賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局
受付時間 平日9:30~18:00
東京例会では、Apple、マクドナルドなどで44年にわたるグローバルの経験を持つ株式会社原田泳幸事務所 代表取締役 原田泳幸氏にご登壇いただきました。
昨年大阪例会でご登壇いただき、東京でも開催して欲しいとの声にお応えしてようやく実現いたしました。
今回、「日本の経済成長と国際競争力」をテーマに、リーダーズ倶楽部のためにわざわざ作成いただいたスライドを使用して、原田流リーダー論と世界観を織り交ぜながら具体的提言を語っていただきました。また大変貴重な機会ということもあり、質疑応答も大変白熱したものとなりました。ご講演後、時間を超えて名刺交換にもご対応いただき、ご参加された皆さまも大変満足の例会となりました。
講演内容
昨今のデジタル化による苛烈なグローバル競争が先鋭化する中において、日本の直面している様々な課題が浮き彫りになっています。もはや非正規社員や雇用、人手不足などの問題は個々の企業の問題ではなく、日本の社会構造そのものの問題とも言えます。ひいては少子化や貧困や可処分所得などの問題は政治的重要課題となっています。このような多くの問題がGDPや国際競争力にも影響しているのではないかと思います。
では、グローバリゼーションやデジタル化の波が押し寄せる中、日本の企業はどうあるべきでしょうか。事業に関わる全てのステークホルダーの価値向上のために先を見据えた戦略、そして時代にフィットした改革をバランスよく行うことが重要です。
売上はお客様がくれる通信簿、利益は経営の品質と言われています。不景気の中で、企業はどのようにして利益を出すのか?私が行ったマクドナルドの改革では、「価値」を上げて値段を上げること。「価値」とは商品価値だけでなく、利便性やサービスや安心安全やナビゲーションなどの「無形の価値」を上げることも意味します。そして、顧客満足度を上げ、リピート率を上げ、利益向上を図ります。ただ、最大のプロフィットドライバーは、実は従業員、つまり人事にあります。経営マネジメントは7割人事・3割財務の比率で重要だということです。従業員に対する人材パイプライン作りや後継者育成プログラムなどの定着率向上のための施策や人材投資によって、従業員満足度を上げることが就業定着率向上に繋がります。そして離職率が下がれば採用コストを削減することができ、顧客満足度が上がることで、結果として営業利益向上に繋がるのです。賞与に関しても、成功報酬制度によって組織力を強化していきます。管理職以上は業績連動成果報酬を採用、全てのステークホルダー価値を反映し、継続的な成長を図る明日の基盤を作ったかどうかという評価基準も重要なポイントです。
また、デジタル化によるビジネスモデルの進化にも対応していかなければなりません。そのためには、グローバル人材の確保や縦割り行政の改善や規制緩和など行政も含め、経営者の意識改革も不可欠です。このデジタル化の波を軽視し、対応に遅れた企業は苦しみ、他方で変革に成功した企業は成長を続けています。業界の垣根を超えた異業種同士のコラボレーションを可能にするデジタル化によるビジネスモデルの進化は国際競争力の強化にも繋がります。国際競争力向上には人材の競争力が鍵になります。そのためには米国企業にある様に、”グローバル人材の結集”が不可欠です。その結集を可能にするには、給与水準、女性の活躍、経営者の意識変革が必要です。これらの変革を官民一体となって行うことによって、日本経済全体の成長と国際競争力の強化が図られていくものと考えます。
日本には歴史・文化・能・歌舞伎・雅楽・漫画・アニメ・焼き物・食品など日本独自の素晴らしい有形無形の資産があります。これらを異業種から異業種へとボーダーレスなデジタルコラボにより、プラットフォーム上で新産業として創出することができれば、日本が国際社会で十分に戦うことは可能ですし、そのポテンシャルは十分あると思っていますので、ぜひとも頑張っていただきたいですし、私も少しでも貢献できるよう頑張っていきたいと思っております。
Q:スティーブ・ジョブズのようなイノベイティブで気難しい人たちとどのようにして仕事をされてきたのか?
A:本気で意見を述べたことで認められた部分があったのではないか。黙っていることはその会社に対する存在意義すら認められない。そのような環境をやりがいと感じるかどうか。また、ジョブズから様々な学びを得たが、ひとつには、人は往々にして無意識にお金のために思考を制御してしまうが、彼のイノベーションにはそれは全くないところだと思う。誰もがなせる能力ではないかもしれないが、イノベーションの発露は既成概念にとらわれないものだと思う。
Q:囲い込みが社会全体のイノベーションを阻害することもあると思うが、新たな日本の独禁法とオープンイノベーションに関して、もう少し詳細なご意見を伺いたい。
A:規制が全て悪ということではなく、ユーザーファーストやユーザーの利便性を考えた時、プラットフォーマーとして独占するよりも、社会が求めているフェアネスに基づいた競争であるべきではないかということ。現実的には、アップルストアに対抗するプラットフォームを日本独自に構築できるかは疑問だが、既存のインフラプラットフォーム上で日本独自の新産業を創出するチャンスはおおいにある。今の日本にその議論がないことが残念。
Q:超高齢化の日本にとっては、高齢化社会に向けたシステムによって成熟した社会を目指すべきではないかと思うが、日本はグローバルプラットフォーマーになれるのか?または、スケールの大きなプラットフォーマーになるには日本はどうしたらいいか?
A:日本の色々な産業が集まり、新しいビジネスモデルや新しい消費者の価値などについて議論する官民一体となったフォーラムが必要だと思う。そこでようやくスタートラインに立てるのではないか。縦割り行政も含めた規制緩和の議論も一つの鍵になりうる。高齢化に関しては、高齢者人口増に反して可処分所得減という現実社会を変えるべき。働けるのに60代で定年退職してしまうのは優秀な人材の喪失にも繋がる。もっと経済力をつけることができ、社会に貢献できるための高齢化問題の議論が必要。
◆原田 泳幸 氏 プロフィール
株式会社えがおCEO/株式会社原田泳幸事務所 代表取締役/複数社の顧問/中堅企業経営者育成事業
グローバル企業44年、IT業界33年、外食産業11年、教育・介護事業2年の経験。
アップル、マクドナルド、ベネッセで20年間社長・会長歴任。
アップルとマクドナルドで大変革とV字事業回復に成功。
事業変革、マーケティング戦略、人事変革、フランチャイズ事業変革、様々な危機管理について多くの講演実績あり。
<経歴>
1997年~2004年:アップルコンピュータ―(株)代表取締役社長
兼米国アップルコンピュータ―社副社長
2004年~2015年:日本マクドナルドホールディングス(株)代表取締役会長兼社長兼CEO
2014年2016年:(株)ベネッセホールディングス代表取締役会長兼社長
2013年~2019年:ソニー株式会社 社外取締役
2016年~:経営塾主宰。他複数社の顧問。
2019年10月~:東海大学客員教授
2022年5月~:株式会社えがおCEO就任
<主な著書>
・とことんやれば必ずできる:かんき出版
・ハンバーガーの教訓:角川書店
・マクドナルドの経済学:PHP
・原田泳幸の仕事の流儀:角川書店
・勝ち続ける経営:朝日新聞出版
・掟破り:かんき出版
・成功を決める「順序」の経営:日経BP