賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局
受付時間 平日9:30~18:00
東京例会では、元駐米大使で一般社団法人日米協会会長の藤崎一郎氏にご登壇いただきました。
今回、「国際情勢の見方」をテーマに、トランプ政権誕生、韓国動乱、中東情勢緊迫、中国、北朝鮮、ロシア、ウクライナなどの動きを細部にとらわれず、どう包括的に読み解くのかを語っていただきました。
また、藤崎一郎氏のグローバルな視点と豊富な知識に加え、駐米大使としての経験に基づく貴重な見解が示され、質疑応答では活発な意見交換が行われました。
講演後の名刺交換では予定時間を超え、多くの参加者の皆様が直接話す機会を得て、大変有意義な時間となりました。
講演内容
1.トランプ時代の再幕開け
11月の選挙はトランプ氏の圧勝でした。普通民主党の方が多く得票し、共和党は選挙人の数で逆転を狙うのですが、今回はトランプ氏の方が一般得票でも勝ちました。接戦州と言われる7州もすべて抑えました。それだけではなく上院、下院、知事の数でも共和党が抑えています。最高裁も共和党大統領が指名した判事が9人中6人いるので、ブレーキをかけるのは難しい状況になりました。たった1%にも満たない僅差であり大勝とは言えないという見方もありますが、結果論から言えばやはり圧勝です。
なぜとんでもない行動や発言の多いトランプ氏に支持が集まったのでしょうか。米大統領を選ぶとき国民が選ぶ基準は強さ、好感度、自分に得かの三点だと思います。好感度以外はトランプが上回ったのでしょう。しかし根っ子には外国生まれの増加、外国への投資増で米国で製造業就労者が減ってしまったこと、ヒスパニック系移民者も不法移民急増に反発し始めたこと、マイノリティへの配意を示す多様性尊重などが行き過ぎたと国民の中に反発があったことがあげられます。
2.新政権の政策・人事
バイデン氏はトランプ第一期政権の政策をひっくり返しました。環境政策、エネルギー政策、国際機関との関係、マイノリティ政策などです。トランプ第二期政権はこれを再度ひっくり返すでしょう。いわばオセロ・ゲームのようなものです。
指名した人事を見ると第一期のときは元軍人など専門家を多用しました。オトナを起用したと言われました。しかしこれらの人はやがてトランプ氏と対立しました。今回は彼に忠誠を誓う政治家、CEO, TVキャスターなどが多いです。首席補佐官、安全保障補佐官、国務長官、財務長官などの要職は世評の高い人です。司法情報関係は逆にこれから前政権の人達に報復を行う人事のためのような議論の余地が大きい人々が指名されています。上院ですんなり指名されるかどうか注目されます。
3.日本との関係
日本とはマルチラテラリズム、パリ協定を含む環境政策、ロシア・北朝鮮観など違いはあります。しかし対中姿勢などはしっかりしているようです。世界で唯一ロシア、中国、北朝鮮に囲まれている我が国を守ると約束しているのは米国だけです。米国から見てもアジアで真に頼りになる安定的な国は日本だけです。
うまくやっていく必要があります。そのためには現職総理を盛り立てる必要があります。トランプ氏は百戦錬磨の交渉の達人です。こちらがバラバラ行けば利用されるだけです。幸い安全保障面では岸田前総理が残した防衛費倍増、トマホーク400機購入、日米合同司令部設置など安全保障面の実績があります。対米投資は2019年以降世界ナンバーワンです。これらをきちんと直接説明すれば良い印象を与えられると思います。
日本の立場はしっかりレジスターしつつけっして感情的対立は招かないよう留意しながらやっていけば、いい展望が開かれると思います。
◆藤崎 一郎 氏 プロフィール
1947年神奈川県生。1969年外務省入省。外務本省のほかジャカルタ、パリ、ロンドン、大蔵省主計局に勤務。在米大使館公使を経て、1999年北米局長、2002年外務審議官、2005年在ジュネーブ国際機関日本政府代表部大使、2008年駐米大使、2012年退官。2013年から2018年まで上智大学特別招聘教授。2018年から2023年まで中曽根平和研究所理事長。現在日米協会会長、北鎌倉女子学園理事長、国際教育支援協会賛助会会長などを務める。2022年瑞宝大綬章受勲。慶応大学、ブラウン大学、スタンフォード大学院にて学ぶ。著書「まだ間に合う」(2022年、講談社現代新書)