賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局
受付時間 平日9:30~18:00
第一部のスペシャル講演①は、当倶楽部の発起人でもあり、DDI(現KDDI)、イー・アクセス、イー・モバイル、レノバと4社の東証一部上場企業を誕生させた株式会社レノバ取締役会長の千本倖生氏に「社長こそ変革を起こせ」というテーマでご自身の今までの足跡や起業家にとって大事なポイントをお話いただきました。
第二部スペシャル講演②は、おなじみ政治ジャーナリストの青山和弘氏をお招きし、「いよいよ崖っぷち 岸田政権に未来はあるのか」と題し、岸田政権の今とこの先の見通しを安倍政権との比較を交えながら、語っていただきました。永田町の裏側を知り尽くした青山氏ならではのお話となりました。
講演内容
私は元々、30万人規模の国営企業・電電公社(現・NTT)のサラリーマンでした。京都大学の電子工学の出身で、光ファイバープロジェクトのリーダー役を担い、周りの優秀な仲間にも恵まれ、若くしてINSの変革者、伝道師などと言われ、程なくして、色々なところから講演会に呼ばれるようになりました。ある日、京都で登壇した後、ある人に声をかけられます。「お前の話、おもろかったわ。もう一回、話しようやないか」それが京セラの稲盛氏との出会いでした。
当時、電電公社の社員でありながら、日本の通信事業の不健全さを感じていた私は、稲盛氏に米国や欧州における通信事業の実情を伝え、改革の必要性を訴えました。技術面では評価されていた私ですが、当時から抜きん出た経営の才能を発揮されていた稲盛氏と意気投合し、電電公社に対抗する新会社を設立しました。健全な競争原理によって通信業界を改革し、世界標準のサービスと価格帯を実現し、国民の利益に資するという大義を抱き、第二電電株式会社・現KDDIを創業するに至ったわけです。
またその後、インターネットの普及に伴い、電気通信事業を行うイー・アクセスを創業するのですが、そこでもゴールドマン・サックスのマネージング・ディレクターだったエリック・ガン氏との出会いがその後の事業展開に広がっていきます。当時のゴールドマン・サックスCEOヘンリー・ポールマンに直接会いに行き、資金調達に成功し、創業することができました。その6年後には、移動体通信事業を行うイー・モバイルの設立にも繋がっていきます。
2014年には、リサイクル事業で着実に業績を伸ばしていたレノバ社長・木南氏と出会い、そこでも意気投合し、環境問題に取り組む彼の熱い心に絆され、社外取締役を頼まれ、就任いたしました。私はそんな木南氏に対し「あなたには強い意志と成長に対するこだわりがない。いま手掛け始めている再生可能エネルギー事業分野に集中しないか」と言いました。一週間後、木南氏が私に言った言葉は「分かりました。弊社主力のリサイクル事業を全て売却し、再生可能エネルギー事業に全力を注ぎます」でした。この英断により、再生可能エネルギー事業に本格参入。太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱など、国内の再生可能エネルギー事業を牽引する現在のレノバの成長に繋がっていきます。
このような私の人生経験を通して、若い経営者の皆様にぜひお伝えしたいことがあります。それは、自分の足で、自分の目で、自分の手で世界を感じろ、ということです。そして、ビジネスプランを周到に準備しろということです。プランが固まったら、すぐにアクションです。さらには、リーディングカンパニーになるには忍耐と辛抱も必要です。
また、起業家にとって大事なことは、実は運動をすることです。私は38年間ほぼ毎日、ジムで50分間の有酸素運動を行います。きっかけは、稲盛氏のエネルギッシュな経営手腕を目の当たりにしたことです。特に経営幹部に厳しかったのは有名な話ですが、稲盛氏は、その厳しさの中で人間が磨かれ、人格が鍛錬されることを仕事を通して悟っていたのです。ですから、稲盛氏と一緒に仕事をする私にとって一生懸命働くには、まずは身体を整えることであり、そのために運動が必要だと思い、ジムに通い始めました。一生懸命仕事をすることができれば、精神や魂が鍛錬され、心や脳が磨かれていくのです。あなた自身を動かすのは脳です。その健全な身体を司る脳にとって大事なことは運動であり、しかも週3回以上、10年以上続けることが大切ですので、ぜひ皆さんも今から実践してみてください。
最後に、1月19日付日経新聞の「交遊抄」に掲載された元最高裁判事・菅野氏の一節をもって皆様への言葉を送りたいと思います。「人の一生は皆のために何をしたかで決まる。君は日本のために何をできたか」この言葉を通して、私自身が関わっている自然エネルギーもまだまだだなと反省しています。皆さんも自分自身の仕事を通して「皆のために何をしたか」を問うてみてください。周りのコミュニティのために、日本という国のために、何ができたか。このような志や大義があるか。そして周りの人、今日会った人、そしてなにより親に感謝しているか。一日の終りに5分間だけでもいいから祈っているか。このような経営者の姿勢が成功に導くと信じています。
◆千本 倖生 氏 プロフィール
1942年、奈良県生まれ。
1966年、京都大学工学部電子工学科卒業。
フロリダ大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。
大学卒業後、日本電信電話公社(現NTT)に入社。1983年退社。
1984年、当時京セラ社長だった稲盛和夫氏らと第二電電株式会社(現KDDI)を共同創業。
1999年、ブロードバンド会社イー・アクセスを創業。
2005年、イー・モバイルを創業。
2014年3月イー・アクセス株式会社取締役名誉会長職を退任し、同年4月株式会社レノバ社外取締役に就任。代表取締役会長を経て、2020年より取締役会長、現在に至る。
【近著】
『あなたは人生をどう歩むか~日本を変えた起業家からの「メッセージ」』(中央公論新社)
岸田政権を分析するには、まず安倍政権との比較をしてみると、非常に分かりやすいかと思います。内閣のカギを握るのは政務秘書官や官房長官と言われており、その内閣を司るチームリーダーとしての資質にも関わってくるのではないかと考えています。
まず、第一次安倍政権は失敗に終わったと言ってもいいと思います。、安倍氏の考えに近い人物であれば重用するという傾向があり、報道では、論功行賞内閣あるいはお友だち内閣などと揶揄されました。また、任命された人は安倍氏に忠誠を誓うものの、慕う者同士がライバル意識で鍔迫り合いが行われるような状況でした。役割分担や主従関係も不明確で、コミュニケーション不足が露呈し、ご病気だったといえ、結局、所信表明演説直後に辞任会見を行うという混乱を引き起こしたものでした。
ところが、第二次安倍政権になり、第一次の反省を活かし、人事などにおいて、かなりの軌道修正を図り、安倍・菅・今井というトライアングルのチームに加え、萩生田・世耕・杉田の3名を加えた6人体制で毎日会議を行い、コミュニケーションを図っていました。中でも、菅・今井両氏は安倍氏に厳しいことも進言していましたし、菅氏が人事で官僚を押さえ掌握し、国会対応も全て行っていました。日程スケジュール管理は今井氏が調整し、安倍氏のタカ派的な政策を遂行しつつもリベラル的な政策を上手く挟み込んで支持率をコントロールしていました。
では、岸田政権はどうでしょうか。元々、岸田氏は官邸経験がなく、政務担当大臣秘書官は息子さんの翔太郎氏と嶋田氏の2人で、最終責任者が不明確である点が挙げられます。それぞれが得意とする分野をそれぞれが担当するといったような形で、それらをまとめるリーダー的存在が不在とも言えるのではないでしょうか。官房長官の松野氏はそもそも安倍派であり、いわゆる外様状態ですし、最側近の木原氏も機能していないように見受けられます。岸田チーム内の情報共有がなく、場当たり的な対応が目につきます。人によっては、第一次安倍内閣よりもひどいのではないかという声も耳にします。
ところが、2023年に入り、岸田氏は非常に明るく意欲的です。防衛費倍増と増税を打ち出したり、原発依存への回帰や新増設・運転期間延長など、野党や世論の反発などどこ吹く風のようです。もちろん、子ども予算の倍増などは岸田政権の目玉政策の一つですが、今後のスケジュール日程を踏まえると、党内的にも気が気ではないようです。3月下旬に23年度予算成立、4月8日に黒田日銀総裁任期満了、4月9日に統一地方選挙前半戦、4月23日に統一地方選挙後半戦・衆議院補欠選挙などと、既に判明している日程を考慮しても、解散総選挙を打つにはいくつも厳しいハードルがありますが、いつまで政権を維持できるかは不透明な状況です。第一次安倍内閣・第二次安倍内閣と比較考察するだけでも、岸田氏の不安定な政権運営は今後もしばらく続いていくのではないかと思われます。
Q:岸田政権の今後、そして次は?森元総理のロシア発言の影響は?
A:危ないと言われ続けた安倍政権は、実は今井秘書官のリベラル政策のおかげもあり、絶妙なバランスを保っていた。逆に、岸田政権は穏健そうに見えて、タカ派な政策を入れ込んだりしているので、周りが追いついてこないという危なさがある。次の候補と言われているのは河野さんか茂木さん。森元総理の発言については、プーチン氏と個人的に仲がいいということと、日本はインドのように立ち回るべきで、欧州とは地政学的に違うので、日本の国益をまず優先すべきだという考えを元々持っている。岸田政権を牽制する意図はないと思う。
Q:4月の地方選挙でも、個人で統一教会の支援を受ける候補者がいるのでは?
A:個人レベルとなると憲法の保障があるので規制することは難しい。表立った組織的活動が水面下で行われるだろう。ただし、宗教・団体何如にかかわらず、便宜供与などの犯罪行為が行われない限りは自由であるという微妙な線引きなのは間違いない。
◆青山 和弘 氏 プロフィール
元日本テレビ政治部次長兼解説委員
星槎大学非常勤講師(2022 年 4 月~)
1968 年千葉県生まれ
出身校:東京大学文学部社会心理学科卒業( 1992 年)
日本テレビ政治部では野党キャップ、自民党キャップを歴任した後、国会官邸キャップは2回(通算 6 年)羽田政権から岸田政権まで15 の政権を取材。阪神大震災から民主党結党、郵政解散、政権交代、東日本大震災、森友・加計問題、安倍トランプ会談など現場取材・リポート。
直接担当した政治家は枝野幸男、前原誠司、鳩山由紀夫、野田佳彦、山崎拓、武部勤、野中広務、亀井静香、安倍晋三、小渕優子、小野寺五典、林芳正、武田良太、小川淳也など与野党を問わない幅広い人脈と分かりやすい解説には定評がある。