map
TEL:03-3211-3161
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