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賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局

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活動報告

活動レポート 東京例会
2020年08月25日
第43回例会 東京

写真:スペシャル講演 慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授 夏野剛 氏

スペシャル講演は、「ニコニコ動画」を運営する株式会社ドワンゴ代表取締役社長で、慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授 夏野 剛氏にご講演頂きました。世界初の携帯電話を利用したインターネットビジネスモデル「iモード」を立ち上げ、ネットビジネスの先駆者である夏野氏に、IT技術の問題点を踏まえた日本企業の未来について、また、様々な領域でビジネス展開をする夏野氏のアフターコロナ論、DX後進国ニッポンの課題と急速に進むオンライン化についてお話頂きました。今回は、TV番組「賢者の選択」のアシスタントとして活躍されている福井仁美さんに進行していただきました。
講演内容

スペシャル講演

「アフターコロナの日本企業の未来」
慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授 夏野 剛 氏

現在、世界的にもコロナ禍にあり、オリンピックも延期となるような不安定な社会にあり、予測不可能な時代である今こそ一度立ち止まり、これからの日本を考える好機と捉え、改めて見つめ直す必要があるのではないかと思います。

コロナ禍前においては、1996年以降の日本は世界的なIT革命の波に乗り遅れたと言えます。GDPデータによる1996年と2018年の成長率を比較すると、アメリカは155%、中国は1,441.5%、フランス73.1%、ドイツ58.2%、イギリス100.5%、韓国178.4%と、先進諸国は軒並み成長しているのですが、日本はなんと3.0%の成長率です。

考えられるその原因は、人口減少に伴う生産性の低下のみならず、規制の壁がイノベーションを抑制し、改革を恐れる既得権益の存在などがこの国の25年間の停滞と言えるでしょう。さらには、日本のリーダーのデジタルリテラシーの低さや新陳代謝が起こりにくい日本企業の風土や慣習、25年前と変わらぬ硬直化した産業構造にあり、もはや企業にとって、テクノロジーによる組織体制の刷新如何がアフターコロナの生き残りを賭けた試金石となるのではないでしょうか。

デジタル革命に乗り遅れた日本企業は、人事や時間管理を含むシステムそのものを刷新し、経営者自身も旧来の調整型から決断型のマネジメントへと移行できるかどうかという、経営そのものの概念を変革できるか否かが問われているのです。テクノロジーによるイノベーションは民間よりも政府行政機関のほうが遅れていると考えがちですが、実は逆です。かつて日本経済を牽引した自動車や電機メーカー等大手企業がグローバル競争の中でどうなったか、火を見るより明らかです。

ITの進化により個人の能力が飛躍的に伸び、組織と個人のパワーバランスが大きく変化しました。全体の平均値よりも一部の突出した個人力の高い人材活用、その個人力を最大化できる組織こそがアフターコロナの日本企業に求められるものです。そのための変革に必要なリーダーの資質として、重責に見合うハイリスクハイリターンであるべきで、旧態依然とした組織運営では今後想定される劇的な社会変化に対応できかねません。

私は、第四次産業革命(IT革命)において、AIやIoTなどが及ぼす未曾有の社会環境の変化に、二つの中心価値「そうぞう(創造:Creationと想像:Imagination)」でイノベーションし続けることこそがアフターコロナの日本企業が取り組むべき課題であり、日本の未来に明るい兆しをもたらすと考えます。皆さん、ぜひ頑張りましょう。

Q&A

Q:デジタルリテラシーがなかなか進まない会社はどうすればよいか?

A:夏野:デジタルリテラシーが低い会社の株価は下がる。デジタル化に対応できる経営陣に変わるか、それが不可能なら、その会社に居続けることは本人にとってマイナスなので辞めるしかない。

Q:副業や兼業について、企業や経営者にとってのメリットは?

A:夏野:副業や兼業は人材のミスマッチの解消に貢献する。昔は企業内で多種多様な人材配置がなされたが、今はその余裕がない。よって社会全体で人材の適材適所を行うべきだが、転職のリスクを軽減すべく、社内で副業・兼業を認め、全体として適正に評価される社会であるべきで、そのことが会社にとってもメリットになる。

Q:高齢者がデジタル社会から置いていかれないためには?

A:夏野:仕事でデジタルを使っている高齢者と退職後年金生活をしている高齢者と分けて考えるべき。仕事をしている高齢者は必然的にデジタルが身につくが、それは障害者であってもデジタル化による利便性の向上は社会の趨勢であり、高齢であるかどうかの棲み分けそのものをすべきではない。

Q:日本がIT後進国であると露呈した今、台湾デジタル大臣オードリー・タン氏の登用のように日本も民間登用はできないのか?

A:夏野:民間登用は日本の政治システムにおいても可能で、かつてはよく行われた。ただ、もちろん政治も遅れているが、政治よりも民間のほうがデジタル化が遅れている。

Q:ソニーの「VISION-S」に期待しているが、夏野氏の見解は?

A:夏野:ソニーが好調の要因は半導体事業や金融事業及びゲーム事業によるもので、残念ながら製造業としては低い。コンセプトカー発表と同時に本格参入の日時を宣言しなかったことで、テスラ参入の時のような衝撃はまったくなかった。もちろん、頑張ってほしいと願っている。

Q:若い人の貧困が社会問題となっているが、日本が目指す人材育成とは?

A:夏野:一概に若い人の貧困と捉えることなく、所得格差として見た場合、フローの格差はそれほどでもないが、ストック(資産)の格差のほうが大きい。フローの問題でいえば、ベーシックインカムや生活保護の制度設計を進めるべきで、フローの問題を解決した上でストックの格差問題について議論すべき。

Q:日本経済はうまくいっていると思っている人が大半。なぜ実態とかけ離れた認識なのか?

A:夏野:海外に行くと分かるが、日本だけ25年間給与水準が変わらない。内向きな思考では気がつかないかもしれないが、これから日に日に実感することになるだろう。

Q:日本企業にイノベーションで競争する力はないのか?

A:夏野:一番大事なことは既存の仕組みを変えること。7階層の役職を4階層にするなどして、誰でもチャンスを掴むことが可能になり、イノベーションが生まれる構造にすることで競争力が自然とついていく。

Q:日本でGAFAとBATXのようなIT企業が生まれない根本原因は?

A:夏野:資本の論理が大きい。お金の集まり具合がかなり違う。0-1のスタートアップは厳しいが、1-100のベンチャーは集まりやすい。ただ100-1000、1000-10000の企業はまた厳しいので、もっとリスクを取ってお金を回したほうがいい。

Q:政府・行政機関の学校教育について

A:夏野:学校教育については、現在、政府は積極的に取り組んでいる。個人的には、官僚と民間の行き来(リボルビングドア)の推進が活性化に繋がると思う。

Q:超高齢化とデジタル・ディバイドについて

A:夏野:高齢者が働きやすい環境を作るためのデジタル化と引退した高齢者のデジタル・ディバイドについては別の議論として考えるべき。

Q:今の日本でイノベーションを起こせる企業は?

A:夏野:どの企業にもポテンシャルはある。今、問われているのは経営者自身であり、自社のポテンシャルを活かしているかどうかであり、多くの企業は活かしきっていない。

Q:大阪府知事の吉村知事との対談を拝見したが、大阪府についてどのようにお考えか?

A:夏野:5年前の都構想否決で大阪は終わったと思ったが、吉村知事や松井市長の尽力により現在に至っている。11月に通れば、地方自治の枠組みが変わると思っているので、府民に期待している。

Q:既得権益団体も必要悪として我慢する人もいると思うが、個人としてどうすべきか?

A:夏野:個人としては、まずは自分の幸せを追求してほしい。その場にじっとしていることが必ずしも正解ではない。我慢せず、自分の幸せのために他の可能性も追求してほしい。

慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授 夏野 剛 氏

◆夏野 剛 氏 プロフィール
早稲田大学政治経済学部卒、東京ガス入社。
ペンシルバニア大学経営大学院(ウォートンスクール)卒。
ベンチャー企業副社長を経て、NTTドコモへ。「iモード」「おサイフケータイ」などの多くのサービスを立ち上げ、ドコモ執行役員を務めた。現在は慶應大学の特別招聘教授のほか、株式会社ドワンゴ代表取締役社長、株式会社ムービーウォーカー代表取締役会長、そして、KADOKAWA、トランスコスモス、セガサミーホールディングス、グリー、USEN-NEXT HOLDINGS、日本オラクルの取締役を兼任。このほか経済産業省の未踏IT人材発掘・育成事業の統括プロジェクトマネージャー、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会参与、内閣官房規制改革推進会議委員も務める。

開催日時
2020年8月25日(木)18:55~20:30 ※メンバー限定ライブ配信(無観客での講演)
タイムテーブル
18:55 開会
18:55~19:00 代表幹事挨拶
19:00~20:30 スペシャル講演(慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授 夏野 剛 氏)
20:30 閉会
場所
株式会社矢動丸プロジェクト 銀座スタジオ
東京都中央区銀座6-2-1 Daiwa銀座ビル 8F(矢動丸プロジェクト内)Google Map
TEL:03-6215-8088
https://yadoumaru.co.jp/access/