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賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局

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活動報告

活動レポート 大阪例会
2022年05月16日
第57回例会 大阪

写真:スペシャル講演①/落語家 桂 二葉 氏

講演内容

スペシャル講演①

上方落語の新しい世界
落語家 桂 二葉 氏

約300年続く古典芸能である落語の世界に変革をもたらすべく奮闘を続ける桂 二葉さん。昨年は女性で初めてNHK新人落語大賞で優勝し、ラジオのレギュラー出演や毎日新聞のコラム連載などで活躍中です。ふるき良き大阪言葉を残しつつ桂二葉さんらしい新しい世界観の落語を披露いただきました。

 

落語家 桂 二葉 氏

◆桂 二葉 氏  プロフィール
出身地:大阪市
2011年3月9日 桂米二に入門
2011年9月6日 梅田太融寺にて「道具屋」で初舞台
第7回上方落語若手噺家グランプリ 準優勝
令和3年度NHK新人落語大賞 優勝

スペシャル講演②

混迷するロシア・ウクライナ情勢、アメリカ、EU、中国、そして日本は!
国際ジャーナリスト 明治大学名誉教授  蟹瀬 誠一 氏

まず最初に申し上げたいのは、戦争に正義も悪もなく、勝者か敗者しかないということ。勧善懲悪に慣れ親しむ日本人は特に、そのような見方には気をつけるべき。そのことを踏まえ、今回のウクライナ・ロシア間の戦争を見ていく必要があり、軍事と経済の両側面が連関している。

現在、私たちは、これまでの国際政治が変わる大きな岐路に立っている。それは、グローバリズムの終焉であり、専制国家vs民主主義国家という対立の世紀の訪れと言っても過言ではない。実は、今行われているロシアに対する経済制裁の効果は限定的で、制裁を課した側にブーメランとして跳ね返ってくる。長期化すればするほど世界同時スタグフレーションから、場合によっては世界恐慌のリスクまで囁かれている。世界経済におけるロシアの天然資源の輸出の影響は大きく、各国エネルギー価格の高騰を招き、人々の生活に多大な負担と不安定化を招いている。

また、米国の敵対国(ロシアや中国など)は世界的に孤立しているわけではなく、制裁による経済不安定から、多くの国でドル基軸の離脱も懸念され、中露における新たな決済網がドルの代替として徐々に浸透していく可能性すらある。先日、米国FRB議長はようやく、インフレ対策が後手に回ったことを認めたが、日本も当然、対岸の火事ではない。戦争長期化、物価高騰による経済の不安定化は全ての国民に負担となる。

実は、この戦争の勝者はロシアでもウクライナでもなく、アメリカと中国ではないかと見ている。米国の軍産複合体にとって戦争の長期化は非常に大きな利益をもたらしてくれる。また、バイデン自身がウクライナと繋がりがあり、息子のハンターはウクライナのガス企業ブリスマの幹部として莫大な報酬を得ていたこともあり、先の選挙でトランプ陣営の攻撃の対象にもなった。経済制裁を課せば課すほど、アメリカのエネルギー産業が儲かることも事実。また、このままロシアの弱体化が進めば、アメリカは対中国に集中できる。よって、バイデン政権はウクライナとロシアの戦争の長期化を望んでいる。

そもそも、親ロシア政権が2014年にマイダン・デモの過激化によって打倒されたのだが、その後ろ盾をしたのはアメリカである。実はオバマがそのことを認めている。このような流れの中で、2019年にはゼレンスキー大統領が登場した。現在、多くのマスコミで英雄的に扱われているが、私はその見方に否定的だ。まず、彼は政治経験が全くなく、元々、役者コメディアンであった。大人気テレビ番組「国民の下僕」において、腐敗政治と戦う大統領の役を演じ、国民の間にそのイメージを刷り込んでいった。その彼の背後にはコロモイスキーというオリガルヒがおり、彼はアメリカで詐欺やマネーロンダリングなどの罪に問われたこともあったが、今ではアメリカとくっついている。彼は悪名高い極右のアゾフ大隊の設立にも関わっている。プーチンがウクライナのナチスにこだわるのはここにある。このように、ゼレンスキーに関しても、イメージだけが先行している。ゼレンスキー=善、プーチン=悪という単純な二項対立の思考には警鐘を鳴らしたい。彼は就任後、国民の期待を裏切る形で、あっという間に支持率が19%まで激減し、戦争直前まで国民に不人気な大統領だった。

一方で、ロシアによるウクライナ侵攻は許されるべきではなく、この先プーチンが使用するのではないかと懸念される戦術核に関しても決して見過ごしてはならない。核に核で対抗すれば、戦線拡大していき、いずれ第三次世界大戦も現実のものとなってしまう。マスコミでは、独裁者プーチン体制の弱体化、あるいはプーチン政権の崩壊がまことしやかに囁かれているが、私はそうは見ていない。プーチン支持率は8割もあり、周囲のブレーンも自分の懐が潤う現在の体制をひっくり返してまで得るものはなく、プーチン体制はしばらく盤石と言える。そうであれば、日本としても、ロシアと賢く付き合っていく長期戦略が不可欠だ。

ロシアへの経済制裁は、その反動として中国への依存度が高まることになる。両者の結びつきをより強固なものにし、習近平にとっても好都合だ。中国は孫子の兵法と言われるように、戦わずして勝つ戦略がベースにある。中国は中国で問題を抱えている。台湾侵攻も囁かれているが、それも考えにくい。軍事演習は国内の若者中心のナショナリズムに対するガス抜きだろう。中国経済がアメリカ経済を追い抜くのは2030年、軍事力でアメリカを追い抜くのは2035年といった習近平の世界制覇ロードマップが描かれている。台湾が独立宣言をしない限りは軍事侵攻は考えられず、台湾財界を徐々に取り込んでいき、平和統一を狙っている。

また、中国とウクライナの関係は良好で、中国の一帯一路構想にはEU加盟国も含まれているため、ウクライナ・ロシア間の戦争仲介にイニシアチブを取ることを狙っていると思われる。ただし、習近平とヤヌコビッチとの間で結ばれた、ウクライナが核の脅威に晒された場合、中国がウクライナを守るという合意がロシアとの間において、一つの障害となる可能性はある。

いずれにしても、歴史を振り返っても、人々が戦争で得るものは何もない。リベラル言論界の巨匠ノーム・チョムスキーは「核戦争を避けるためにはウクライナがロシアに譲歩すべきだ」との見解を示している。また、ヘンリー・キッシンジャーも「勢力均衡に基づき、相手のメンツも立場もわきまえ、平和的に現実外交を構築すべき」と述べている。私たちは今こそ、このような知識人の言葉に耳を傾けるべきである。

最後に、私から。

「戦争は人の心の中で生まれるものだから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない(ユネスコ憲章より)」と申し上げたい。

Q&A

Q:国と国との間における経済制裁のさなか、ビジネス界においてはロシアとの繋がりを維持していた2014年の出来事を踏まえ、今回も同様の状況にあるとするならば、経済界として、ロシアとどのように付き合っていくべきか?

A:蟹瀬:維持すべきだと思う。ただ、そのレベルの違いがある。今回は2014年より厳しい制裁が行われているので、慎重に見ていく必要がある。欧州の戦争の歴史を踏まえると、長期戦の中でも経済をしっかり動かしてきた。そのようなしたたかさが必要。

Q:ウクライナの歴史においては、常に西と東に分かれた内紛が続いてきた。冷たい見方として、ウクライナは世界平和のために必要とされる緩衝地帯として必要だと一部で言われているようだが、どう思うか?

A:蟹瀬:ウクライナの地が西側と東側の代理戦争として使われるのはとても不幸なことだ。現実の政治においては緩衝地帯が必要だと言われることもあるが、紛争を避けるための知恵を絞り、キッシンジャーが言うように、勢力均衡を保ち、平和維持できるグランドデザインを描くべき。ただ、今のバイデン政権のやり方では難しい。

Q:ウクライナとロシアの戦争に関するマスコミの報道には注意が必要とのことで、今年、日本は選挙を控えているが、メディア報道とどのように向き合っていけばいいか、アドバイスを。

A:蟹瀬:戦争報道が加熱すると、必ず軍備増強の話になる。こういう時こそ、一時的な空気感やその場の機運に流されず、冷静な議論や判断が必要。時流に流されず、政治家は国民と冷静に議論できる状況を踏まえるべき。我々の選択によって未来が決まる。ある名言「その未来とは今のことだ」。ともすれば、日本人は受け身で、自分とは無関係に世の中が動いていると思いがちだが、そうではない。今、私たちが決断したことが明日の日本を作り、ひいては一年後の日本を作っていく。このような理念は経営においても通じる不変の真理ではないかと思う。

国際ジャーナリスト・外交政策センター(FPC)理事 明治大学 国際日本学部 名誉教授 蟹瀬 誠一氏

◆蟹瀬 誠一 氏 プロフィール
上智大学文学部卒業後、米AP通信社、フランスAFP通信社記者、米TIME誌特派員を経て、91年にTBS『報道特集』キャスターとして日本のTV報道界に転身。

米国、欧州、南米、中東、アジア、中国、ロシア情勢など海外ニュース取材に活躍。西側TVジャーナリストとして初めてロシア戦略原潜タイフーン内部取材、中国マフィアなどをスクープ。ウクライナ戦争についても連日寄稿している。

現在は『賢者の選択Fusion』キャスター、『ニュース・オプエド』編集主幹。外交政策センター理事、価値創造フォーラム理事、明治大学名誉教授、東京クラシッククラブ専務理事。趣味は読書、美術鑑賞、ゴルフ

開催日時
5月16日(月) 15:00~17:30
タイムテーブル
15:00~15:05 開会の挨拶
15:05~15:45 スペシャル講演①(落語家 桂 二葉 氏) 
15:45~16:00 コーヒーブレイク
16:00~17:30 スペシャル講演②(国際ジャーナリスト 蟹瀬 誠一 氏)
17:30     閉会
場所
リッツカールトン大阪 2F ザ・ガーデンルーム
〒530-0001 大阪市 北区梅田2丁目5番25号Google Map
TEL:06-6343-7000(代表)
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