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賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局

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活動報告

活動レポート 東京例会
2020年06月25日
第42回例会 東京

写真:スペシャル講演 多摩大学 学長 一般財団法人日本総合研究所 会長 寺島実郎 氏

スペシャル講演は、TBS「サンデーモーニング」MX「寺島実郎の日本再生論」等でお馴染みの骨太の評論家であり、多摩大学 学長、一般財団法人日本総合研究所 会長の寺島実郎氏にご講演いただきました。「コロナ問題の本質とポスト・コロナへの視界」をテーマとし、日本が構造的に抱えた課題をあぶり出したコロナ問題について、文明論的視座をもってお話下さいました。特に、コロナを経た東アジアの構造変化を踏まえ、『米中二極論』的世界観を脱した日本の主体的進路を見据えた戦略を模索頂きました。
講演内容

スペシャル講演

「コロナ問題の本質とポスト・コロナへの視界」
多摩大学 学長 一般財団法人日本総合研究所 会長 寺島実郎 氏

初めに、私たちがコロナ問題を通じて考えるべきことの一つに「ウイルスとの共生」が挙げられます。近年の歴史研究の中で刮目すべき点は、「ビッグヒストリーの中の地球」という視点です。ウイルスを含む微生物の歴史は30億年あまり、我々人類(ホモ・サピエンス)の歴史はわずか20万年であるという視座に立つことにより、我々のほうが地球の新参者であり、人間はその進化の中で内在菌を抱え込みながら生きてきたという歴史的事実を認識することです。

日本ではコロナ禍による死者数は現在968人です(6月25日講演時)。当初専門家会議のメンバーが、85万人が感染し、うち42万人が死亡するかもしれないと言い、8割の接触を避けなければならないと警鐘を鳴らし、連日、メディアが報じましたが、世界に比しても日本は極めて少なく、その「専門性の誤謬」なるものを指摘せざるを得ません。また、日本には科学ジャーナリズムが根付いていないことの証左でもあると思います。我々が持つべきは「全体知」の思考です。

残念ながら皮肉なことに、日本は世界から“日本の司令塔は劣化し、PCR検査数も著しく少ないにもかかわらず死者数が少ない不思議な国”として注目を浴びつつあります。その答えの一つとして、私は経済的中間層の厚さにあると考えます。しかし、この10年の間に日本もかなり変化してきています。そのさなかに今回のコロナ禍です。コロナが問題ではなく、コロナによって日本社会の構造的な問題が炙り出されてきています。その一つに「格差と貧困」、なかでも「ワーキングプア」の問題。そして「ものづくり国家・日本の埋没」が見え始めています。

そして、日本の経済状況を見ても、株価だけが上昇していて異様です。実体経済の資金需要がなく、マネーゲームに投じられ、公的資金投入により株価が支えられ、根拠なき熱狂が維持されている状態です。

そのような中において、世界における日本の立ち位置にも変化が訪れています。いまだ米中二極論を中心に物事を捉えていると、コロナを通じた国際社会における日本の外交戦略を見誤る懸念すらあります。

例えば、アメリカにおいて、トランプ氏vsバイデン氏による次期大統領選挙の行方は、今後の世界秩序にも様々な影響を与えることでしょう。また、韓国の総選挙では、これまで必ず、リベラル政権の揺り戻しとして保守派に回帰することがほとんどでしたが、今回、文在寅氏率いるリベラル派が勝利しました。それはコロナ・マネージメントに成功していることも一因にありますが、今韓国はアメリカと一定の距離を取り、コロナ禍後の人の移動を想定し、中国との合意形成を模索しています。

一方のアメリカは、コロナ感染死者数約8万人(6月25日講演時)というコロナ対応の失敗により大統領選の行方も世界の中のアメリカのプレゼンスも先行き不透明な状況です。日本も対岸の火事ではありません。これまでは中国の台頭に対し、日米同盟で向き合う姿勢でした。今も同盟は重要ですが、東南アジア・東アジアのパワーバランスが変化する今、日本がアジアの中でどのような立ち位置をとるのかが重要な局面に来ています。

これからは二極構造に埋没することなく、全員参加型秩序を志向すべき時期に来ていると考えます。日米同盟の過剰同調から一歩踏み出し、アジアダイナミズムを捉え、その中における信頼感と尊敬を維持継続していくために、国内の産業や経済基盤、政治体制をどのように堅強に構築していくのかが問われているのだと思います。

Q&A

Q:トランプ大統領の敗戦確率は?

A:寺島:現状ではバイデン氏が有利で、副大統領候補に力のある女性を擁立することで、勝てるのではないかと思っています。今の流れでいくと、バイデン氏が勝つ可能性は6割とみています。ただし、トランプ大統領が勝つ可能性がないとは言いきれません。大統領選挙が行われるまでの間、アメリカ経済やコロナの状況、或いはトランプ氏の支持基盤である福音派の動向など、流動的ではあります。

Q:イージスアショアの計画撤回の件について

A:寺島:そもそもイージスアショアの技術基盤に対する不安の声は当初からありました。しかし、そのようなものをなぜ日本が導入することになったのか。それはまさに過剰同調に他なりません。敗戦国ドイツは冷戦後に在独米軍基地の見直しを行いました。同様に、日本も対米関係を再設計するべき時期に来ています。敗戦後から今日に至るまで、80年近く経っても日本国内には米軍基地があり、それを歓迎する向きもありますが、そのことは世界から米国の保護領とみられ、決して独立国とは言えないということに、日本人は気付くべきです。まずは日本人自身が主体的な思考回路を取り戻さなければなりません。

Q:秋にも総選挙が行われるのではないかと囁かれているが、日本経済はどうなるのか?

A:寺島:日本の経済力や産業力、技術力が問われています。そのカギを握るポイントは「原点回帰」だと思います。今やコスト競争には勝てません。コロナ禍において、マスクや人工呼吸器などのほとんどを海外に依存しています。高度な技術力を誇る日本のものづくり国家としての次なる戦略は、安心・安全にまつわる産業の再興、そして食料自給率を高め、これらの安心・安全産業の腰骨を太くすることだと思います。

多摩大学 学長 一般財団法人日本総合研究所 会長 寺島実郎 氏

◆寺島実郎氏 プロフィール
1947年北海道生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了後、三井物産入社。米国三井物産ワシントン事務所長、三井物産常務執行役員、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授等を歴任し、現在一般財団法人日本総合研究所会長、多摩大学学長。国土交通省 国土審議会計画推進部会委員、経済産業省 資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会基本政策分科会委員等、国の審議会委員も多数務める。

著書に、『日本再生の基軸 平成の晩鐘と令和の本質的課題』(岩波書店)、『戦後日本を生きた世代は何を残すべきか われらの持つべき視界と覚悟』(佐高信共著、河出書房新社)、『ジェロントロジー宣言 「知の再武装」で100歳人生を生き抜く』(NHK出版新書)、等多数。

開催日時
2020年6月25日(木)18:00~19:45 ※メンバー限定ライブ配信(無観客での講演)
タイムテーブル
18:00 開会
18:00~18:15 代表幹事挨拶
18:15~19:45 スペシャル講演(多摩大学 学長 一般財団法人日本総合研究所 会長 寺島実郎 氏)
19:45 閉会
場所
株式会社矢動丸プロジェクト 銀座スタジオ
東京都中央区銀座6-2-1 Daiwa銀座ビル 8F(矢動丸プロジェクト内)Google Map
TEL:03-6215-8088
https://yadoumaru.co.jp/access/