メンバーズコラム

2015年12月 小林 弘幸 氏

ダイエットと腸内環境 ~腸にきれいな花を咲かせましょう。~

2015年12月 小林 弘幸 氏

市民権を得たダイエット知識

今回は、ダイエットについて述べたいと思います。今、ダイエットというと、女性が最も心に響く言葉と言われていますが、最近では、男性もダイエットに興味を持ち出しています。

一つには、見た目が9割などとも言われ、外見を気にしだしたこと。実際には、家庭で、奥様や子供からの要望が強いことが挙げられますが、多くの健康情報から、糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病を改善するには、まず、ダイエットという知識が市民権を得たことです。しかしながら、ダイエットをしても、なかなか痩せられないとお悩みの方で「遺伝だから」とか「体質が」と、諦めかけている人はいませんか?

もしかしたら、その原因には、腸内細菌が大きく作用しているかもしれません。

腸内環境のバランスが体重に影響!?

さきごろ、アメリカ感染症学会が、興味深い報告を発表しました。それは感染症による下痢の治療として、他人からの「便移植」をした女性患者が、施術後、急に太りはじめたという報告です。どうやら、その便を提供した人が肥満だったから、患者も太ったのだということでした。

この「便移植」とは、お腹の腸内細菌を入れ替える治療法です。わかりやすく言うと、健康な人の便そのものを移植し、腸内環境を整えようとする方法です。日本では、まだなじみがなく、いくつかの施設で実施されているだけですが、欧米では、「便移植」が、潰瘍性大腸炎や下痢を引き起こす感染症の治療法として、すでに導入され、改善効果を上げています。

さて、その報告では、移植後、3年間で女性患者の体重が20キロも増加してしまったのは、「便移植」により腸内環境のバランスが大きく崩れ、彼女の代謝システムが弱くなったからと指摘しています。

これまでも、太っている人は、腸内環境が悪いという研究報告が数多くありました。その理由として、悪玉菌が優勢になる環境では、腸から吸収された栄養分が内臓脂肪や皮下脂肪に蓄積しやすいからだといわれています。その中には、ふつうの体格のマウスと肥満マウスの腸内細菌を取り替えたところ、どちらも太ってしまった、という実験報告もあります。今回の報告は、人間でもそれが実証されたことを意味しています。

ダイエットの効果がでない理由が、腸内細菌と関わっているとしたら、高価な器具を買ったり、過酷な運動をしたりするのは愚の骨頂です。まずは、自分の腸内環境を整えることから始めたほうがいいという結論になります。

善玉菌をバランスよく摂取しよう

私たちの腸の中には、100~500兆個ものさまざまな菌がいて、種類ごとに棲み分けしています。その菌が分布している様子を顕微鏡でのぞくと、まるで花畑のようにみえることから「腸内フローラ」とも呼ばれています。つまり腸内環境を整えるということは、この「腸内フローラ」という花畑を美しく作り上げるようなもの。汚れた花畑だと、肥満になると考えてもらえば、わかりやすいかもしれません。

大切なのは「腸内フローラ」の菌のバランスです。善玉菌だけあればいいというものではありません。善玉菌が悪玉菌よりも、少し多いくらいという微妙なバランスが適しているのです。何故ならば、善玉菌だけの環境は、一見、良く見えますが、善玉菌だけでは、善玉菌がさぼることも解ってきています。つまり、人間と同じで、ぬるま湯の環境ではだめで、常に誰かに監視されていないと働かないのです。

しかしながら、善玉菌の代表である乳酸菌やビフィズス菌は体外に排泄されやすい性質があります。そのため、「腸内フローラ」のバランスを考えれば、より善玉菌を腸に取り込む必要があるのです。

効果的で簡単な方法は、ヨーグルトや漬け物を食べること。さらに善玉菌のエサとなるオリゴ糖や食物繊維を豊富に含んだバナナや大豆、納豆、アボカドなどもあわせてとるとよりいいでしょう。特に、最近では、女性の死因の第1位は大腸がんです。女性ばかりでなく、男性においても急増しているのは、食物繊維の摂取不足による腸内環境の悪化によるものとも言われています。

これから春を迎えるにあたり、庭のガーデニングと一緒に、腸内の“ガーデニング”で、お腹にキレイな花を咲かせるのはいかがでしょうか。

プロフィール

小林 弘幸氏

順天堂大学医学部附属順天堂医院 教授
小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)氏

順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター。1960年、埼玉県生まれ。’87年、順天堂大学医学部卒業。’92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学附属英国王立小児病院外科、トリニティ大学附属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任する。腸のスペシャリスト、自律神経研究の第一人者としても知られており、アスリートや文化人、アーティストのパフォーマンス向上指導にも関わる。


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