賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局
受付時間 平日9:30~18:00
今回は、建築界と経済界でそれぞれ名高いお二人にご講演いただけることになりました。
第一部は世界的な建築家としてご活躍する安藤忠雄氏。独学で建築を学び、69年安藤忠雄建築研究所を設立。79 年「住吉の長屋」で日本建築学会賞。代表作に「光の教会」「地中美術館」「ブルス・ドゥ・コメルス」など。イエール大学、コロンビア大学、ハーバード大学の客員教授を務め、97年東京大学教授(03年名誉教授)。95年ブリッカー賞、10年文化勲章。21年、フランス・レジオン・ドヌール勲章コマンドゥールなど受賞多数。25年3月より、大阪うめきた2期の「VS.」にて個展開催。安藤氏のその大胆さと慎重さが絶妙に融合した独自の哲学を体現し、生きる限り前進し挑戦を続けるという揺るぎない姿勢で、聴衆を「安藤ワールド」の真髄へと引き込んでいく。
第二部は、日本を代表する連続起業家、千本倖生氏にご登壇いただきました。
KDDI創業者。京都大学にて電子工学を学んだ後、フロリダ大学にてPh.D.取得。日本電信電話公社(現NTT)を経て、稲盛和夫氏と第二電電(現KDDI)を共同創業。その後、イー・アクセス、イー・モバイルを立ち上げ、両社の拡大を長きにわたり牽引。株式会社レノバ代表取締役会長として牽引。日本通信業界に革命を起こした千本氏。その卓越したビジョンと実行力で、日本のビジネスシーンを牽引し続けています。
千本氏がこれまでに培ってきた豊富な経験と知見を基に、起業家精神、イノベーション、そして未来のビジネスについて深く掘り下げます。
講演内容
80歳を超え、今なお世界中を飛び回る現役の建築家である。独学で建築を学び、1969年に安藤忠雄建築研究所を設立。以来55年にわたり、既成概念にとらわれない建築をつくり続け、世界を驚かせてきた。彼の名を一躍有名にしたのが「住吉の長屋」。初期の代表的建築と言われている。大阪住吉区の下町・木造長屋が並ぶ狭い路地の一角に、コンクリート打放しのボックスを挿入するという大胆な発想で1976年につくられたこの建築は、狭小な空間に、あえて光や風といった自然の要素を取り込む中庭を設けるなど、快適性のみを追求してきたそれまでの住宅建築とは一線を画した住まいのあり方を示し、日本のみならず世界の建築界に衝撃を与えた。その後の活躍は言うまでもなく、上海、台湾、韓国などのアジア圏のみならず、フランスやドイツ、イタリアなどのヨーロッパ圏、アメリカやイギリスなどの欧米圏、現在ではドバイなど中東圏も含め、グローバルに活動している。しかし、世界を知る彼の気がかりはやはり“日本”の未来だった。
「この国の未来を担う子どもたちのために自費で図書館を建築し、寄贈する取り組みを続けている。読書を通して、考える力を養い、知的体力を鍛えることが大切。一人でも多くの子どもたちが、ここから世界へと羽ばたいてくれることを期待している。」と笑顔で語る。彼は地元の大阪市には“こども本の森 中之島”を、岩手県遠野市には“こども本の森 遠野”をつくり、その後も神戸、熊本、鹿児島、松山、北海道、そしてバングラデシュへと取り組みを展開している。
世界中を相手に挑戦してきた安藤氏は、日本人に何が足りないかを知っている。彼の言葉は今の社会への憂いを含みながらも、未来に向けての明るい希望の光を感じさせる。
「前を見て失敗をする。失敗をすれば、必ず良いことがある。可能性はどこにでもあるんだ」
そんなエネルギーに満ちた言葉を発する安藤氏も五体満足ではない。二度のがんを患い、胆囊、胆管、十二指腸、膵臓、脾臓の全摘出手術を受けている。しかし、最初の手術から15年が経った現在も、健康的な食事や適度な運動などに気を配りつつ、今も現役で日々闘い続けている。100歳まで“青春を生きる”のだという。
「色んなところから面白い依頼の相談をいただく。ただ、新しい挑戦には常に危険がつきまとう。面白いことに取り組むときは、落とし穴に注意しなければならない。落ちないように慎重に、それでいて大胆に。生きている限り、前を向いて挑戦を続けたいと思います。」
日本建築界の巨匠・安藤忠雄氏は目を輝かせながら、講演を締めくくった。安藤氏が牽引しているのは日本の建築界だけではなく、日本の子どもたちの未来ではないだろうか。
◆安藤 忠雄 氏 プロフィール
独学で建築を学び、69年安藤忠雄建築研究所を設立。79 年「住吉の長屋」で日本建築学会賞。代表作に「光の教会」「地中美術館」「ブルス・ドゥ・コメルス」など。イエール大学、コロンビア大学、ハーバード大学の客員教授を務め、97年東京大学教授(03年名誉教授)。95年ブリッカー賞、10年文化勲章。21年、フランス・レジオン・ドヌール勲章コマンドゥールなど受賞多数。25年3月より、大阪うめきた2期の「VS.」にて個展開催。
かつて起こった社会変革を伴う産業革命を下支えし、世界を牽引したのはオイルマネーでした。今現在では間違いなく“半導体”です。2024年8月15日時点における世界の半導体企業の売上高ランキングは、1位 NVIDIA、2位 TSMC、3位 Samsungとなっています。半導体が世界を牛耳る、半導体を制する国が世界を制すると言っても過言ではないでしょう。
自動車産業を見ても、今のテスラを見れば一目瞭然です。15インチのタッチスクリーンで車のあらゆる機能を制御するという、電気自動車業界の革命が起こりました。おそらく日本のトヨタは勝てないでしょう。同様に、日本の半導体業界も現在、政府主導の下、官民一体となって半導体事業を再興させようと多額の血税を投入し、頑張ってはいますが、世界の半導体の最先端は2ナノの研究開発生産に対し、日本では12~28ナノ半導体の生産に留まっています。2025年にはその2ナノ半導体の量産体制に入るという、世界のトップを走る企業、それがTSMCです。
もうひとつが“AI”です。AI半導体に関し、世界のトップはNVIDIAです。NVIDIAのCEOはジェンスン・ファンという台湾系アメリカ人です。テスラのCEOイーロン・マスクは南アフリカ出身のアメリカ人です。いずれも出身は米国以外であり、両者ともにゼロからイチを生み出すアントレプレナーだということです。そして、ここにアメリカという国の懐の深さを感じざるを得ません。私たち日本としても、ヘテロジニアスな世界の叡智を結集し、日本というプラットフォームに取り込めるかが、日本がいま最も取り組むべき重要課題ではないかと懸念しています。
私も、稲盛和夫氏らと共に、1兆円の会社を作るという大きな目標を掲げ、KDDIを創業し、現在では時価総額10兆円を超えるまでに成長しています。このゼロイチ精神を日本の多くの起業家たちに伝えるべく、日本各地に出向き、講演しています。また、世界の生の情報を得るべく、1年のうち半分近くは世界中を飛び回っています。経営者のリーダーシップはその人の旅する距離に比例すると思います。経営力はその移動距離に比例するというのが私の経験則から言えることです。
世界第3位のサムスン電子の会長イ・ジェヨンとも親しくしています。私が慶応大学のビジネススクールの教授をしていた頃、ちょうど彼が慶応大学に留学していた時からの旧知の仲です。世界のトップを走る彼ら経営者に共通しているのは、経営手腕だけでなく、文化やフィロソフィーや宗教や歴史などの教養を身につけている点にあります。日本の若い経営者たちにはぜひそのことを学んでいただきたいなと思います。
最後に、私の心の師である坂村真民の詩を送りたいと思います。
『念ずれば花ひらく』
念ずれば 花ひらく 苦しいとき 母がいつも口にしていた このことばを わたしもいつのころからか となえるようになった そしてそのたび わたしの花がふしぎと ひとつひとつ ひらいていった
『二度とない人生だから』
二度とない人生だから 一輪の花にも 無限の愛を そそいでゆこう 一羽の鳥の声にも 無心の耳を かたむけてゆこう
『生きてゆく力がなくなる時』
死のうと思う日はないが 生きてゆく力がなくなることがある そんな時お寺を訪ね わたしひとり 仏陀の前に坐ってくる 力わき明日を思う心が 出てくるまで坐ってくる
◆千本 倖生 氏 プロフィール
KDDI創業者。京都大学にて電子工学を学んだ後、フロリダ大学にてPh.D取得。日本電信電話公社(現NTT)を経て、稲盛和夫氏と第二電電(現KDDI)を共同創業。その後、イー・アクセス、イー・モバイルを立ち上げ、両社の拡大を長きにわたり牽引。株式会社レノバ代表取締役会長として牽引。
シリコンバレーのエクセレントカンパニー数社の取締役やトムソン・ロイター理事を務めたほか、慶應義塾大学大学院教授、カリフォルニア大学バークレー校、カーネギーメロン大学の客員教授、スタンフォード大学客員フェロー等を歴任。豊富な起業・マネジメント経験と幅広いネットワークで多種の事業に深く関与。また、アジア太平洋各国の経済的に困窮する優秀な若者に対し、日本国内の大学における勉学・研究のための奨学金を支給し、将来各国のリーダーとなる人材の養成をする目的とする公益財団法人千本財団を設立(理事長)。また2023年には重度の虐待を受けた子ども達を経済的、精神的にサポートする為に一般社団法人「こどもたちと共に歩む会」を設立(理事長)。
アカデミック/プロフェッショナルメンバーシップ、その他の活動:
・DDI(現KDDI)創業者
・イー・アクセス株式会社 創業者兼CEO
・イー・モバイル(Y!モバイル)創業者兼CEO
・Quality Cloud株式会社 代表取締役会長
・A Iバイオメディカル株式会社 代表取締役会長
・株式会社ディ・ポップスグループ 会長
・Assurant Japan株式会社 会長
・公益財団法人 千本財団 代表理事 理事長
・一般財団法人 こどもたちと共に歩む会 代表理事 理事長
・京都大学 総長顧問 特別教授
・台湾国立陽明交通大学 名誉博士 名誉講座教授
・アジアイノベーション大学(カンボジア)理事長
・多摩大学 特別客室教授
・BBT大学院 名誉教授
・フロリダ大学 国際的慈善活動家賞
・フロリダ大学 卒業生で最高功労起業家賞
・IEEE(米国電気電子学会)フェロー
・IEICE(一般社団法人電子情報通信学会)フェロー