賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局
受付時間 平日9:30~18:00
メンバーズ・スピーチでは、経営コンサルタントで若手経営者を育成する「中塾」塾頭の中博氏にご登壇をいただきました。松下幸之助の薫陶を受け、サントリー、森ビル、三菱商事、コスモ石油など数多くの企業のコンサルタント、廣済堂出版社長などを歴任し、多くの経営者や政治家と交わってきた中氏が唱える「成功し続ける経営術 ~松下幸之助に学ぶ~」について、ご講演いただきました。
スペシャル講演は、自律神経研究の第一人者で腸のスペシャリストである順天堂大学教授の小林弘幸氏をお招きし、これまでプロスポーツ選手やアーティスト、文化人をはじめ多くの患者さんを診察・指導してきた小林先生より一流の人に共通する生活習慣、自律神経の整え方などを教えていただきました。
講演内容
松下電器は私にとっての産土(うぶすな)です。巨人・松下幸之助の伝道師として、経営哲学の真髄を伝承していくことが、私の使命と考えております。言霊の名士・松下幸之助の「素直な心になろう」は、人間としての心の体幹、つまり人間力の体幹を日々鍛錬することにあります。
私も含めた800人の入社式で松下さんは「縁(えにし)を感じたら一緒にやりましょう」「この800人の中で会社が一番好きで一番楽しく仕事をした人がたぶんトップになるでしょう。役員になることは間違いない」と言いました。その時、私には響きませんでしたが、後年、さまざまな企業経営に携わる中で、私の中で反芻する言葉となりました。
経営人生において重要なことは何か。戦術でも戦略でもなく、偶然性を楽しくしていけるかどうか。経営は困ったことの連続です。それを人生訓にできるかどうかです。松下幸之助さんはこう言います。「困っても困らない」。松下さん自身、成功の秘訣を病弱で学問がないからだという、その事実を受け入れることから始まるのです。
すべての経験を全部自分の味方にする。そのような波動を持つと病気にもならないのではないかと思うほど94歳まで長生きもされました。経営力は人間力です。経営とはなにか。自分が主体となり、どういうものを目指していくか、その目指すべきビジョン“志と目標”をしっかりと提示すること。そして、その“志と目標”を達成するための方向と手段を必死に考えること。そしてこれだと思ったら、すぐに歩み出すことです。
さらには「開発した商品と自分が本気で会話をする。布団の中で抱きかかえながら問う。商品のほうから『よし!売ってくれ』と言うまで三日三晩問い続ける」とも言います。“工場の方々まで含め全員がその精神になること”これが松下幸之助の一番大事な経営理念なのです。
この経営理念の前提となるものが“志”です。松下さんは若い人に対し「志を求めなさい。毎晩、悩んで志を作りなさい。志さえできれば、すべての道が開けます」と言います。“志”を知るには自分を知らなくてはいけません。
私は英語で「Who am I ?」と問いかけます。ただし、自分の不遇を卑屈に考えず、孔子の「君子は器ならず」にあるように、「人の上に立つ者は、天下を飲むような大きさを持つのである」ことを銘肝しなくてはなりません。
私もこの10年、中塾を通じて松下幸之助の経営学を指南して参りましたが、未だ松下さんの真髄には達しておりません。今後一生追求していくとともに、ここ大阪に経営者ありという時代が来ることを期待しております。
◆中博氏 プロフィール
昭和20年、大阪市生まれ
京都大学経済学部卒業後、松下電器産業(現パナソニック)に入社。経営企画室にて、本社事業計画をはじめ各種プランニング担当。関西経済連合会に主任研究員として出向、21世紀大阪計画、国有事業の民営化の先導となる経団連プロジェクト、自由主義経済プロジェクト等を担当、国鉄民営化につながる。松下幸之助推進の神戸博松下館プロデューサー、世界を考える京都座会の事務局などにかかわる。ビジネス情報誌「The21」創刊編集長を経て独立、コンサルタントとなる。直後日本の先端オピニオンリーダー600人を集合、21世紀日本についての大討論会を主宰、朝まで生テレビ、サンデープロジェクトの原型になる。その後、サントリー、森ビル、三菱商事、コスモ石油などをコンサルタント、廣済堂出版社長などを歴任する。また佐治敬三、森泰吉郎、大川功、中山善朗など名経営者と交わる。現在は、若手経営者を育成する「中塾」を主宰するとともに、各地で「本物の経営」について講演している。
私は順天堂大学医学部で検事・判事研修や医療訴訟、救急プライマリーケアやスポーツ医学など幅広い分野に携わっておりますが、全てに関係することがあります。それは“人がやっている”ということです。有名な一流スポーツ選手を指導する中で分かるのは“負けに不思議の負けなし”です。つまり運やツキではなく、その原因は科学的に説明できるのです。それは“自律神経”にあります。
“ミスを科学できるか”と言うと、人がやっている以上ミスは絶対に防げませんが、心と体が離れる状態で失敗が起きることは分かっています。ミスの科学を定義すると“余裕がないか”“自信がないか”“予想外のことが起きたか”“体調が悪いか”“環境が悪いか”の5つに当てはまり、逆に言えば、これらを意識することで50%は防ぐことができます。
スポーツでも仕事においても、想定内のことでは自律神経は乱れないので、自分の実力を出すためにルーティーンを行います。交感神経と副交感神経に分類される自律神経が生命を維持するために大切な神経と言われるのは血流・血管をコントロールするからですが、その値は年齢とともに下がってきます。スポーツにおいても健康においても、いかに質の良い血液を十分に流すことができるかということに尽きるのです。
最近、スポーツ栄養学で言われているのが“腸”の重要性です。“胃(腸)は第二の脳”と言われますが、本来、発生学的には腸が先であり、“脳は第二の腸”と捉えるべきであり、それほど“腸内環境”は重要です。
実は、ヨーグルトを食べても悪玉菌は消失せず、素晴らしい食材やサプリを飲んでも、腸内環境が悪いと色々な病気が出てくる可能性があります。逆に、腸内環境を良くすることで、血流が良くなり、血液の質も良くなり、自律神経を整えることができます。
では、どうするのか。一つは“食物繊維”です。女性によく言われている大腸ガンの原因が食物繊維の量です。便秘は身体的QOL、精神的QOLが低下し、労働生産率が下がることも分かっています。もう一つ大切なことは“呼吸”です。そして“朝食”。我々の細胞には時計遺伝子があり、腸を一定のリズムで動かすことによってストレスを低減するという意味においても、朝食はとても重要です。
我々の身体の遺伝子のルーツはアフリカにあり、そこに“健康の正体”の鍵があります。我々の身体には、獲物を狩るために血糖値を上げて戦うエネルギーを作り出す遺伝子が埋め込まれています。しかし原始人たちは血糖値が低かった。それはなぜかといえば、1日に30キロも歩いていたからです。
では、ストレスの多い現代社会において我々はどこへ向かうべきでしょうか。ヒントは歩くこと。運動しかありません。そこで私たちは“自律神経のトレーニング法”を考案しました。もちろん“リスクマネージメント”として、あらゆる事態を想定内にできるよう最悪を想定して予行練習を行うことも重要です。
人生を変えるには、ゆっくり動くことです。そうすると呼吸する自分に気が付きます。そして吐く息を長くすることで自律神経を良くします。さらには、人を勇気づけること、自身が謙虚であること。これらが自律神経を整え、健康な身体でいられる秘訣です。そして健康な身体には健康な心が宿るのです。
健康の正体とは、“人がやるべきことをやる”ことにあり、それをやった人間が本当に強い。そうすれば、人生は良い方向に傾いていくでしょう。
◆小林弘幸氏 プロフィール
1960年、埼玉県生まれ
1987年、順天堂大学医学部卒業
1992年、同大学大学院医学研究科修了
ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任する。自律神経研究の第一人者としても知られており、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導に関わる。また、順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”でもあり、みそをはじめとした腸内環境を整える食材の紹介や、腸内環境を整えるストレッチの考案など、様々な形で健康な心と体の作り方を提案している。