賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局
受付時間 平日9:30~18:00
今回は第一部でスペシャル講演、第二部では立食形式の懇親会を開催いたしました。
講演では経済産業大臣や自民党幹事長などの要職を歴任された衆議院議員・甘利 明氏にお越しいただき、自動車・スタートアップ・半導体と日本の国家戦略の核ともなる注目されるテーマについて、日本の方向性、戦略などをわかりやすいご説明でたっぷりとお話いただきました。
第二部の懇親会では、甘利先生にも残ってご参加いただき、名刺交換やご挨拶に対応いただきました。皆様食事やドリンクを片手に、ビジネスなどのお話に花を咲かせてそれぞれ交流をお楽しみになりました。
講演内容
現在、日本は『デフレではない』が『脱却できていない』状態にあり、岸田内閣においても30年来のデフレからの脱却を目指すべく、アベノミクスの3つの矢(金融緩和・財政出動・成長戦略)に続く施策を進めています。物価2%上昇に連動し賃金も3%上昇するというサイクルを持続させていくことが健全な資本主義の本来あるべき姿であり、喫緊の課題でもあります。その健全な資本主義がGDPを拡大させていくわけですが、そのサイクルが回らない要因の一つに日本のリーディングカンパニーが守りから攻めの経営に踏み込めず、世界の趨勢に追いついていないことが挙げられます。アベノミクスによって300兆を超える現預金の内部留保を保有している産業界の頂点にいる主要企業は、『3つの過剰(債務・設備・雇用)』をカットしバブル崩壊を乗り切った成功体験から守りの経営を脱していません。我々は『アベノミクスの5つ(海外投資・国内投資・賃上げ・下請代金の改善・株主配当)のお願い』を提言しましたが、実質、海外投資と株主配当しか行われていない状況です。国内設備投資や人的投資にその原資が回っていない現状を打開するために、岸田内閣では、労基法違反すれすれのブラック元請け企業の公表なども含め、中小企業が価格転嫁しやすい環境づくりを推進していくための思い切った政策を打ち立てました。また、課題をコストとみなすのではなく投資として、製品化に伴う一連のビジネスモデルを投資によってGX化していくことでブルーオーシャンにしていく様々な施策もフォローアップしています。
では、日本は未来に向けてどのような産業政策を執るべきなのか。世界はデータドリブン型産業社会・国民社会へと進んでいます。要するに情報化社会の基をなす半導体やAIを制する者が世界を制するのです。21世紀最大のチョークポイントは半導体。中でも、パワー・ロジック・メモリー・アナログ等、半導体の供給者になるのか、需要者のままでいるのか、この百年に一度の変革期において何をすべきか自ずと答えは見えます。現在、熊本では世界最大手のTSMCとソニーやデンソーが共同参画する生産工場を建設し、北海道ではIBMとラピダスが先端半導体技術のGAA(Gate All Around)によるCPUやGPUを共同開発生産し、広島ではマイクロンが最先端の次世代メモリの研究開発および生産工場を建設しています。一方、情報化により急増していくデータセンターに必要な電力が圧倒的に不足していくことがすでに予想されています。DX社会の最終形は光半導体です。既存の半導体微細化の流れはいずれ限界に達し、新技術の光半導体の省電力化によるブレイクスルーが期待され、現在、NTTが研究開発を行っています。
AIの分野でも日本は世界に対抗できるのか。中でも、国民誰もが使える利便性の高い生成AIとどう向き合うのかという課題があります。人間の叡智を凌駕するシンギュラリティは本当に来るのか、その時果たしてAIは自我を持つのか、自然界の生態系を壊すことなく人間のパートナーとなり得るのか、など様々な疑問に対し、専門家は、我が子を育てるように正しい大人に育てる必要があると言います。遅れを取った日本はと云えば、オールラウンド型ではなく、日本独自の専門領域に特化した生成AIを迅速かつ丁寧に育てていくことが肝要です。そのためにも微細化、省電力化の技術開発は避けて通れません。挑戦なくして成功なし。日の丸半導体復活への足掛かりとして我々は様々な政策を行っています。これからも令和の日本列島改造論を半導体を通じて起こす気概で取り組んでまいります。
Q:NTTに対する甘利先生の期待はどのようなものか?
A:NTTは、IOWNという光技術開発の芽を持っていて、インテルも大変興味を示している。ところが、総務省がNTTを監視下に置き、箸の上げ下ろしまで許可が必要なのは問題だ。もっと自由に研究開発をさせるべき。優秀な人材を世界中から集めるためにも改革が必要。いつかはGAFAMに対抗できるようにしたいという思いでNTT改革をやっている。
Q:日本の既存の半導体企業とNTTなどの新しい光半導体技術開発を行う企業と、それぞれ支援が行われているが、半導体政策の全体像についてもう少し教えていただきたい。
A:これまで日本はレガシー(パワー半導体等)半導体の領域が得意だったが、この先、一番付加価値が取れるのはロジック半導体だ。しかしCPUとGPUで構成されるAI半導体の技術開発には消費電力の問題がある。省電力化が期待される光半導体技術開発を行うNTTはラピダスの株主でもある。現在、次世代半導体の開発技術を持つIBMが日本のラピダスに量産化を期待し、製造委託するためにアメリカ・オルバニーにあるIBM研究所にて日本の技術者がノウハウを獲得している最中である。国内外に散逸していた日本人半導体技術者TOP100を再び日本に集結させ、世界一を取り戻すためのチャレンジを行っている。
◆甘利 明 氏 プロフィール
昭和24年8月27日神奈川県厚木市生まれ。昭和47年3月慶応義塾大学法学部卒業。
半導体戦略推進議員連盟会長、バッテリー等の基盤産業振興議員連盟会長、カーボンニュートラルのための国産バイオ・合成燃料を推進する議員連盟会長、ルール形成戦略議員連盟会長、日本フランス友好議員連盟会長(衆議院超党派)、日本イタリア友好議員連盟会長(超党派)、日本アゼルバイジャン友好議員連盟会長(超党派) 、リサイクル推進議員連盟会長(超党派)、宇宙エネルギー利用推進議員連盟会長、知的財産制度に関する議員連盟 会長、コンテンツ産業推進議員連盟会長、音楽文化振興議員懇談会会長 他
主な経歴
•昭和47年 4月 ソニー株式会社入社
•昭和49年 9月 甘利 正(後に衆議院議員)秘書
•昭和58年12月 衆議院議員初当選(以来連続13期・現在に至る)
•平成 元年 6月 通商産業政務次官(2期)
•平成 5年 7月 自由民主党商工部会長
•平成 7年 9月 衆議院商工委員長
•平成10年 7月 労働大臣
•平成13年 5月 自民党筆頭副幹事長
•平成16年 9月 衆議院予算委員長
•平成18年 9月 経済産業大臣 (3期)
•平成20年 9月 内閣府特命担当大臣(規制改革)、行政改革担当大臣、公務員制度改革担当大臣
•平成23年10月 自由民主党広報本部長
•平成24年 9月 自由民主党政務調査会長
•平成24年12月 経済再生担当大臣、社会保障・税一体改革担当大臣、内閣府特命担当大臣(経済財政政策) (4期)
•平成29年11月 自由民主党行政改革本部長 自民党知的財産戦略調査会長
•平成30年10月 自由民主党選挙対策委員長
•令和元年 9月 自由民主党税制調査会長
•令和3年 10月 自由民主党幹事長
•令和3年 11月 自由民主党税制調査会顧問(現在)
•令和4年 9月 自由民主党経済安全保障推進本部本部長(現在)
イタリア共和国 ガバァリエーレ・ディ・グラン・クローチェ勲章受章
アゼルバイジャン共和国 ドストラグ勲章受章