賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局
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今回第一部では、政治ジャーナリストの青山 和弘氏にお越しいただきました。
安倍派を中心とした裏金事件報道以降、メディアでの露出が以前にも増して超ご多忙な青山氏。崖っぷちに追い込まれた岸田政権は、このまま退陣に向かうのか、起死回生の一手があるのか。インサイダー情報をふんだんに交えて、最新情報をたっぷりとお話いただきました。
第二部ではインデックス株式会社 代表取締役社長の植村 公一氏にお話しいただきました。 万博のパビリオン建設が佳境を迎え、資材の高騰、建設労務者不足、発注者と受注者のコミュニケーション不足等、各国政府の発注に遅れが出ています。建設・インフラの発注及び運営に関する国内外での豊富な経験を持つ植村氏に、万博の成功に向けた“秘策”と、日本の建設・インフラ産業の将来展望について存分に語っていただきました。
政治ジャーナリストとなって早30年が経ちますが、経験上、日本政治はこれまでで最悪な状況だと思います。何が問題なのかというと、極まった政治不信に加えて、岸田総理に代わる次の選択肢が自民党内にも野党にも見当たらないことです。
現在、政治の焦点は裏金問題です。自民党内で大規模な不正行為が継続的・組織的に行われていたわけですから、実態の解明は大前提です。なので来年度予算の成立を盾に与野党対立が猖獗を極めるのかと思いきや、野党の足並みは揃っていません。特に、万博予算を人質に取られている維新の会は政治倫理審査会で十分という考えです。政倫審はテレビカメラなし、偽証罪もなく、出席も任意という場なので、真相究明からはほど遠いものになるでしょう。他の野党が徹底抗戦の姿勢を見せるとすれば、おそらく証人喚問の要求でしょうが、野党の連携はなかなか厳しい状況です。実態解明は中途半端なまま、来年度予算は成立するでしょう。
岸田総理にとって何が政権の命運を左右するのか?それは支持率、つまり世論です。支持率が低いままだと、岸田総理は9月の自民党総裁選を乗り切ることはできません。少しでも世論を味方につけようということで、岸田総理は政権を支えてきた麻生副総裁との関係を失う覚悟で岸田派の解散を決めました。ただこれはあまり支持率に影響しませんでした。今後政治とカネの問題でよほど国民が納得するような政治責任を示し、政治資金規正法の改正を含む改善策を提示しないと、支持率の低迷が続くと思います。
次の焦点は島根と長崎と東京で行われる補欠選挙です。ここで自民党が勝利できると、岸田総理の手で衆議院解散に打って出る機運も出てきます。一方、惨敗すると一気に『岸田では選挙は戦えない』という空気になり、6月退陣説が浮上する可能性があります。ポスト岸田に向けた動きも活発化してくるでしょう。ただし、ポスト岸田として名前が挙げられる人は、『帯に短し襷に流し』で決定打に欠けます。ただ『自民党が生まれ変わった』というイメージを打ち出せる人が条件なので、石破元幹事長や上川外相が浮上して来ると思います。
岸田総理が考えるベストシナリオは、補選で少なくとも一勝以上した上で、訪米や北朝鮮外交でポイントを稼ぎ、株価上昇や賃上げ、所得税減税など経済によって支持率を少しでも回復させて、9月の総裁選より前に解散総選挙を打つことです。それができなければ退陣という『分水嶺』に今立っていると言えます。
一方、野党第一党の立憲民主党はどうか?泉代表は党内の求心力もなく、9月に予定されている代表選で続投は厳しいでしょう。かといって他の候補者も厳しい。唯一、野田佳彦元総理が保守層にも訴求力があり安定感がありますが、立憲が野田氏を立ててくるかは未知数です。
果たして、日本政治はどこに向かって行くのでしょうか。岸田政権が続くのか新総理が誕生するのか、はたまた政権交代まで行くのか。そこは民意の動向がカギを握っています。私も政治ジャーナリストとして、いち国民として、一人でも多く皆様に情報をお届けすべく日本政治の取材を続けていきたいと思います。
Q:ジャーナリストの仕事は楽しいか?
A:因果な商売だと思う(笑)。政治家の本音を知るために近づく必要があるが、時には厳しく批判しなければならない。ただ政治への好奇心がモチベーションになるし、今は天職だと思ってやっている。
Q:今の日本政治はまるで好き嫌いの世界。国内外が大変な時に、政治の人材不足を感じるが、根本的な問題は何か?
A:深刻な問題だと感じている。リーダー不足はどこの世界でも言われているが、政治における問題の一つは小選挙区制度。これにより政治家の粒が小さくなった。また、世襲議員がどんどん増えている。世襲議員はどうしてもポジションを守ることの優先順位が高い。そうした中で最近は、代議制民主主義の限界も感じている。
Q:政治と経済は密接な関係で、我々のような経営者目線から、青山氏自身が政治家を目指さないのか?
A:もっと若ければ(笑)。そもそも自分にはそのような素養はないが、政治家はなっても十年以上影響力は持てない。こういう機会も頂いているので、私はジャーナリストとして貢献できればと思う。
◆青山 和弘 氏 プロフィール
元日本テレビ政治部次長兼解説委員
星槎大学非常勤講師(2022 年 4 月~)
1968 年千葉県生まれ
出身校:東京大学文学部社会心理学科卒業(1992 年)
日本テレビ政治部では野党キャップ、自民党キャップを歴任した後、国会官邸キャップは2回(通算 6 年)羽田政権から岸田政権まで15 の政権を取材。阪神大震災から民主党結党、郵政解散、政権交代、東日本大震災、森友・加計問題、安倍トランプ会談など現場取材・リポート。
直接担当した政治家は枝野幸男、前原誠司、鳩山由紀夫、野田佳彦、山崎拓、武部勤、野中広務、亀井静香、安倍晋三、小渕優子、小野寺五典、林芳正、武田良太、小川淳也など与野党を問わない幅広い人脈と分かりやすい解説には定評がある。
万博の歴史を紐解くと、その時代におけるテーマや理念を表現する場としての巨大建造物が中心のハード面から、未来社会が抱える問題解決をテーマにしたソフト面での発信プラットフォームに変遷してきたように思います。その上で、大阪・関西万博の『いのち輝く未来社会のデザイン』が目指すところは私たちの将来にとって非常に重要な役割を担っていると感じています。
昨今、メディアで指摘されているように、開催に向けたパビリオン建設における様々な問題がここに来て露呈しています。私は大きく3つの課題があると考えます。一つには、建設労働者不足です。これは官民連携で行われている全国的な半導体工場建設に人が取られていることや直近の能登半島地震の復旧復興作業等の他に建設業界の構造的問題から派生した下請け業者の高齢化と人手不足によるものと思われます。また、世界情勢の変化による物価上昇、資材高騰や労務費の高騰も挙げられます。
現在、海外160カ国と9機関が参加する中で、いまだ具体的なパビリオン建設に係る参加国は160に及びません。そこにも様々な問題点が挙げられます。当初より膨らんだ予算問題も建設物価変動指数を示す等きちんと説明すれば理解を得られると思いますが、対応が後手に回っている印象で、説明不足による不信感が拭えないような状況です。
また、潜在的には、建設後のオペレーションマネジメントの課題もあります。警備など安全確保の問題やサスティナビリティの観点から、万博後のリサイクルの問題やカーボンニュートラルの問題もまだ残っています。ただし、これらの多くは、万博関連に限った問題ではなく、そもそも日本全体が抱える問題でもあるのです。人口減少や少子高齢化による人材不足やエネルギーコストの上昇による資材高騰の波は、この建設・インフラ産業界にも押し寄せてきています。
では、どうすればよいのでしょうか。戦後の高度経済成長期とともに日本のインフラ基盤を支えてきた建設業界も時代とともに変わっていかなければなりません。私が考える施策は3つ、既存建物のリノベーション・リファインと施設建築のモジュール化、そして新たな発注方式やPPPの導入推進です。弊社インデックスでは、国内外の建設のプロジェクト・マネジメントを手掛けており、私自身も国交省の政策参与として、インフラPPP*の政策に携わっておりましたし、今は愛知県政策顧問として、先導的なインフラPPPプロジェクトに携わっています。
*PPP(Public Private Partnership)とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を行政と民間が連携して行うことにより、民間の創意工夫等を活用し、財政資金の効率的使用や行政の効率化等を図るものであり、指定管理者制度や包括的民間委託、PFI(Private Finance Initiative)、コンセッションなど、様々な方式があります。~国土交通省HPより
これまで建築業界はスーパーゼネコンを頂点とする建設会社の配下にサブコンや下請・孫請が連なるピラミッド型請負構造による既存建築物のスクラップアンドビルドを戦後復興以降も繰り返してきました。日本の建設技術は世界でもクオリティが高いと言われて来ましたが韓国や中国などの昨今の建設技術は見劣りしません。日本は人口減少や高齢化が進んでいく中において、デジタル化や多様性、カーボンニュートラルといった時代の変化に対応しきれていないように感じます。この万博を機に、モジュール化に繋がる仮設建築の多様化を実証実装し、オープンブック方式やアットリスク型コンストラクション・マネジメントなど時代に合った発注システムの導入によってコストや発注プロセスの透明性や多様性やアカウンタビリティやカーボンニュートラルを進め、『運営』に力点を置いた新しい官民連携の姿となるPPPに日本の建設業界も舵を切りつつ変革していかなければなりません。そして、今後の業界の指針になるように、この大阪・関西万博を成功裏に収めなくてはいけないと思います。日本の建設業界のイノベーション推進の為に、これからも尽力していく所存です。
Q:関西万博の開催時期あるいは開催の可否が不動産に与える影響は大きい。植村氏はどう評価しているか?
A:予定通りに万博を開催しなければいけない。そのためにどうすべきか問題課題は見えてきたので具体的な問題解決へ向けてオールジャパンで対応していくしかない。
Q:能登半島の復旧はいまだ進んでいない。植村氏推進している方式の導入で見通しが立たないものだろうか。
A:東日本大震災の復興で経験したのは、地元の皆さんが望んでいることと我々が考えていることの差が大きかったこと。被災された地元では当然ながら日々の生活の回復が第一で、我々は未来へ向けた人口減少・高齢化社会に対応すべく新たな街づくりを全てのエリアで目指した事がギャップの原因。インフラ整備にコンストラクション・マネジメントやPPPなど官民連携の導入やモジュール化した建物の促進により能登半島地震の復旧復興に関して、もっと効率化・スピード化し将来を見据えた街のマスタープランができると思うし、現状、多少遅れてはいるが、国はこうした課題も把握しつつ復旧復興を進めていると思う。
◆植村 公一 氏 プロフィール
1994年の創業以来、建設プロジェクトマネジメントを本業にした独立系コンサルティングファームとして数多くの建築プロジェクトを成功に導いてきた。
とりわけ予算や工期などに問題を抱えるプロジェクトの適正化に定評がある。
最近は建設プロジェクトだけでなく、有料道路のコンセッション(一定期間、運営権を民間企業などに売却すること)など社会インフラ関連のPPP(Public Private Partnership:官民連携)に力を入れており、愛知県の政策顧問として愛知県有料道路や愛知県国際展示場のコンセッション、愛知県新体育館(アリーナ)の「BT+コンセッション」などをサポートしている他、海外における有料道路の民営化やスマートシティのプロジェクトにも力を入れている。
2011年12月から2012年6月まで、前田武志国土交通大臣の下で国交省の政策参与を務めた。カリフォルニア芸術大学卒。東京農工大学理事。