賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局
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第一部スペシャル講演は、「日本一バズるアナリスト」として人気の馬渕磨理子氏にご講演いただきました。少し先の「近未来の世界」を見通す力がビジネス把握力。世界経済動向から見る今後の日本の経済成長と成功する企業の特徴や今後のビジネス傾向についてお話下さいました。
第二部スペシャル対談は、朝日新聞社で政治部編集委員を務め、TV番組・ラジオ・政治コラムなどで活躍の曽我豪氏と、元日本テレビで政治部に所属し、羽田政権から菅政権までで14の政権を取材した政治ジャーナリスト青山和弘氏に対談頂きました。
講演内容
まず、私自身のこれまでの歩みを簡単にお話させていただきます。大学院卒業後、とある医療法人に入社しました。そこで金融を学ぶことを薦められ、資産運用などに携わります。アベノミクスの中、ある程度利益を出すことができたのですが、3年弱あまり社会との接点がなく、実社会での経験を積むことを薦められ金融メディアへ進出しました。現在もシニアアナリストとして企業分析など行っております。ただ、メディア発信の一方で、実務経験の無さから自己矛盾を感じるようになり、上場を目指すベンチャー企業に正社員として就職し現在も働いています。これらを踏まえ、アフターコロナの経済トレンドと成功する企業の共通点、馬渕メソッドをお話させていただきます。
まず、喫緊の情勢として、アノマリー通りの年末株高となるのかという予測ですが、国内情勢としては、衆院選も終わり自民党多数で終わったところで市場の反応も安定、自民党の代表選も終わり、岸田政権の今後として分配色から成長色への政策転換が期待されるところです。また、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)が焦点ですが、直近のパウエルFRB議長の発言などから、テーパリングの時期、および利上げの時期などが予想よりも早まりそうです。さらには、日本企業の決算も22年3月期の純利益が前期比45%増の見通しが出ていますので、総じて、コロナ禍において、オミクロン株の不安材料以外は、安定的と見てよいかと思います。
では、5~10年先のアフターコロナ経済トレンドについてですが、プラトーな社会における幸福度がその指標になるかと思います。つまり、若者中心に資本主義の限界・脱成長路線支持が広がる中での経済的豊かさの先にある幸福を求めるものとして、多様性を許容する社会や精神的報酬を得られる社会が求められています。逆に言うと、それらを提供できる企業が次世代の覇者となるでしょう。環境や効率化といった社会的課題を解決する手段としてグリーンエネルギーや5G・6GやDXあるいは半導体やセキュリティなどに関わる企業ほどトレンドにあると言えます。
具体的には、この中でも4大ビジネストレンドとして、「脱炭素」「DX」「5G・6G」「経済再開」が挙げられます。注目すべきは、人間性の回復を理念にした企業(スノーピーク)や、自由な裁量をオーナーに任せたり、定額ロイヤリティあるいは低%ロイヤリティなどこれまでにあまりないFCに取り組んだりする企業が時価総額を上げており、これらに共通するのはサステナブルな社会との共存を目指しているという点にあります。
脱炭素市場も2050年カーボンニュートラルを踏まえ、政府が積極的に民間支援を表明する中、世界のマーケットも3000兆円規模とも言われ、環境関連への投資にも関心が高まっています。従来型のCo2削減というネガティブ・アクションに留まらず、再生可能エネルギーやEV化、あるいは環境に優しい新素材の開発、リサイクルやリユースなどを推し進めるポジティブ・アクションの企業を注目するとよいでしょう。
DXに関しても、大企業のみならず、中小企業におけるDX化が浸透していく点を踏まえると、中でも、システムインテグレータ業、DX人材派遣業、DXコンサルティング業、DXツール開発業など、DXに強みを持つ中小企業の潜在成長は計り知れません。
経済再開(ポストコロナ)に関しては、リベンジ消費として、米国180兆円、日本20兆円の強制貯蓄があると言われていますが、日本国内における爆発的なリベンジ消費は期待できないにしても、コロナで落ち込んだ分、人間の欲求にフィットする関連企業として、百貨店、飲食店、旅行代理店、エンタメなどの業界の復調が期待されるところです。
以上を踏まえ、「成功する企業の共通点、馬渕メソッド」として、業績やビジネスモデル以外で指摘するポイントは、以下の3点になります。1つ目は、「秘書と運転手がコロコロ変わる企業は経営者に難あり」です。経営者による秘書や運転手の私物化が不満となり、離職に繋がり、定着率を下げる結果となります。また、「飼い殺し経営者には注意」です。経営者が従業員を会社のコマとして扱っていないかという点です。つまり、社員のキャリアパスを考えていないということです。3つ目として、「マネージャークラスに優秀な人材が揃っているかどうか」です。優秀なマネージャーとは、その企業の成長の円滑剤のようなものです。その企業のエンジンがうまく回りだせばスケールし始めます。
最後に、相場も人生も『山と谷』があります。『ビジネスは先に怒ったほうが負け』です。企業が成長していく過程において、様々な場面で非常に胆力が試されます。とはいえ、その対極にある『無形は無敵』という考え方も重要だと思っています。こうあるべきという価値観や固定概念に囚われず、自由な発想を持つことで自分自身を成長させ、自分を守ることにも繋がっていくのだと考えます。このことを年間のべ200社の企業経営者に取材してきた私の格言とし、締めの言葉とさせていただきたく存じます。ご清聴ありがとうございました。
◆馬渕 磨理子氏 プロフィール
京都大学公共政策大学院 修士課程を修了。トレーダーとして法人のファンド運用を担う。その後、フィスコのシニアアナリスト。コメンテーター、連載を通してメディア活動を行う。フジテレビ、関西テレビ、BSテレビ朝日、ABEMATV、日経CNBC、プレジデント、ダイヤモンド、日経クロストレンド、Forbes JAPAN、SPA!、ダイヤモンドZAI、マネーボイス、ZUU、などでメディア活動。
▪フジテレビLiveNEWSαレギュラー出演中
▪Yahoo!ニュース公式コメンテーター
▪ラジオ日経レギュラー番組「馬渕磨理子の教えてベンチャー社長」
著書
▪書籍『5万円からでも始められる! 黒字転換2倍株で勝つ投資術』(ダイヤモンド社)
▪『株・投資ギガトレンド10』(7万部)(プレジデント社)
青山 和弘 氏(以下、青山) 私は小川淳也氏に注目していました。とても人柄も良く、昨年は映画にもなったので、党員党友票を集め代表になるのではないかと予想していましたが、思った以上に他候補の組織票が固く、小川氏は代表になることができませんでした。ふわっとした人気よりも手堅い組織票が強かったというような結果です。その意味で、やはり立憲民主党は地方組織の基盤となる労組系の票が投票に影響したのではないかと分析しています。また、泉健太新代表による立憲民主党の今後の舵取りは苦慮すると思われます。共産党との距離感と連合との関係性の中で、中道路線を取るのは非常に難しいと見ています。
曽我 豪 氏(以下、曽我) ふわっとした人気に関して言えば、自民党のほうにも同じようなことが言えます。「国民的人気」がある候補者が勝てると予想したメディアは予想を外しました。一方、自民党の思惑としては、自分たちに好都合な立憲民主党の代表は誰になってほしかったかと言うと、小川淳也氏だったようです。泉健太氏に関しては、小沢氏らグループの支援がありましたが、今回の小沢氏の手腕については、どのように評価してよいか、人によって分かれるところではないかと思います。また、立憲民主党の代表選挙の決選投票で泉氏が逢坂氏にダブルスコア近くつけたところを見ると、組織票がどこまで影響を及ぼしたのかという点はいまだに不透明であり、今後、取材していきたいと考えています。
曽我 今、世界を見ても、日本国内を見ても、社会的にも政治的にも「世代交代」の時期を迎えていると感じています。その意味で、自民党の総裁選においても、過去を振り返ると、小泉純一郎氏のような国民的人気を背に、一匹狼のように総裁選を勝ち抜いていくようなことでは、今は勝てないのだと思います。自民党の場合、色々な業界の党員票を持っているのは参議院議員で、岸田文雄氏の分配政策は、その業界団体に響いたと思われます。かつてのような劇場型政治は失われ、しっかりした地盤固めのできた候補が勝った結果と言えるのではないでしょうか。
青山 今のお話でいくと、小泉氏は既得権を抵抗勢力と名指しし、それらと戦う一匹狼のように世間では認知されていますが、実は清和会の全面的な支持を得ていましたし、また参議院のドンと言われていた青木幹雄氏の支持を得ていたこともあり、自身の地盤はしっかり固めていたということもあります。新総裁となった岸田文雄氏の印象は、とにかく人の話をよく聞く人だということです。ただ、その分、政策決定の判断がぶれるのではないかという懸念もあります。最近もコロナ対策において、国交省の水際対策問題がありました。もちろん、岸田総理自身に問題があったわけではありませんが、国会議員の関知しないところで、官僚による安倍政権時代から続く「忖度」が働いた結果だと言えるでしょう。ただ、3日で撤回した岸田総理の判断は良かったと思いますし、来年の参議院選挙に向けて、次なる手はどんどんと打っていくでしょう。来年の参院選前には春闘もありますし、今は野党より自民党側が賃上げを求めるようになっていますから、自民党結党以来の党是でもある憲法改正の実現に向けて着実に進んでいくと思われます。
曽我 憲法改正は、自民党にとっては、実は公明党との連立だけで行うには公明党が矢面に立つ形になり、なかなか進まないこともあり、また世論がついてこないことを分かっているので、改憲を主張する日本維新の会の存在は非常にありがたいわけですが、維新と公明党が対立する中においては、自民党にとって国民民主党の存在感が増してきます。国民民主党と組むためにも、立憲民主党の代表が左に寄ることで、自動的に国民民主党が自民党に寄ってくると読んでいたのですが、今回、泉氏になったことで、来年の参院選に対する恐怖感が拭えないのではないかと思います。ただ、岸田総理は、安倍氏と違って、改憲に固執しているわけではないので、目の前に改憲が行える状態にあることが望ましいと考えているでしょうし、憲法改正は行うのではないかと思います。連立を前提に進むのではなく、国会における自民・公明・維新・国民の4党による国会連合的なことで進むのではないでしょうか。
青山 今回の衆議院選挙において、立憲民主党が共産党と付かず離れずの分かりにくい状態のまま戦い、世論の批判を浴びた結果として両党とも議席数を減らすことになったわけですが、逆に維新の躍進によって、憲法改正が行いやすい土壌はできてきたのではないかと思います。特に、タカ派と言われる安倍氏が憲法改正に意欲的な場合、反対の世論も同時に強くなる傾向にありますが、リベラル色のある岸田総理が行うと、改憲に対する危険なイメージを抑制できると本人自身が分かっているところが強みでしょう。まして、憲法改正で名を残すというのは政治家冥利に尽きるので、かつては憲法改正にそれほど乗り気でなかった岸田氏も、ここに至っては憲法改正に対する意欲を感じます。ただ、進むのは来年の参議院選挙後になるのではないかと思います。
Q:国防について最も考えている政治家は?女性の総理大臣の可能性について
A:(青山氏)国防について考えていない政治家はいないと思うが、日本にとって東アジア周辺国の脅威に対して、リベラル的な対応が良いのか、強硬路線が良いのかは意見が分かれる。敵基地攻撃論は相手に知られないことが肝要で、それをアピールすることの意味は考える必要があるのではないか。また、女性総理の可能性については、適性とやる気の問題はあるが、現在のところ、特段推薦したい女性議員は見当たらない。(曽我氏)制度的に女性を登用するように変えていく中で育てていくという目線も必要。ドイツの例を踏まえ、男女共同党首制を導入するのはどうか。また、地方自治体のトップを経験し行政経験を経た女性がリーダーになっていくというプロセスも有効。
Q:最近の政治家は内向きではないか。今後の野党のあり方を考える上で、今回の立憲と共産党の関係をどう評価しているのか。
A:(曽我氏)実際に政治家と話をすると、実は外交問題が半分以上。問題はメディアの取り上げ方。ただ、外交問題に言及しても票が取れないし、仮に言ったとしてもメディアが取り上げてくれないことも問題。地上波とBSでのテーマの扱い方にも差がある。また、これまでも野党内での共産党との協力関係はあったにも関わらず、今回これだけ叩かれたのかといえば、枝野氏がとても下手だったということに尽きると思う。シャドーキャビネットを作らなかったことで、政権交代に期待が持てなかったことも敗因の一つではないか。(青山氏)外交問題に関心が低い国民性も関係していると思うが、我々メディア側も国民の関心を喚起するような報道をしなければいけないと思う。欧州を見ても、日本共産党だけが変わっていないと言っても過言ではない。かつての総括や反省が不十分であり、自らが変わる意思を持たなければ、閣外だろうが、一緒に政権運営をしていくことは難しいだろう。
Q:北京五輪を前にして、ウィグル、チベットなどの人権問題や中台の問題、米国との関係、オミクロン株などのコロナ問題など、難しい問題が山積の中、日本はどのように立ち回るべきか?
A:(青山氏)人権問題に与党も野党もないので、外交ボイコットに留まらず、選手派遣ボイコットを主張すべきリベラル野党からその声が出てこないところが情けない。政治的ボイコット検討すべきで岸田政権の決断は大きな分水嶺になる。(曽我氏)イギリスやフランスなどと政治的ボイコットを議論する時期は来てると思う。ただ、米国を見ても分かるように、国内世論の動向が左右する。バイデン政権が外交で強硬路線を取れないのは、国内経済政策がうまくいっていない点と相関すると思う。翻って、日本国内でタカ派の強硬路線を取ることがよいのか、右の世論に押されて政治的ボイコットすることが良いのかというと、決してそうではないと思う。両論併記のように、日本の課題をすべてテーブルに乗せ、対米、対中関係の議論をしっかりしていき、そのことをメディアがきちんと伝え、国民自身が考えていくことで醸成されていくべき問題ではないかと思う。
◆曽我 豪氏 プロフィール
1962年生まれ。三重県出身。
1985年、東大法卒、朝日新聞入社。熊本支局、西部本社社会部を経て89年政治部。
総理番、平河クラブ・梶山幹事長番、野党クラブ・民社党担当、文部、建設・国土、労働省など担当。
1994年、週刊朝日(オウム事件、阪神大震災など)
2000年、月刊誌「論座」副編集長
2005年、政治部デスク
2007年、編集局編集委員(政治担当)
2011年、政治部長
2014年、編集委員(政治担当)
2015年から2019年 東大客員教授
◆青山 和弘氏 プロフィール
1968年、千葉県生まれ。東京大学文学部卒。
92年、日本テレビ放送網に入社し、94年から政治部。
野党キャップ、自民党キャップを歴任した後、ワシントン支局長や国会官邸キャップ・解説委員を務める。与野党を問わず幅広い人脈を持つ。21年9月からフリーの政治ジャーナリストで活動中。