活動レポート 霞が関シリーズ第1弾 2021年3月24日

霞が関シリーズ第1弾

ソースネクスト株式会社 代表取締役社長 松田 憲幸氏

写真:経済産業省 ヘルスケア産業課長 稲邑 拓馬 氏

経済産業省では、企業が従業員の健康増進をコストではなく、投資として考えて取り組む「健康経営」を促進しています。この政策は、従業員が健康になると職場の生産性が向上して企業の業績・価値が向上することに加え、予防・健康づくりのための投資を通じてヘルスケア産業が成長することも目標にしています。コロナ禍の中で、テレワークや外出抑制による運動不足や健康悪化が懸念されている中、健康経営への関心は高まっており、国の健康経営制度への参加は東証主要100銘柄の約8割まで広がってきています。

この取組をリードする経済産業省の稲邑氏から、健康経営の現状と今後の戦略についてお話頂きました。

講演内容
スペシャル講演

「国家戦略としての健康経営-健康を日本企業のブランドに」

経済産業省 ヘルスケア産業課長 稲邑 拓馬 氏

経済産業省 ヘルスケア産業課長 稲邑 拓馬 氏

霞が関シリーズ

霞が関シリーズ

日本の人口推移によれば、1900年以降、急激に増加し、2010年をピークに急激に減少していることが分かります。下降線を辿る現在、日本の高齢化率は28.7%と世界で最も高く、さらに2050年には38.8%、2100年には41.1%にまでなると予想されています。また、65歳で定年退職した場合、現在のところ高齢者1人に対し現役世代2人が支えていますが、2040年には1.5人、2065年には1.3人が1人の高齢者を支えるような人口バランスになると言われています。

そこで、仮に75歳まで健康で現役で働ける場合、2065年時点でも2.4人が1人の高齢者を支えることができ、ある意味、今より持続可能な社会の可能性が広がります。実際に75歳まで働けるかどうかは別としても、近年、高齢者の身体機能の若返りや健康寿命の伸張はデータからも読み取ることができ、過去20年で10年間ほど若返っていることが分かります。さらには日本の平均寿命は84歳で世界1位、また健康寿命においても75歳で世界2位というデータもあります。医療面においても、日本は肥満など慢性疾患の罹患率は世界に比べて低く、これらのデータから、「健康」は日本のひとつの強みになると考えられます。

日本の国家戦略としては、2015年各省庁が関わる健康事業分野を統括する「健康・医療戦略推進本部」を立ち上げ、2015年~19年の5年間を第一期として推進してきました。主に、健康投資を行う企業が評価される仕組み「健康経営銘柄」の選定や「健康経営優良法人」の認定などを行ってきました。特に、企業が従業員の健康増進に取り組んでいるかどうかという「健康経営」は国家戦略の重要な分野として位置づけられています。昨年度においては、大企業から中小企業までおよそ1万社が健康経営優良法人の認定を受けています。「健康経営」とは、ただ単に健康管理に関する法律を遵守するだけでなく、従業員の健康管理を経営的視点から戦略的に実践することとしています。ここ近年、当該制度の関心は高まり、認定企業は年々増加しているところです。

我々は「健康経営」の取り組みにおいて、上場企業と中小企業に分けて課題を抽出しています。まず、上場企業にとってはESG投資の中に位置づけることを重要とします。ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)であり、「健康経営」はその中の「社会(S)」に位置づけられています。機関投資家にとっても「健康経営」は投資の重要な判断要素になりつつあります。現在、経産省では、健康経営度調査の回答企業上位500社「ホワイト500」に対してフィードバックシート(成績表)の公開を検討しています。また、厚労省においては、女性活躍推進法に基づき、すでに各企業の女性の活躍についてデータベース化し開示しており、学生にとっては就職先の判断材料の1つとなっています。このような情報公開は機関投資家にとっても企業側にとっても共にプラスに働くと考えています。

中小企業では、ステークホルダーとの関係性において「健康経営」の取り組みがプラスに寄与する点が、上場企業のそれとは少し視点が違うと考えています。日本の企業の9割を超える中小企業に対し、この「健康経営」の考え方が広まっていくことを期待しつつも、400万社を超える中小企業全てを我々が審査し認定することは物理的に難しいです。この取り組みを深化させていく方法の1つは、サプライチェーンへの調査において、「取引先の考慮」の設問の中で「健康経営」の取り組みを考慮して発注しているかどうかを聞くことです。自社のみならず取引先の健康経営度を考慮することは、ひいては自社の持続可能性にも影響を与えると考えられます。ただし、「取引先の考慮」が下請けなどに対して過剰なプレッシャーになるようなことは避けなければなりません。その点ではバランスが重要です。併せて、自治体による「健康経営」の取り組みも行われており、公共工事の入札審査で「健康経営」の取り組みを加点するなどインセンティブを付与しているところも増加しています。

企業の「健康経営・健康投資」に対する積極的な取り組みによって、従業員の健康増進が図られ、生産性向上に寄与し、業績の向上をもたらし、結果として企業価値が上がることは企業や従業員、ステークホルダーなど誰にとっても意義のあることです。また、これらの取り組みによって国民の健康が促進されることは国にとっても良いことなのです。

もう一つ、経産省にとっては、日本におけるヘルスケア産業の需要創出や規模拡大も重要なミッションのひとつです。公的医療保険の枠を超えた、健康予防・健康管理あるいは予後の分野では、まだまだ投資が不十分であり、「健康経営・健康投資」の増進がヘルスケア産業全体のイノベーションを促すことにも繋がります。このような日本型健康経営のフォーマットの確立によって世界を牽引できるよう、従業員を大事にする日本型健康経営の考え方を海外に発信していきたいと考えています。

Q&A

Q:認定は年に一回?

A:毎年一回。

Q:認定取得した場合、その期間は?

A:「健康経営2021」のように、取得した年が認定証に記される。よって期限は1年間。

Q:自治体ではなく、国として中小企業に対するインセンティブは?

A:国として補助金などのインセンティブは考えていない。

経済産業省 ヘルスケア産業課長 稲邑 拓馬 氏

◆稲邑 拓馬 氏 プロフィール
平成10年に東京大学法学部を卒業後、通商産業省(当時)に入省。
主にエネルギー、通商、製造業などの分野での政策立案に従事し、令和2年5月から現職に着任。
直前は、資源エネルギー庁エネルギー制度改革推進総合調整官として、電気事業法・再生可能エネルギー特別措置法の改正を担当。
過去に、外務省OECD日本政府代表部や財務省主計局への出向も経験。

 
 
開催情報

2021年3月24日(水)17:00~18:00

17:00 開会
17:00~17:05 代表幹事挨拶
17:05~18:00 スペシャル講演(経済産業省 ヘルスケア産業課長 稲邑 拓馬氏)
18:00 閉会

株式会社矢動丸プロジェクト 銀座スタジオ
東京都中央区銀座6-2-1 Daiwa銀座ビル 8F(矢動丸プロジェクト内)
TEL:03-6215-8088

地図URL:https://yadoumaru.co.jp/access/


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