賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局
受付時間 平日9:30~18:00
スペシャル講演①は、当倶楽部発起人で順天堂大学医学部教授、東京都医師会常任理事(医療支援担当)、スポーツ庁参与の小林弘幸氏が「いよいよ正念場!コロナの現状と今後」をテーマにお話し下さいました。
スペシャル講演②は、国際博覧会担当大臣 衆議院議員 井上 信治 氏にご講演頂きました。いよいよ開催まで4年を切った大阪・関西万博。2025年4月~10月、大阪夢洲において「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに開催し、約2,800万人の来場、2兆円の経済波及効果を目指します。昨年新設された初代の専任担当大臣として、これまでの経過や現在の計画、今後の見通しなどについてお話し下さいました。
講演内容
第一回、第二回の講演に続き、今回、私がお話したいことは、ワクチンがなければ人類は終わっていた、ということです。つまり、ワクチン摂取することで先の見えないトンネルから脱する可能性を見出したとも言えます。集団免疫を目指したデンマークにおいて、第一波の時、PCR検査で陽性だった人の第二波での防御率は80~85%というデータがあります。逆に言うと15%~20%の人が再感染したということになります。また、65歳以上の高齢者に限って見ると、47~1%という防御率に下がり、このデータを踏まえると集団免疫は失敗したと考えざるを得ません。
また米国のデータでは、感染して抗体ができた人でも6週間以内に10%の人が再感染したことが分かっています。つまり、※抗体価が低ければ、再感染の可能性が高いということです。
※抗体価…体の中に侵入してきた、あるウイルス(抗原)に対して対抗する物質(抗体)の力価(量や強さ)のこと。参照→ https://t.ly/M8JO
今言えることとして、自然感染での集団免疫を目指すことは不可能であるということです。また、従来型のワクチンでは自然感染以上の免疫獲得効果は得られず、全く新しいタイプのワクチンが必要だということも分かってきました。そこで、現在mRNAワクチンという新しいタイプのワクチンが開発され、その有効性を示すデータが蓄積されています。
このmRNAワクチンは、ウイルスのタンパク質を作る基になる情報の一部を注射することで、人の身体の中で、この情報を基に、ウイルスのタンパク質の一部が作られ、それに対する抗体などができることで、ウイルスに対する免疫ができるというものです。また、このmRNAワクチンの仕組みを介して免疫系を活性化することができるのです。
現在、ファイザー製の予防率は94.6%、モデルナ製では94.1%、アストラゼネカ製で76%の有効性が報告されています。ただし、mRNAワクチンの懸念点として、免疫効果の持続性の問題や、現在のワクチンでは効かない新しい変異株の出現の可能性も否定できません。また、副反応の長期化や後遺症の問題も残されています。そして、今言われているのは、現在、日本人が摂取しているファイザー製のワクチンは外国人の体格を基にした量であり、日本人には量的に過剰摂取ではないかとも指摘されています。いずれにしても後遺症や副反応の長期化は未知の世界であり、今後も注視していかなければなりません。
ただ、現在報告されている変異株に関しては、ファイザー製mRNAワクチンの有効性として、イギリス型では93.4%、インド型で87.9%であると報告されています。南アフリカ型に関しては75%と若干低いものの、いずれも重症化を防ぐ効果としては97.4%と非常に高い効果が得られているということです。一方で血栓症による死亡例も報告されており、引き続き注意は必要です。また、注射部位の疼痛や発熱、倦怠感、頭痛、吐き気など、比較的若い女性を中心に様々な副反応の症状も報告されています。
しかしながら、イスラエルの報告では、2回目のワクチン接種から7日以上経過した場合、90%以上の感染や重症化を防ぐことができる効果があると言われています。このことからも、新型コロナパンデミックに歯止めをかける公衆衛生上のメリットが見込まれます。
国民の接種率が10%を超えた国では、共通して感染率がピークアウトしていくというデータがあり、この全く新しいタイプのワクチンの登場によって、私たち人類は永遠に続くかもしれない危機的なコロナ感染スパイラルから脱する可能性を見出したと言えるでしょう。そうしたことから、東京オリンピックを控えた日本にとって、開催する以上は国民の一致団結した協力が必要です。ぜひ、国民の皆さんとともにこの危機を乗り切っていきましょう。
◆小林 弘幸 氏 プロフィール
1960年、埼玉県生まれ
1987年、順天堂大学医学部卒業
1992年、同大学大学院医学研究科修了
ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任する。自律神経研究の第一人者としても知られており、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導に関わる。
また、順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”でもあり、みそをはじめとした腸内環境を整える食材の紹介や、腸内環境を整えるストレッチの考案など、様々な形で健康な心と体の作り方を提案している。
同大学院にて病院管理学(医療安全・感染対策・健康管理)を指導。
2020年9月に発足した菅義偉内閣において、新設された閣僚ポストである国際博覧会担当大臣に就任しました。2025年に開催される大阪・関西万博は、オリンピック・パラリンピックに続く国家的プロジェクトです。開催に向けた着実に準備を進め、万博の成功に向けて国民的機運を盛り上げていくことが私の重要な責務です。
大阪・関西万博は、2025年4月から184日間にわたり、大阪臨海部にある夢洲(ゆめしま)で開催されます。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。
世界中の人々が新型コロナウイルス感染症に苦しむ中で、改めて健康や医療への注目・関心が高まっています。「いのち」をテーマとする大阪・関西万博は、まさに時宜にかなったものではないでしょうか。世界に冠たる長寿国である日本から、最先端の医療技術をはじめとして、日本が誇れるものを世界に発信していく場にしたいと思います。大阪・関西万博は「未来社会の実験場」をコンセプトとしています。万博では、ぜひ新しいことにチャレンジして、人々が希望を持てる明るい未来社会の姿を、世界に対し分かりやすい形で示していきたいと思います。
私が国際博覧会担当大臣に就任して以来のこれまでの活動ですが、万博の成功には、まずは地元の皆様のご理解とご協力が不可欠であり、また、私自身が大阪・関西を知らなければならないということで、毎週のように大阪・関西を訪問し、地元の皆様からの声を直接伺ってまいりました。
また、万博は国が主体となって推進する国家プロジェクトですので、万博の成功には、地元の皆様だけでなく、広く国民の皆さん一人ひとりに理解と協力をいただくことが不可欠です。このため、ロゴマークの作成やイベントへの参加などの活動を通じて、全国レベルでの機運醸成を図ってまいりました。
より多くの国々に参加いただくことも重要です。万博はオリンピックとは異なり、開催国から世界各国に対して参加をお願いしなければなりません。昨年12月にBIE(博覧会国際事務局)総会にて大阪・関西万博の登録が承認され、正式な参加招請活動が可能となりました。以来、コロナ禍で様々な制約はあるものの、在京大使との面談や各国担当大臣とのオンライン会談など、精力的に招請活動を行い、これまで約40の国・機関から正式な参加表明を頂きました。最終的には150カ国25国際機関の参加を目指して、引き続き積極的な招請活動を行ってまいります。
昨年末に政府として「基本方針」を閣議決定し、大阪・関西万博の実施主体である博覧会協会が「基本計画」を策定しました。今後、「基本方針」「基本計画」に基づいて、開催に向けた準備を着実に進めてまいります。
大阪・関西万博は、持続可能な開発目標(SDGs)の目標年である2030年の5年前という節目の年に開催されます。万博をSDGs達成に向けたマイルストーンとして位置づけ、更にその先の社会ビジョン(SDGs+beyond)に向けた取組を推進する契機にしたいと思います。各国のパビリオンでは、SDGsの17の目標の1つ以上をテーマとして選んでいただくほか、開催以前からの取組として、小学生を対象とした教育プログラムや、「TEAM EXPO2025」という参加型のプログラムを実施してまいります。開催前、万博期間中、万博開催後にわたり、様々な主体が参加し、持続可能な社会の形成に向けた自主的な活動が生み出され、そして続いていくことが、万博におけるレガシーの1つになればと思います。
50年前の1970年大阪万博では、ファーストフード、動く歩道、携帯電話など、それまでになかった新しいものが誕生し、社会に広がりました。「未来社会の実験場」である大阪・関西万博では、デジタル技術なども活用してリアルとバーチャルが融合した新しい形の万博を目指すだけでなく、「空飛ぶクルマ」、「月面での食糧生産」、「多言語AI同時通訳デバイス」など、新しいものをショーケースとして体験いただき、これまでなかったものが世の中に広まる契機にしたいと思います。こうした新しいアイディアを実現するため、「関係府省庁連絡会議」を開催し、それぞれの省庁からアイディアを持ち寄り、具体化に向けた検討を進めています。
大阪・関西万博を契機とした、インフラ整備についても取り組んで行きます。万博会場へのアクセスのためのインフラ整備に加え、広域的に大阪・関西の将来の成長基盤となるようなプロジェクトを「関連事業計画」として取りまとめ、政府として推進していくこととしています。地元関西からの具体的な要望を受けて、7月中にも政府として計画を策定することを目指しています。
70年大阪万博の成功は高度成長期という時代の只中にあり、国民全員が右肩上がりの経済成長に伴い、明るい未来を描き、胸踊らせた時代でもありました。他方、現在は、成長から成熟へと社会全体が移行し、あらゆる物に溢れ、70年大阪万博の時代とは環境が異なっています。そのような意味で、現代において万博を成功させることは、それ自体が大きなチャレンジです。
しかしながら、私自身、大阪・関西に通う中で、地元の方々から、70年大阪万博の思い出を誇りに思う多く言葉に触れることができました。半世紀前に小さな子どもだった年配の方々が、今でも目を輝かせて口々に当時の思い出を語られる姿に触れ、心を突き動かされました。ぜひ今の子どもたちに素晴らしい万博を体験いただき、将来大人になって半世紀後に、2025年大阪・関西万博はすごかった、人生が変わった、と語り継いでいってもらいたい、ぜひ、そのようなイベントにしていきたいと決意を新たにしております。
まずは現在のコロナを克服し、その克服した先に見える明るい未来社会を創造していくため、皆様と共に一丸となって努めてまいります。今後ともぜひともお力添えのほど、よろしくお願い申し上げます。
◆井上 信治 氏 プロフィール
国際博覧会担当大臣、内閣府特命担当大臣。
衆議院議員(東京25区、当選6回)。
環境副大臣、内閣府副大臣、衆議院内閣委員長、自民党団体総局長、青年局長等を歴任。
1969年10月生まれ(51歳)。学習院初等科、開成中学校・高等学校、東京大学法学部、英国ケンブリッジ大学大学院修了。国土交通省・外務省勤務。2003年11月に公募・予備選を経て衆議院総選挙で初当選。
趣味はお祭り、マラソン、温泉巡り。妻と3人の子供の4人家族。