活動レポート 東京例会2021年1月20日

第47回例会 東京

ソースネクスト株式会社 代表取締役社長 松田 憲幸氏

写真:スペシャル講演 ソースネクスト株式会社 代表取締役社長 松田 憲幸 氏

スペシャル講演①は、プレゼンの神と言われている株式会社圓窓 代表取締役 澤 円 氏にご講演頂きました。COVID-19=新型コロナウイルスの登場により、あらゆるビジネスが大きな影響を受けました。パンデミックを知ってしまった世界において、テクノロジーの重要性はさらに高まったことを誰もが認識していると思います。今、どんなテクノロジーが世の中に存在して、どう付き合っていけばいいのか、デモも交えてお話しいただきました。

スペシャル講演②は、米シリコンバレーで活動されているソースネクスト株式会社 代表取締役社長 松田 憲幸 氏にご講演頂きました。世界最先端のIT(情報技術)が集まるシリコンバレーで、より良い製品を見つけ出し長きに亘り日本を牽引してきた松田氏に、時代の変化が著しい中、日本が世界に向けて何を発信すべきなのか具体的なお話を交えご紹介頂きました。

講演内容
スペシャル講演①

「COVID-19時代を生き抜くために必要なテクノロジー」

株式会社圓窓 代表取締役 澤 円 氏

株式会社圓窓 代表取締役 澤 円 氏

2021年1月東京例会

2021年1月東京例会

テクノロジーは何のために存在するのでしょうか。それは、全てのテクノロジーは「時間」と「空間」を解決するために存在していると思います。また、AIは私たちの仕事に置き換わる脅威的な存在ではなく、私たち人間の時間を増やす「拡張」の手段であり、AIの進化は過去の延長線上にその将来があると考えるべきものです。

私たちの過去と比較すると、現代の日本人が一日に触れる情報量は平安時代の日本人が一生で触れる情報量と同じです。また、江戸時代の日本人が一年間で触れる情報量と同じです。では、人間の脳は時代とともに進化したのでしょうか?実は、人間のスペック(脳のサイズ)は20万年前から変わっていないのです。

では、何が変わったのでしょうか。それは、現代において、高速移動手段が大きく変わりました。早く遠くに行くことができるようになり、色々な情報に触れることができるようになりました。ところが、COVID-19の感染拡大によって、人々の移動が制限され、自由に人が移動できない世界になりました。そこでカギを握るのが「データ」と「通信」という、移動することなく離れたものを仮想的に繋ぐテクノロジーです。外出自粛や在宅勤務を余儀なくされている現在、「リモートワーク元年」と言ってもいいと思います。

データ量で見てみると、世界に存在する全データのうち、ここ直近2年間で生まれたデータは全体の90%と言われています。つまり、2019年と2020年の2年間のデータが、今まで人類が生み出した全データのうちの9割を占めているのです。それほどに急激にデータが増えてきていることが分かります。さらには、オンライン上に存在する「マネー」は全体の93%と言われており、ほとんどのお金がコンピューターで触れるところにあるのです。

このように、ありとあらゆる情報やお金がコンピューターで触れるところに存在しているので、ITが苦手という人は、ビジネスパーソン生命の危機とも言えるのではないでしょうか。ありとあらゆるものをデジタルにシフトしていき、色々なものが変革され、変容していき、形を変えていくデジタル・トランスフォーメーション(以下、DX)は待ったなしの状態です。DXはビジネスに使われる言葉として認識しがちですが、実際にはインフラなのです。インフラであれば、必然的にデジタル化にシフトせざるを得ません。

一般的にシリコンバレーといえばカリフォルニア州のあるエリアを指す言葉として知られていますが、シリコンバレーで働く人たちに言わせると「シリコンバレーはマインドセット」なのだそうです。それはテクノロジーの力によって世の中をよくしていき、面白くし、便利にし、人々が助かる世界を作るという心をもっている人たちこそが、シリコンバレーの住人であるということなのです。私たちもマインドセットをアップデートしていかなければなりません。

COVID-19の影響により、DXが加速し、色々なものの「自動化」が進んでいきます。そのことによって人間の時間が増えると考えるべきです。アフター・コロナにおいて、また新たな脅威にどのように対応していけばいいのかと心配する声も聞こえます。しかし、起きてもいないことを心配しても仕方がありません。未来は面白いに決まっています。テクノロジーの進化によって、面白い未来を創ることができます。ぜひ、皆さんとともに面白い未来を創っていきたいと思います。

Q&A

Q:AI分野はすでにアメリカや中国の二ヶ国が抜きん出ていると思うが、今後、日本企業が世界で存在感を出すためにはどの領域でビジネスに可能性があると思うか?

A:テクノロジーは時間と空間を解決するものであり、それを元にして、私たちのビジネスがその時間と空間にどのように制約を受けているのか、経営層が確実に言語化しておくことが大事。テクノロジーを使うことによって、どうやって解決できるのかを語れる人が経営層の中にいることが非常に重要になってくると思う。テクノロジーをアメリカや中国が作っているということ自体は、さほど問題ではないと思っている。誰が作っているかが問題なのではなく、一番大事なのは、どうやってそのテクノロジーを使って、どのようにビジネスを伸ばしていくのかということを経営層の人たちが分かっていないといけない。ありとあらゆる産業がテクノロジーの恩恵を受けることができるので、経営層はテクノロジーに興味を持ち、その中にテクノロジーのことを分かる人がいることを大命題にしたほうがいい。つまり、最先端のテクノロジーをすぐに取り入れることができる会社が強くなっていく。

株式会社圓窓 代表取締役 澤 円氏

◆澤 円 氏 プロフィール
元日本マイクロソフト業務執行役員。立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、日本マイクロソフトへ。ITコンサルタントやプリセールスエンジニアとしてキャリアを積んだのち、2006年にマネジメントに職掌転換。幅広いテクノロジー領域の啓蒙活動を行うのと並行して、サイバー犯罪対応チームの日本サテライト責任者を兼任。2020年8月末に退社。
2019年10月10日より、(株)圓窓 代表取締役就任。現在は、数多くの企業の顧問やアドバイザを兼任し、テクノロジー啓蒙や人材育成に注力している。美容業界やファッション業界の第一人者たちとのコラボも、業界を超えて積極的に行っている。テレビ・ラジオ等の出演多数。Voicyパーソナリティ。琉球大学客員教授。

著書:
外資系エリートのシンプルな伝え方(中経出版)
マイクロソフト伝説マネジャーの 世界No.1プレゼン術(ダイヤモンド社)
あたりまえを疑え。自己実現できる働き方のヒント(セブン&アイ出版)
未来を作るプレゼン(プレジデント社)
個人力 〜やりたいことにわがままになるニューノーマルの働き方(プレジデント社)
YouTube:「澤円チャンネル」https://bit.ly/sawachannel
Twitter:@madoka510
連載:澤円が解説!TechキャリアNew Wave(エンジニアType)
https://type.jp/et/feature/category/career/newwave

スペシャル講演②

「シリコンバレーの強さの秘密~8年以上住んでわかったこと~」

ソースネクスト株式会社 代表取締役社長 松田 憲幸 氏

ソースネクスト株式会社 代表取締役社長 松田 憲幸 氏

今年で弊社ソースネクスト株式会社は設立から25年が経ちます。2008年には東証一部上場を果たしたものの、このままではグローバルな会社にはなれないと思い、8年ほど前にシリコンバレーに家族で移住することを決断しました。シリコンバレー(米国)の強さについて、お話させていただきます。

まず、シリコンバレーでは、どんな会社にも明確なミッションがあります。今でこそ、日本でもスタートアップ企業を中心にミッションを明らかにする企業は増えてきましたが、昨今まであまりありませんでした。一方、シリコンバレーでは、どの会社も必ずミッションから会社の説明があります。

弊社の製品である61言語双方向翻訳対応「POCKETALK(ポケトーク)」では、「言葉の壁をなくす」というミッションを掲げました。創立以来、英語の学習ソフトを販売してきましたが、4年前、24言語の語学学習ソフトを販売するロゼッタストーンジャパンを買収し、その7ヶ月後に「ポケトーク」を発売したのです。語学学習ソフトを販売しながら翻訳機を販売するという、一見矛盾するかのようにみえるこの流れも、「言葉の壁を越える」手段として、ソフトを使って学習することと、一方で、学習はしたくない、もしくは一部の言語は勉強するけれど、それ以外の言語は翻訳機を使おう、といった具合に、「言葉の壁をなくす」というミッションの前では両立します。今では「ポケトーク」の購入をする人の半数以上が語学学習のためにポケトークを買っています。このように、ミッションに沿って考えると、語学学習ソフトを販売しながら、翻訳機を販売することも矛盾しないのです。

また、グローバルに成功しているプロダクトやサービスは、グローバルなチームによって作られています。FacebookやGoogleが世界で成功している理由の1つは、グローバルな混成チームでできているということでしょう。日本のソフトウェアが世界に通じない理由の1つは、このことに起因しているのではないかと思います。

そして、シリコンバレーには若い成功者が非常に多いです。「ドアダッシュ」の創業者トニー氏は、オンデマンドフードデリバリーサービスを始め、当初13店舗しかなかったが、今では約39万店舗の加盟店を持つほど成長しました。彼は現在まだ36歳です。シリコンバレーには彼のような人がたくさんいます。彼らに共通するのは、年齢を全く意識しないカルチャーがあるということ。逆に、日本の文化とも言える上下関係ヒエラルキーは、良い面もある一方で、若い人が上にのし上がっていくことができないような構造的欠陥も内包しているように思います。

そして、米国では誰もが気軽に知り合いを紹介し合います。日本では紹介には責任が伴うために躊躇することのほうが多いですが、米国では紹介そのものに責任はなく、当事者同士の責任であるという考えです。紹介によって、互いに情報をシェアし、助け合う文化があります。また、米国では社員の転職は日常茶飯事で、仮に商取引の相手とうまが合わなくても、次の担当者に変わるまで待ち、取引成立することもよくあります。社員のみならず、社長自身もよく変わるのも特徴です。

そしてなんと言っても、ビジネスにおける規制の少なさが挙げられます。シリコンバレーの成長の最大の理由ではないかと思います。日本では、規制によって殆ど阻まれてしまい、最初からビジネスの自由度が狭くなっています。誰にでもビジネスチャンスがあり、それを生かそうという発想から、まずはやってみようという空気があります。

弊社は、「製品を通じて喜びと感動を世界の人々に広げる」というミッションと、「世界一のエキサイティングな企業になる」というビジョンを掲げています。また、世界中のテクノロジーを使い、ソースネクストというブランドのユーザーインターフェースやユーザーエクスペリエンスを通して、世界中の人々に喜びと感動を広げることをIoTの戦略に掲げています。現在、ポケトークに加え、360°webカメラ「Meeting Owl(ミーティングオウル)」や話すだけで文字になる「タブレットmimi」や自動でテキスト化するAIボイスレコーダー「AutoMemo」なども提供しており、「ネクスト」が弊社の社名にもあるように、世界にインパクトを与える製品を次々と提供し続けることが我々の使命だと思っております。

Q&A

Q:シリコンバレーの生活において、一番影響を受けた起業家は誰か。また、その理由は?

A:「ドアダッシュ」の創業者 トニー氏はとてもインパクトがありました。皆さんはウーバーイーツをご存知だと思いますが、実はトニー氏の「ドアダッシュ」のほうがウーバーイーツより先に生まれました。ただ、「ドアダッシュ」もウーバーのノウハウを取り入れました。その「ドアダッシュ」を見て、ウーバーがウーバーイーツを始めたという流れ。要するに、お互いに良いところを取り入れ、お互いに成長している。また、グーグルの創業者ラリー・ペイジ氏にも何回か会って話をしましたが、彼もとてもインパクトがありました。これほど成功している人なのにこんなに謙虚なのかと感動しました。

Q:シリコンバレーでうまくいく起業家とそうでない起業家との違いは?

A:徹底的にお客様目線であるかどうか。そして常に問題を探しているリサーチ能力。トニー氏は創業時、運転手をして、私の家まで配達に来ていました。配達のたびに、私から要望がないかを聞いていました。また、運転手の気持ちも理解しようとしていたのだと思います。彼のビジネスは、いかに良い運転手が集まるか、いかに良いレストランが加盟するか、いかにお客様が喜ぶかという3つ全てを見ることができていました。失敗する人は、いずれかの視点が足りない人が多い印象があります。例えば、お客様中心ではなく、かっこいいビジネスモデルへのこだわりや企業価値が高まるなどの理由で経営している会社はあまりうまくいってないように思います。その実例を今までたくさん見てきました。

ソースネクスト株式会社 代表取締役社長 松田 憲幸 氏

◆松田 憲幸 氏 プロフィール
1965年兵庫県生まれ。大阪府立大学工学部数理工学科を卒業し、同年日本IBMに入社。
1996年8月、ソースネクスト株式会社を設立し、2008年に東証一部上場。業界常識を打破した更新料0円のウイルス対策ソフト「ZEROウイルスセキュリティ」をはじめ、累計5000万本以上のソフトウェアを販売。2017年よりIoT事業に参入し、第1弾となるAI通訳機「ポケトーク」は、日本経済新聞社「2018年日経優秀製品・サービス賞 最優秀賞 日本経済新聞賞」を受賞し、累計出荷台数70万台を突破。
今後は、ポケトークの世界展開とともに、IoT製品のラインナップの拡充し、2020年3月からテレワーク関連製品も、新たな事業の柱としている。

開催情報

2021年1月20日(水)17:30~19:45
※メンバー限定ライブ配信(無観客での講演)

17:30 開会
17:30~17:35 代表幹事挨拶
17:35~18:30 スペシャル講演①(株式会社圓窓 代表取締役 澤 円氏)
18:30~18:40 ブレイク
18:40~19:45 スペシャル講演②(ソースネクスト株式会社 代表取締役社長 松田 憲幸氏)
19:45 閉会

株式会社矢動丸プロジェクト 銀座スタジオ
東京都中央区銀座6-2-1 Daiwa銀座ビル 8F(矢動丸プロジェクト内)
TEL:03-6215-8088

地図URL:https://yadoumaru.co.jp/access/


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