メンバーズコラム

2015年9月 小林 弘幸 氏

ストレスで乱れる自律神経~血流低下が病への第一歩

2015年9月 小林 弘幸 氏

人間の生命活動を維持する上で必要不可欠な自律神経

ストレスと自律神経は、とても密接な関係にあります。自律神経は、末梢神経のひとつで体の隅々にまで張りめぐらされた細い神経網です。交感神経と副交感神経のふたつに分けられ、血管、心臓、肺、腸などの全内臓器官に伸びています。

そしてこの自律神経が、人間の生命活動を維持する上で、脳と同じくらい重要な役割を担っているのです。つまりソフトウエアでライフラインなのです。

私たちが寝ている間も呼吸をしたり、心臓を動かしたりできるのは、この自律神経のおかげです。また外気の暑さや寒さにかかわらず体温を一定に保つなど、体内の環境を一定に保つことを『恒常性』と呼びますが、これも自律神経の働きによるものです。血液循環、呼吸、消化、排泄、免疫、代謝などは、すべてこの恒常性を維持するためのシステムであり、これらは自律神経によって維持されているのです。

その働きにおいてとくに大事なのは、交感神経と副交感神経のバランスです。たとえば交感神経は車でいえばアクセルのようなもので、交感神経の働きが一方的に優位になるとアドレナリンが過剰に作用します。その結果、血管が収縮して血流が悪くなり、頭痛、腰痛、高血圧、さらには脳梗塞や心筋梗塞を引き起こします。腸管は弛緩しますから内臓の機能も低下して炎症もできやすくなります。また興奮や緊張が高まれば、怒りっぽくなったり、逆に血流の障害から倦怠感が出たりします。

仕事のパフォーマンスにも影響する交感神経と副交感神経のバランス

ビジネスマンがこのような状況に陥った場合、仕事をしていてもミスジャッジが多くなり、当然、いいパフォーマンスはできません。イライラが募れば、またそれがストレスになっていく……というように悪循環に陥りがちです。事実、人が嫉妬や憎しみ、怒りや苛立ちなどネガティブな感情を抱いているときに、自律神経は一気に乱れ、血管が収縮して血がどろどろになっていくことがわかっています。

一方、副交感神経が優位な状態になると身体はリラックスします。ですから緊張感が高いときは、副交感神経を高める必要がありますが、そのためにもっとも有効な手段が腸内環境を整えることです。腸内環境がよくなると副交感神経が上がるだけでなく、免疫力も上がり、風邪もひきにくくなります。 ただ、副交感神経が高くなりすぎるのも問題で、血管が過度に緩めば収縮時と同じように血流障害が起きてしまうのです。また免疫力を持った細胞の活性が落ちてしまい、1日に5千個できるといわれるがん細胞を攻撃できなくなり、がんになりやすくなります。大事なことは、交感神経と副交感神経がバランスよく機能することなのです。

腸の働きをコントロールしているのは自律神経です。不安や苛立ちで自律神経が乱れると腸の活動も悪くなりますが、逆に腸の活動を活性化させることで自律神経を整えることもできます。食物繊維や発酵食品をとって腸内環境を改善してみましょう。じつは人間の血液の質は腸で決まります。腸内の環境がよいと消化吸収が促されるだけでなく、良質な血液も作られるので内臓は活発になり、自律神経の活動はさらにアップするでしょう。又、我々が開発したセル・エクササイズは、体幹と末端を意識し、細胞を活性化させるストレッチです。ひとつご紹介しましょう。

【実践編】自律神経を活性化させるストレッチ

まず両手を頭上に上げ、てのひらを外側に向けます。そのまま両腕を交差させるようにして両手のてのひらを合わせます。その姿勢のまま左右にゆっくり身体を傾けてください。立ってでも座ったままでも結構です。肩甲骨が反転することで全身が伸び、代謝もアップ。これで自律神経が活性化します。

自律神経は自分ではコントロールできないと言いましたが、唯一それが可能なのが呼吸です。呼吸は自分で吐いたり吸ったりできますよね。それで自律神経を整えるのに、よく呼吸法が用いられます。基本は4秒吸って8秒吐く。1対2のバランスです。心に余裕があったり、安心しているとき、人の呼吸はゆっくり深くなります。逆にゆっくりと深い息をすることで緊張感がほぐれ、副交感神経の働きをアップさせることができるのです。

そして、予想以上に効果的なのが、帰宅後、今日履いていた靴を磨いて気持ちをきりえかることです。

1日の終りに必ず、靴を磨くようにしています。玄関にある椅子に座って、約5分、その日の反省をしながら集中して磨いて、終わったら嫌なことは忘れる。この気持ちの切り替えが大事です。また人間にとって足元はとても重要。足元が安定していることで気持ちも落ち着くものです。だから、よく手入れされた靴をはくことで、自律神経も自然と整ってくるはず。靴磨きは、いろんな意味でおすすめです。

つまり、平常心を保つこと~これすなわち「自律神経を保つ」ことなのです。

プロフィール

小林 弘幸氏

順天堂大学医学部附属順天堂医院 教授
小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)氏

順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター。1960年、埼玉県生まれ。’87年、順天堂大学医学部卒業。’92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学附属英国王立小児病院外科、トリニティ大学附属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任する。腸のスペシャリスト、自律神経研究の第一人者としても知られており、アスリートや文化人、アーティストのパフォーマンス向上指導にも関わる。


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