賢者の選択 リーダーズ倶楽部事務局
受付時間 平日9:30~18:00
6/24(水)東京例会が開催されました。今回は雑誌カレント編集長の佐々木大輔氏と皇室史学者であり、救国シンクタンク理事長兼所長倉山満氏をお迎えし、現代日本の政治や社会を鋭く紐解く2部構成で開催いたしました。
第一部では、2026年2月の衆院選で自民党が単独3分の2を獲得し、高市内閣への期待が高まる中、国民の政治への向き合い方が問われています。佐々木氏は、感情的な「世論(セロン)」ではなく、学びと議論で練り上げられた「輿論(ヨロン)」の重要性を提示。多くの政治家を取材してきた経験をもとに、健全な民主主義を支えるために国民一人ひとりが持つべき姿勢を語っていただきました。
第二部では、現代日本において「財界人」が姿を消し、目先の利益に囚われる「業界人」ばかりになった窮状を倉山氏が指摘。官僚依存に陥った財界の現状を厳しく問い直しました。かつての「政官財の鉄のトライアングル」と単なる「政官業の癒着」の違いを整理し、日本の諸問題を根底から解決するために真の「財界人」とは何か、いかにあるべきかを熱弁いただきました。
次代の日本を背負う視座と教養を得る、非常に密度の高い例会となりました。
講演内容
トークテーマ:「正しい」輿論をつくるために
私が皆様にお伝えしたいのは、「世論(せろん)」と「輿論(よろん)」の違いです。大衆の感情や空気に流されるのが「せろん」、理性的な熟議によって形成された意見が「よろん」。今の日本に必要なのは、後者を育てていくことだと私は考えています。実は私自身、かつては本も読まずに保守系言論人の言説を鵜呑みにする「ネット右翼」でした。そんな私が変わるきっかけになったのが、憲政史研究者・倉山満先生との出会いです。倉山先生から学んだのは「私を疑え、自分の頭で考えよ」という姿勢です。倉山先生は第二次安倍内閣の消費増税について、景気回復の途中での増税はデフレ脱却の妨げになると一貫して反対し続けてきました。ところが他の多くの言論人は、政権の方針が固まった途端に増税賛成へと主張を変えていきました。この光景を目の当たりにして、私は専門家の言説を鵜呑みにせず、自ら学び判断することの大切さを痛感しています。
今日、私が皆様に一番お伝えしたいコアメッセージは「落ち着いてください」ということです。正解に飛びつかない、二択に騙されない、人の評価に100点も0点もない。この三つの視点を、私は具体例を交えてお話しします。自民党参議院幹事長の石井準一先生を例に挙げます。参議院では野党も巻き込みながら多数派を形成できる、政権にとって欠かせない存在です。世間ではさまざまな評判が聞かれますが、私は、いい人か悪い人かではなく、日本のために動いてくれるかどうかで判断すべきだとお話しします。また、減税を掲げながら選挙アンケートでは「現状維持」と答えていた野党議員の例や、インタビューでは増税を語っていたのに後に減税へと転じた大臣経験者の例もご紹介します。断片的な情報だけで即断することがいかに危ういか、私自身の取材経験を通じてお伝えします。
憲法改正についても、私なりに議席状況を整理してお話しします。衆議院では自民・維新の連立で3分の2を超える議席を確保していますが、参議院では合計120議席にとどまり、3分の2まであと46議席足りません。憲法改正には衆参両院での3分の2の賛成と、国民投票での過半数が必要ですから、参議院こそが最大の壁だと私は考えています。次の国政選挙は2028年の参議院選挙ですので、この状況はしばらく変わりません。つまり改憲への道筋は、2028年の参院選で改憲勢力が3分の2を確保できるかどうかにかかっています。そのためにも、今から経済成長によって国民の圧倒的な支持を積み上げることが先決だと私は考えます。私が特に重要だと考えているのが、日銀政策委員会(計9名)の人事です。この国会同意人事は衆議院の優越がなく、参議院で否決されれば総理の意向は通りません。拙速な利上げを避け、リフレ路線を維持できる人材を毎年着実に送り込めるかどうかが、日本経済の行方、ひいては改憲の行方をも左右すると私は考えています。「日本の命運は参議院で決まる」というのが、私がこの部分でお伝えしたい結論です。憲法改正という大きな目標のためには、経済・金融・人事という地味に見える積み重ねこそが最も重要なのだと、私は思っています。
最後に、私は経営者の皆様にこう呼びかけます。経営者だと名乗った瞬間、政治家は背後に連なる社員や取引先、仲間の票を計算し始めます。皆様の影響力はそれほど大きいのです。だからこそ、その影響力を正しい方向に使っていただきたいと私は思います。一部の経営者がインフルエンサーのように誤った情報を発信している現状を、私は率直に憂いています。影響力が大きい分だけ、政治への責任も大きい。ノブレスオブリージュの精神で政治と向き合ってほしいというのが、私からの願いです。自分で学び、自分の頭で考え、自分なりの答えを出す。そういう経営者が増えていくことで、SNSや断片的なニュースに流される「せろん」ではなく、熟議に基づく「よろん」が形成されていくと私は信じています。「どうなるか」ではなく「どうするか」。この主体的な姿勢こそが、日本の未来を変える力になる。私はそう考えながら、これからも日本を良くするために進んでいきたいと思います。
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トークテーマ:「財界人」になるための講座
私が今日皆様にお伝えしたいのは、単なる業界人ではなく、真の「財界人」になるという生き方です。財界人とは、政治家に金と票と労働力を差し出すだけの存在ではありません。自分の頭で見識を持ち、政治家を使いこなし、時には官僚権力から自らの財産と自由を守る覚悟を持った経済人のことだと私は考えています。今の日本には、この意味での財界人がほとんどいなくなってしまったと私は感じています。
かつて池田勇人という総理大臣がいました。「私に経済政策を任せてもらえれば、日本国民全員の月給を10年で2倍にします」と宣言し、最初は失笑を買いましたが、下村治というブレーンとともに緻密な成長率の計算を積み上げ、本当に実現してしまいます。この池田を支えたのが、小林中をはじめとする財界人たちです。経団連会長・経済同友会代表幹事・日本商工会議所会頭という経済三団体のトップを子分として従えながら、本人は「一介の書生」と名乗っていました。この人格と人望こそが、当時の財界人を財界人たらしめていたのだと私は考えます。井上馨や渋沢栄一、GHQのマッカーサーに対しても一歩も引かなかった石坂泰三といった先人たちも同様です。彼らは自分の財産と信用を懸けて、政治家を国のために働かせていました。かつては経済界・政界・官界がそれぞれ緊張感を持って渡り合う関係にありましたが、財界人と呼べる人物がいなくなった今、政治家はもっぱら官僚の言うことを正解だと思い込み、経済人までもがそれに追随してしまっている。この構図こそが、私が今の日本で一番問題視しているところです。
私自身は、コロナ禍の始まりに救国シンクタンクという民間の研究組織を立ち上げました。補助金は一切受け取らず、月5000円の会員と年間100万円の特別賛助会員の会費だけで運営しています。危機のときこそ政府や官僚の言うことに黙って従うのではなく、自由な立場で物を言い続けることが大事だという思いから始めた活動です。実際、官僚の作った枠組みの中でああだこうだと議論するだけでは、本当の意味での政治にはなりません。政治家とは「何をするか決める人」であり、行政官とは「決められたことをこなす人」だと私は考えます。
一方、今の経済人の多くは、頭の良い官僚が言うことだから正しいのだろうと、疑うことなく従ってしまっています。私は、増税そのものが常に正しいとも常に悪だとも思いません。ただ、汗水流して築いた財産を理不尽に奪われることに、もっと敏感であるべきです。トランプ大統領がベネズエラの大統領を最小限のコストで拘束した判断は、賛否はあれど紛れもなく「政治」の決断です。一方で日本では、減税の議論一つが「レジの改修が間に合わない」という行政的な理由で立ち止まってしまう。この違いを、私は皆様にしっかり見ていただきたいのです。
だからといって、政治家に金だけ渡せばよいわけではありません。日本マクドナルドを創業した藤田田さんは、あえて政治家と距離を置き、商売に徹することで政治を超えるような仕事をした人物です。金の関係だけの相手は、金を出さなくなった瞬間に去っていくものです。本当に大切なのは、金や票を超えたところでの人格的な付き合いであり、無限にある不正解を一つずつ避けながら、正解に近づいていく。その姿勢こそが、財界人への道だと私は考えます。
政治家との付き合い方についても、私は自分の経験からお話しします。パーティー券を何枚も買って恩を売ったつもりになっている人は、実のところその政治家から金額でしか見られていません。私自身は、招待という形で金銭のやり取りを伴わない付き合いを続けている政治家の方が何人もいます。相手を金額で見る人とは付き合わない方がいい。これは商売でお客様を数字としてしか見なくなったら終わりだというのと、まったく同じ道理だと私は思います。何をすれば正解かという明確な答えはありませんが、これをやったら間違いなく失敗するということを一つひとつ避けていくことで、少しずつ正解に近づいていく。それが財界人を目指すうえでの現実的な歩み方だと私は考えます。
皆様お一人おひとりが、業界人で終わるのか、財界人としての生き方を選ぶのか。それは皆様の自由です。ただ、そういう選択肢もあるのだと知っていただけたなら、今日のところはそれで十分です。
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