賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局
受付時間 平日9:30~18:00
第一部スペシャル講演では、
工学博士であり環境調和型ブランドを立ち上げるなどでご活躍中の春日秀之氏にお越しいただき、春日家のルーツである[麻問屋春日商店]が紡ぐ変革の精神と歴史を辿りながら、新たなテーブルウェアやサーキュラーエコノミーの実証試験のご紹介をもとに、これからの10年に向けた挑戦的な事業拡張戦略についてお話いただきました。
第二部スペシャル講演では、
元東京都知事であり作家の猪瀬直樹 参議院議員にお越しいただき、この3年間コロナ予算で使った金額102兆円、この102兆円という金額の検証は誰が行うのか。作家と国会議員の両視点からこの国を変えるべく国家予算を検証したお話や、その他日本がぶつかっている壁とその突破の方法について語っていただきました。
講演内容
まず、hide kasugaグループが目指すサーキュラーエコノミーとは、自然との共存を前提として「感性」を生活様式に取り込んだ「令和モダニズム」に根ざした循環型経済を指します。世界(特に欧州)では地球温暖化に伴い、大量生産大量消費、そして大量廃棄の時代の終焉と共に、自然と共存共栄していける持続可能な社会の構築に向け、いち早く先進的に取り組んできた感があります。日本も官民連携で脱炭素化やSDGsなど取り組んでいますが、廃棄せず、循環させるための経済や社会の構築に日本全体が積極的に取り組んできませんでした。しかし、日本の高度な技術力のポテンシャルを以てすれば、日本独自のサーキュラーエコノミーの構築は可能であり、同じ地球に生きる人間として自然環境を守りながら循環型経済システムを実践していかなければなりません。
弊社の事業のルーツについて、1896年に初代・春日栄太郎が創業した麻問屋春日商店に始まります。二代目は、戦中当時、政府の要請により需要が見込まれた絹麻パッキンを開発し、工業資材メーカー「日本機材」(現・NiKKi Fron)を創業します。三代目の父も半導体や自動車などに使われるFRP製品やフッ素製品を中心とした同事業を継承し、発展させました。私は四代目として2009年に代表に就任してグローバル展開を含めた再構築を行いました。そして現在は私の弟が社長に就任しています。私はその家業をスピンアウトし現在は、家業で使われる素材をベースに、2012年よりブランド展開を始めました。工業素材でもライフスタイルに使うことができる、というコンセプトのもと、色々な大学との産学連携による研究開発などを行うhide kasuga LABO(研究機関)、自社ブランド「BLANC BIJOU PARIS」や「hide k 1896」などの運営をしながら、素材会社、完成品メーカーのブランディングや事業開発などを行うhide kasuga 1896を運営しています。
サーキュラーエコノミーの構築には受け入れる側の社会の理解も求められます。そのためのプラットフォームづくりも欠かせません。それには教育段階から理解を図る必要があります。実際に私は、産学官連携のオールジャパン体制で、地元である長野県長野市や、プラスチックの街、千葉県市原市の中学校で実証実験を行い、学生に体感してもらうことで循環型社会への理解を深めてもらう試みも行っています。近代化と共に自然環境を破壊してきた私たちは、グローバリゼーションとIT革命による不確実性の中、未来ある事業を成功に導くためには、持続可能な社会の実現に向けて競争力をつけていく他ありません。私たちの社会に必要な資源も有限であり、枯渇してからでは手遅れです。あまり時間的猶予はありませんが、日本の復権にはまだ間に合います。ぜひ、日本発のサーキュラーエコノミーを世界に発信していけるよう、皆様には表参道にあります弊社のギャラリーへ足をお運びいただき体感していただければと思います。
Q:サーキュラーエコノミーの実現に向け、教育分野における指導者や教育者の育成状況はどうなっているか?
A:核心を突いたご質問だと思う。まさに現在、私は小中高の先生方向けのセミナーで講演をしている。そこで気づくのは、大学は産学連携や人材交流など産業界との繋がりがあるが、小中高の先生たちは産業界との接点がほとんどない。子どもたちの親は産業界にお勤めの方が多いと思うので、ぜひ交流を深めていただきたい。また、子どもたちの将来を踏まえた中長期的な視点からも先生たちの教育は重要だと考えている。
Q:表参道にある旗艦店「hide k 1896」のHPを拝見し、クリエイティビティを高く感じた。ビジネスにおけるアートやクリエイティビティと技術との関係性や教育との関係性をどう捉えているか?
A:日本はアートとサイエンスに境界線を作りすぎている気がする。一昔前、日本は盛んにMBA取得を奨励していたが、今はあまり聞かない。なぜなら、既存のビジネスモデルがベースにあるから。今はそうではなく、10年後の事業、10年後の産業がどうあるべきか、何をすべきかというクリエイティビティが要求される。それはまさにアートの発想。日本も国策としてやるべきではないか。
◆春日 秀之 氏 プロフィール
hide kasuga グループ代表
工学博士。1973年、長野県長野市生まれ。1999年、東京工業大学大学院修士課程修了後、複合材メーカーに入社。2000年、社命によりエクス=マルセイユ大学(仏)に留学(~2001年)。その後パリでの研究時代を経て、2006年、家業のNiKKi Fronに入社(2009年代表取締役に就任)。2012年、hide kasuga 1896を創業。
hide kasuga グループ
hide kasuga 1896(シンクタンク):グループ全体のブランドマネジメント及びクリエイティブファームの運営。
hide kasuga LABO(研究機関):信州⼤学国際科学イノベーションセンター内にて研究開発を実施
hide k 1896(ブランド):旗艦店(表参道)を拠点に環境調和型プロダクトを販売
Green Composite Hills by hide k 1896(CEコンソーシアム):産学官連携のCEコンソーシアムを運営
BLANC BIJOU PARIS(ブランド):PTFEのアート・プロダクトブランド運営及びリサイクル技術特許の運用
この国のゆくえを考えるうえで最初に思い浮かぶのは「同調圧力」という言葉です。私が小泉構造改革において道路公団民営化に取り組んだ時、非常に多くの反対に遭いましたが、ファミリー企業を廃し、競争入札によってサービスが向上し、今では名所となったサービスエリア目的で立ち寄る人たちで賑わうほどです。しかし、国会内では相変わらず、同調圧力によってこれまでの既定路線のまま、ただやり過ごすだけの政党が与野党に跨がり存在します。
私が籍を置く日本維新の会の英語名は実は「Japan Innovation Party」です。今こそビジネスだけでなく政治にイノベーションを起こすことが必要なのだと確信しています。しかし、日本中に蔓延る同調圧力は今に始まったことではありません。自著「昭和16年夏の敗戦」をベースに歴史を遡ると見えてきます。昭和16年当時、戦争において石油をどう入手するかは必須条件です。近衛内閣から東条内閣へ移行する際総力戦研究所で、30歳代の模擬内閣でシュミレーションをします。が、石油枯渇のため敗戦するという結論が導き出され、近衛内閣は解散、東条内閣へ引き継がれます。東条内閣で再計算シュミレーションし、3年後に70トンの石油が残るという結論が導き出され、パールハーバー奇襲へと繋がっていきます。その数字を導き出したのは鈴木貞一企画院総裁。私は直接、93歳で生存していた鈴木氏に取材しました。鈴木氏は私に「皆がやる気になっている時に、やれない数字は出せない」と言いました。つまり、陸軍や海軍など同席した幹部たちの同調圧力に屈し、「49%という数字よりも51%という数字を出す」選択をしたのです。このことにより、東条内閣は大きな意思決定をすることになったわけです。後は歴史が示す通りです。
では翻って、今の日本はどうだろうか?日本がこの3年間にかけたコロナ対策費は100兆円です。私が国会で問いただしても、いまだしっかりとした検証は行われておりません。また、ウクライナ支援に関しても、日本維新の会は身を切る改革で議員報酬2割カットで捻出した1億5千万円でピックアップトラックを20台購入し、ウクライナに贈呈しましたが、他方で、岸田総理はウクライナでしゃもじ贈呈です。どちらがニーズにフィットしているかは明らかです。
この国のゆくえを考えるにあたり、もう一つ思い浮かぶのは「価値紊乱者たれ」ということです。最近刊行した「太陽の男 石原慎太郎伝」の帯に「三島由紀夫はなぜ「価値紊乱者」石原慎太郎に追い詰められたのか?」とあります。その「価値紊乱(びんらん)」とは価値観(既成観念)を壊すだけでなく、新しい価値の創造を行うことを意味します。ただ唯々諾々と同じことを同調圧力の中でやっていく役人たちに負けず改革を行うには、この「価値紊乱」は重要な鍵となるでしょう。今の日本の行き詰まった国会状況を鑑みると、同調圧力に屈せず、価値紊乱者として構造改革を行っていく必要があると痛切に感じています。
Q:若い世代の経営者層に対して、解決策を考える上で必要なことは何か?
A:思いついた時にすぐやること。同調圧力に負けないこと。少し風変わりぐらいでちょうど良い。作家として本を何冊も書いてきたが、42キロのマラソンの完走と同じで、本を書くことは思考が伸び深まっていくような感覚。だから受け手として本を読んでほしい。賢い官僚に負ける政治家は多い。なので、説得力を持つためにも本を読むことが大切。
Q:イノベーションを政界に起こすきっかけは何になるか?
A:小泉改革の時、自民党内の抵抗勢力と戦った構図と、今のマイナカードに関する政治状況は似ていて、自民党内の反対と野党の反対の中で河野氏は進めようとしている。日本維新の会が河野氏の改革を支えるような構図になっている。デジタル化が遅れたままでは日本はジリ貧。今こそ構造改革の政党が中心になるべき。
◆猪瀬 直樹 氏 プロフィール
1946年、長野県生まれ。作家。86年『ミカドの肖像』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。
96年『日本国の研究』で文藝春秋読者賞受賞。東京大学客員教授、東京工業大学特任教授を歴任。
2002年、小泉首相より 道路公団民営化委員に任命される。
07年、東京都副知事に任命される。
12年、東京都知事に就任。
13年、辞任。
15年、大阪府・市特別顧問就任。
主な著書に『天皇の影法師』『昭和16年夏の敗戦』『黒船の世紀』『ペルソナ 三島由紀夫伝』『ピカレスク 太宰治伝』、近太陽の男 石原慎太郎伝』。
2022年から参議院議員(日本維新の会・参議院幹事長就任)。