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賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局

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活動報告

活動レポート 東京例会
2025年10月27日
「第78回例会 東京」

写真:衆議院議員 初代デジタル大臣 平井卓也 氏

今回の東京例会では、衆議院議員で初代デジタル大臣の平井卓也氏とスターバックスコーヒージャパンの元CEOでもあり、株式会社リーダーシップコンサルティング代表取締役社長の岩田松雄氏にご登壇いただきました。

第一部の平井卓也氏は、「AI時代に日本がどう備え、どう未来を切り拓くのか」をテーマに、生成AIやフロンティアAIの影響を踏まえ、国家戦略の再構築、信頼できるガバナンスの確立、行政・産業分野での実装、スタートアップ支援とイノベーション促進、そして人材育成と教育改革を一体的に論じられ、AI時代に日本が備えるべき構想力と実行力を、デジタル庁創設の経験を交えてお示いただきました。

第二部の岩田松雄氏は、数々の企業をV字回復に導き、日産自動車、日本コカ・コーラ役員などを経て、ゲーム会社アトラスの社長に就任し、3期連続赤字を黒字化させるという企業再生を実現。企業は何のためにあるのか?企業経営にとって大切なことは、会社の存在理由である「ミッション」を社内の隅々までに浸透させることであると説きます。なぜミッションが大切なのか?「ミッション経営」とその効果について、そのミッションを愚直なまで一所懸命に実行しようとしている具体的な事例としてスターバックスについて、そして「これからのリーダーに求められるもの」について、熱く語っていただきました。
講演内容

【スペシャル講演①】

衆議院議員 初代デジタル大臣 平井卓也 氏

トークテーマ:AI時代に日本がどう備え、どう未来を切り拓くのか

ますます加速するAI時代を迎え、我々はどのように進むべきでしょうか。未来の日本を見据え、正しい選択と決断をしていかなければなりません。

日本のデジタル化が思うように進まなかったのは、長年にわたり紙や対面を前提としたアナログ手続きが精緻に整備され、社会全体がその仕組みに最適化されてきました。その結果、インターネット革命の衝撃を十分に捉えきれず、デジタル移行の必要性と構造改革の遅れが重なり、デジタル化が思うように進まなかったと言えます。2000年代以降、インターネットが飛躍的な発展を遂げる一方、それに伴い諸問題も起こり、社会におけるリスク管理や問題解決などの課題も提起されてきました。決定的だったのは、コロナ禍において我が国のデジタル基盤が全く役に立たなかったことです。そこで、政府としてデジタル化を強力に推進するため、デジタル庁を創設し、私が初代デジタル大臣に就任しました。私のミッションは「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」を実現し、一人ひとりの多様な幸せを実現するデジタル社会を目指し、世界に誇れる日本の未来を創造することです。

これまで、議員立法でサイバーセキュリティ基本法や官民データ活用推進基本法などを制定いたしました。また、AI基本法においては、法律がテクノロジーの進化の足を引っ張らないよう、時代や情勢によっていつでもフレキシブルに軌道修正できるよう、技術とビジョンを確認しつつ柔軟に適切に推進していく、いわゆるアジャイル法案という形にしました。政府のAI基本計画の骨子はAI利活用の促進、AI開発力の強化、AIガバナンスの主導、AI社会に向けた継続的変革、の4つです。

AIは、人類が進めてきたインターネット革命の最終章に位置づけられると思います。情報をつなぐ段階から、価値を生成し意思決定を支える段階へと進化し、あらゆる産業・行政・地域社会の仕組みを刷新する力を持ちます。AIの活用こそ、日本の次の成長と競争力の鍵となり得ます。日本における働き方改革は、本来、DX化とセットで行うべきでした。しかし、日本の多くの企業が時間軸だけで働き方改革を評価したため、生産性向上に寄与しなかったという現実があります。今後、AIの社会実装は、特に、医療・介護・農業・物流などの人手不足の分野や中小企業や地方自治体の業務効率化の促進などにも大きく寄与すると確信しています。

AIについては、多くの不安や懸念があるのも事実です。AIの社会実装においては、意思決定のプロセスにどこまで関与させるのかという問題があります。ツールとしてではなく、AIに意思決定を委ねることには危険性があると思います。そこで、AIを正しく評価すべく、安全性評価やその実施手法に関する検討や国際連携に関する業務を行う機関として、AIセーフティ・インスティテュート(AISI)を設立しました。AIを正しく理解し、倫理や安全性や公平性と調和させながら社会に実装することが求められています。

Q&A

Q:AI人材が育っていない日本。諸外国との差も大きいが、経営者としての解決策は?

A:海外のAI化のモチベーションは利益を得る目的が大きい。AI化による成功体験(年収増や充実した生活)を増やしていくことしかない。AIを使いこなした未来は自分たちの能力を拡張することによって今以上の報酬が得られると現実的なところから明確に納得させることではないか。

Q:日本のAI産業がハイパースケーラーとどのように戦っていくべきか?

A:過去を振り返ると日本の失敗はインターネット革命を甘く見たところ。社会の変革に対する想像力が不足していた。現行の成功体験に縛られすぎたという反省に立つべき。米国企業の強みは自らのビジネスモデルを否定して、次の投資へ向かう。日本の経営者にはまず考えられない。シンガポールや米国や中国の経営者たちは失敗が一つの売りになっている。そのような強いメンタリティを持つ次世代リーダーを育てるべき。今後10年、日本は失敗できない。やるべきことが見えているので、あとはやるかやらないかだけ。AIを正しく社会に実装する流れの中で、それぞれの企業や個人が決断を迫られる。

Q:今後の課題として、AIイノベーションが必要だと思うが、どのような人材を育てていけばよいか?

A:若い人たちには、特にそれぞれの地方が持つ社会課題をAIテクノロジーでどのように解決していくのかというミッションに取り組んでもらいたい。行政の仕事の新たな担い手としても活躍してもらいたい。アプリケーションの領域になると思うが、ぜひ活性化してほしい。それは行政の現状の仕事を否定するところから始まるだろう。なので、民間のみならず、政府や地方自治体も今までの当たり前が当たり前でなくなることを恐れず、新しい当たり前を創っていくことがカギを握る。

【スペシャル講演②】

株式会社リーダーシップコンサルティング 代表取締役社長 岩田 松雄 氏

トークテーマ:ミッション:企業は何のためにあるのか?

多くの企業が素晴らしいミッション(経営理念・パーパス)・ビジョン・バリュー(行動指針)を掲げています。しかし、これらの言葉の定義については多くが不明確であるような気がします。しかし、トヨタのHPにはそれらがしっかりと定義されています。一般的には、ミッションとは企業の使命や存在意義を指し、何を達成したいのか。ビジョンは企業が目指すべき方向性、5年後、10年後のあるべき姿を示すことです。そして、バリュー(行動指針)は企業の価値観、ミッションやビジョンをどうやって、何を大切にし、達成していくのかという行動の判断基準を指します。

私が新卒で日産に入り、大勢の前で「日産自動車の社長を目指して頑張ります」と言った時、失笑とざわめきが起こりました。しかし、大きな目標を掲げ、そこに向けて結果はともかく一所懸命頑張ることが大切だと思っていまし。営業成績トップをあげ、セールスマンとして社長賞を受賞しました。若い頃から理念やミッションに興味があった私は、ある時、日産自動車の企業理念を先輩方に聞いても、誰も答えてられないことを不思議に思いました。その後、社内留学でUCLAビジネススクールに通うことになり、マーケティング、ファイナンスの経営理論を学びましたが、そこでは、企業は株主の持ち物であり、株価の最大化が経営者の使命であると教えられました。しかし、何となく腑に落ちません。

私自身はキャリアを重ね、外資系コンサルティング会社、日本コカ・コーラの常務執行役員を経て、プリクラの開発で知られるゲーム会社「アトラス」の代表取締役に就任します。3期連続赤字だった会社を立て直し、縁あって「THE BODY SHOP」を運営するイオンフォレストの代表取締役社長に就任します。そこで創業者アニータ・ロディック氏から、企業は事業を通じて、つまり自分たちの商品やサービスを通じて、「世の中を良くするために存在する」ことを学びました。そこで、私はようやく腑に落ちるのです。

その後、スターバックスコーヒーのCEOに就任するのですが、すでに素晴らしい理念を掲げるトップ企業でした。そこでも創業者のハワード・シュルツCEO氏に出会い、多くを学びました。「人々の心を豊かで活力あるものにするために」というミッションを掲げ、社員一人ひとりに浸透させ、企業活動を通じて世の中に貢献するというものです。スターバックスでは、「Just say yes!」を掲げ、道徳、法律、倫理に反しない限り、お客様が喜んでくださることは何でもして差し上げることと教えられます。素晴らしい接客はミッションを理解し、共鳴し、実現したいと思っているパートナー達に支えられています。ですから、離職率も低く、教育トレーニングに投資ができ、素晴らしい接客ができるという好循環が生まれるわけです。

企業におけるミッションも大切ですが、人生におけるミッションも大切です。自分がこの世に生かされている理由こそが人生におけるミッションだと思います。好きなことに情熱を持って取り組み、得意なことで世界一を目指す。そして、何か人のためにすることで対価を得るわけです。私の場合、以前は日産の社長を目指し、今は進化させリーダー教育をミッションとしています。何のために命を頂いているのか、何のために仕事をしているのか、その「生きた証」こそがミッションなのです。

最後に、ニーチェの言葉を贈りたいと思います。

『「どこから来たのか」ではなく、「どこへ行くか」が最も重要で価値のあることだ。栄誉はその点から与えられる。どんな将来を目指しているのか。今を越えて、どこまで高く行こうとするのか。どの道を切り拓き、何を創造していこうとするのか。過去にしがみついたり、下にいる人間と見比べて、自分を褒めたりするな。夢を楽しそうに語るだけで、何もしなかったり、そこそこの現状に満足してとどまったりするな。絶えず進め。より遠くへ。より高みを目指せ。』

Q&A

Q:経営者からリーダー育成と、人生の転機が訪れた時、その判断基準があれば教えてほしい。

A:私の場合失敗も含めて、多くの経験を経て、自分に何ができるのかと問うた時、自分の社長としての経験を人に伝えていくことがミッションだと感じた。若い方へのリーダーシップ研修では、ミッションを考えてもらうことが多い。自分の強みに自分自身が気づいていないこともあるから、人からのフィードバックは大切。なので、色んなことにチャレンジして自分の可能性を探求すること。そして新しい自分を見つけ、ミッションが変わる契機になるのかもしれない。

Q:スターバックスの採用についてお話を聞かせていただきたい。

A:スターバックスは良い循環サイクルで回っている。雰囲気の良いお店にお客さんとして来店する。こんなお店で働いてみたいと思う。新店でアルバイトを募集すると30人の枠に900人の応募がある。その中からスターバックスに合った人材を採用できる。このような好循環が生まれる。一般論で言うと、人事・採用はとても重要。学生には、説明会に社長が来て、熱く語る会社を選びなさいと言っている。ベンチャー企業では中途採用が多いが、できるだけ新卒採用したほうが良いと思う。中途の場合でもリファレンス採用が良い。ベンチャーの社長には、ある程度軌道に乗ってきたら、新規事業と採用に力を入れなさいとアドバイスしている。

Q:高校生の子どもに対し、教育の観点から、何がやりたいのか、情熱を持ってできること、好きなことは何か、をアドバイスするなら何と言えばよいか?

A:スターバックスを辞めた後に自分自身のミッションに気づいたので、学生の頃から最終的なミッションを掲げるのは難しいだろう。希望の会社に就職できるとも限らず、入社して配属先が希望とは違うことも往々にしてある。なので、色々な経験をすることも大切。そこで目の前に与えられた仕事を一所懸命やることで好きを見つける。その好きが得意になっていく。そして新たな発見や出会いやきっかけが生まれることもある。高校生に対しては、細かなアドバイスよりも話を聞いてあげて寄り添うこと。そして、目の前のことを一所懸命やることが一番のアドバイスではないか。

Q:もし、いま厳しい状況の日産自動車の社長だとしたら、何に取り組むか?

A:ゴーンさんの後b本当に社長に相応しい人が社長をしているのか疑問。社長の責任も重大だが、それを選んだ任命責任も問われるべきだと思う。日本ではあまり任命責任について重要視しない風潮がある。日産の技術は高いので、他社との差別化が一つのテーマだろう。さらに大事なのは人材の選抜。英語は話せた方が良いが、日産愛に溢れ、真面目にコツコツ実績を積み上げてきたような人材を探し、後継者として育てていく。

◆岩田 松雄 氏 プロフィール

大阪大学経済学部卒業、UCLAビジネススクール卒業、東京大学E M P修了
株式会社 リーダーシップコンサルティング代表取締役社長
実践女子大学客員教授
元早稲田大学非常勤講師・元立教大学ビジネスデザイン科特任教授
元スターバックスコーヒージャパン代表取締役最高経営責任者。
(株)寿スピリッツ社外取締役
1982年に日産自動車入社。製造現場、セールスマンから財務に至るまで幅広く経験し、社内留学先のUCLAビジネススクールにて経営理論を学ぶ。帰国後は、外資系コンサルティング会社、日本コカ・コーラ ビバレッジサービス常務執行役員を経て、2000年(株)アトラスの代表取締役に就任。3期連続赤字企業を見事に再生させる。
2005年には「THE BODY SHOP 」を運営する(株)イオンフォレストの代表取締役社長に就任。店舗数を107店から175店舗に拡大しながら、売上げを約2倍にする。伝説の創業者、アニータ・ロディックからの信頼も厚かった。
2009年、スターバックスコーヒージャパン(株)のCEOに就任。「100年後も輝くブランド」に向けて、安定成長へ方向修正。ANAとの提携、新商品VIA(スティックコーヒー)の発売、店舗内wi-fi化、価格改定の実行など次々に改革を実行し、業績を向上。日本に数少ない“専門経営者”として確固たる実績を上げてきた。
2012年より約1年間産業革新機構に参画。
2013年にリーダー育成のための(株)リーダーシップコンサルティング設立。
現在に至る。
2012年UCLAよりAlumni 100 Points of Impactに選出される(歴代全卒業生37000人から100人選出。92年卒業生では唯一人)
2023年早稲田大学ビジネススクールよりティーチングアワードを受賞。
著 書:
・スタバ社長だった父が息子に綴る「仕事と人生の本質」 (三笠書房)
・共感型リーダー(KADOKAWA)
・「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方(サンマーク)
・ミッション 元スターバックスCEOが教える働く理由(アスコム)
・新しい経営の教科書(コスミック出版)
・ブランド 元スターバックスCEOが教える「自分ブランド」を築く48の心得(アスコム)
・「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の言葉(サンマーク)
・「君にまかせたい」と言われる部下になる51の考え方(サンマーク)
・「早く社長になりなさい」(廣済堂出版)
その他 多数。

 

開催日時
2025年10月27日(月)15:00~17:30
タイムテーブル
15:00       開会
15:00~16:00  スペシャル講演①(衆議院議員 初代デジタル大臣 平井卓也 氏)
16:00~16:10  休憩
16:10~17:30  スペシャル講演②(株式会社リーダーシップコンサルティング 代表取締役社長 岩田 松雄 氏)
17:30       閉会
場所
日本外国特派員協会 5階 Function Room1.2.
東京都千代田区 丸の内 3-2-3 丸の内二重橋ビル5階Google Map
TEL:03-3211-3161
https://www.fccj.or.jp/2015-02-02-04-29-17/2014-10-16-03-04-20.html