賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局
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株式会社大阪堂島商品取引所 代表取締役社長 中塚 一宏 氏にご講演頂きました。世界の商品市場は成長を遂げているにもかかわらず、なぜ日本の商品市場は低調なのか。商都大阪の復権はもとより、世界第三位の経済大国である日本の取引所はどうあるべきか。国際金融都市は、どのような波及効果があるのか。最新の経済・金融動向を踏まえ、20年間の政治・行政経験から、国際金融都市のビジョンについてお話しいただきました。
講演内容
かつて経済大国と呼ばれた日本は、今もなお名目GDPにおいて世界第三位です。その日本・大阪をアジアの金融市場の中心にすべく、2021年4月、株式会社化された大阪堂島商品取引所の代表取締役社長として就任いたしました。
アジア経済の中心として金融市場のハブを担っているのは現在のところ香港と言われていますが、昨今の激化する民主化運動と政府側との衝突によって顕在化した様々な将来不安を払拭すべく、ここ大阪にそのハブ機能を持たせ、グローバル化の著しいアジア経済の中心として、香港に代わる金融経済圏を構築していきたいと考えています。
実は大阪は、歴史的に見ても金融経済の先端を行く素晴らしいポテンシャルを秘めた土地であります。享保15年(1730年)に堂島米市場が開かれ、そこで納められた年貢米を入札制によって仲買人に売却し、落札者が米切手を受け取るという売買が行われていました。つまり、米という商品を証券化したのですが、帳合取引という先物取引が行われた世界初のデリバティブ市場とも言われています。世界で影響力のある有名な取引所であるシカゴ商品取引所は1848年に開設されましたが、堂島米市場をモデルにしたと言われているのです。
また、あまり知られていませんが、株式など今や世界的に一般化され使われている「ローソク足」も、江戸時代に本間宗久が発明し、大阪・堂島米取引所で使われたと言われています。このように、日本人が世界の金融に果たした貢献は大きいのです。
しかし近年、世界における日本の商品市場の出来高推移をみると、世界は右肩上がりなのに比べ、日本は下降の一途を辿っています。その原因の一つに、私は流動性の無さが挙げられると思います。テクノロジーの進化とともにグローバル化した社会において、内向きな金融経済は硬直化し縮小に向かいます。東京証券取引所における売買取引の7割が外国人投資家という現状を踏まえても、日本の金融経済にさらなる流動性を持たせ、海外の市場を取り込み、海外の金融商品を日本に持ち込むことによって、日本経済の活性化に寄与し、将来的には香港のようなクロスボーダーハブ型取引所を大阪に持っていきたいと考えています。
金融や経済において科学技術の発達は欠かせないものですが、情報通信技術の進化が経済や社会を変革し、経済や社会がさらに科学技術の進化を求めるというサイクルに私たちは応えていかねばなりません。金融とITは表裏一体であり、そこに雇用が生まれ、経済が活性化し、社会が発展し成熟していきます。
インターネット時代においては、会社機能を置く場所は問いません。究極的には日本に居なくてもいいというふうになりかねません。しかし、どこに居てもいい時代だからこそ、なにがなんでもここ大阪堂島に取引所を置きたい。そうしなければ、地域や国が活性化していきません。
この大阪で国際金融のハブの一つとして取引を行なうには、高度な情報通信技術によるデータセンターの設置が必須です。弊社大阪堂島商品取引所は、ガバナンスの効いた経営効率の高いサステナブルな取引所を目指すとともに、アジアにおけるクロスボーダーハブ型の「グローバル」な市場を目指していきます。この国際金融都市構想を起爆剤に、ぜひとも関西のさらなる飛躍に向け、努力していきたいと思っておりますので、皆様のご意見ご指導を賜りたく存じます。
◆中塚 一宏氏 プロフィール
1965年京都市生まれ。京都大学工学部卒業後、議員秘書、政党政策スタッフを経て2000年35歳で衆議院議員初当選。衆議院財務金融委員会筆頭理事等歴任。2010年与党税制調査会副会長として「地球温暖化対策のための税」創設。2011年内閣府副大臣(金融、行政改革等)2012年金融担当大臣(男女共同参画、少子化対策併任)。この間、総合取引所の各省合意を達成。国際会計基準財団(IFRS 財団)のアジア・オセアニアオフィスを東京に誘致。NISA(少額投資非課税制度) を創設。
2014年よりSBIホールディングス株式会社常務取締役等を経て、2021年4月、株式会社化された大阪堂島商品取引所代表取締役社長に就任。